松本救助(画):原田重光(原作) 『魔女は三百路から』1巻

魔女は三百路から 1 (ヤングアニマルコミックス)
魔女は三百路から 1 (ヤングアニマルコミックス)

 大体の内容「こじらせ魔女の日常」。黒川御影さんは魔女である。歳は三百になったばかり。百や二百の頃は若かったわー、などと嘯く彼女ですが、その実態は一人で誕生日会を妄想キャラとやる、という、ぼっちを拗らせすぎな惨状であります。そんな黒川さんが一人飲みしたり、一人結婚式してみたり、魔女会やってみたり。そんなこじらせ魔女漫画。それが『魔女は三百路から』なのです。
 こじらせる、というのは普通に描くと臭みが強いものかと思います。年齢ネタはどうしても現実的な方向にカカッと寄ってしまうのがその理由。その歳になってしまうと、自動的に身につまされてしまう。そういう引力があります。しかし、この漫画はそのこじらせを魔女&三百歳設定で「キャリオカステップを華麗に使いこなし!」レベルで華麗に使いこなします。
 三百年! その長さは、平凡な人間には全く想像できない類。しかも、魔女勢でも三百歳ランクは少ない、魔女狩りの時期もあったりそれ以前に割と簡単に魔女止められたりするよう、なので、余計に余人が考える域にいない、というのが分かります。でも、それを踏まえていとも容易く行われるお一人様な行為は、だからこそ素直に「うん、痛い」と言ってしまえるものです。お一人様あるあるなはずなのに、設定のおかげで角が取れて飲みやすくなっている。それが故に出来る、純粋なお一人様ネタの鑑賞が、ここに可能になりました。
 ソシャゲの推しに重課金したけどそのソシャゲが終わってしまうというので、出てきた言葉がもっと貢がせてよぉ! だったり、過去の男のことを思い出してべそべそ泣こうとしたけど怒りが上回ってしまったり、とかく黒川さんのこじらせ具合は本当に魔女になってなかったらわりとすぐに頓死していたのでは? というレベルです。中でも結婚? ハン! あたしは魔女よ、そんなのありえないわ! などと、その結婚式場の雰囲気に、神聖なので、じりじりと焼かれつつ思ってた、かと思ったら一人結婚式に申し込んでやってみて、やっぱりじりじり焼かれて一人身! ってなるとこが大変印象に残っています。そこの印象の最大はキューピットが「え? お前? え?」って顔で黒川さんを見てたとこですが。そりゃ魔女がいるならキューピットもいる。という部分の理解以上に、その表情のあり得ないもの見る感が際立っていたのですよ……。そこまでの顔したるな……。
 さておき。
 そんなこじらせ黒川さんですが、気になる男性もいます。小林君と言いますが、彼は黒川さんの妄想上の彼氏に似ている、というだけではなく、どうも昔に因縁のあった相手の転生した姿ではないか、とされます。その前世が高杉晋作、という時点で黒川てめえ舐めてんのか案件ですが、この小林君が結構ぐいぐいくるのです。先述の一人結婚式の話でも、ウェディングドレス、似合うと思いますよ、とか言っていましたし*1、パソコンの不調を直してもらって、また壊れちゃうかも、と言ったら何度でも呼んでください、と力強く言ったりするのです。これは単純に気があるのか、それ以前に何か因縁故なのか。とにかく黒川さんの魔女生活は年貢の納め時になっているのか。でも、黒川さん、猫を人間化して遊んだ*2結果、かつおぶしまみれでおんもに出て泣きぬれるという、およそ他の人に見られてら即死案件を、よりにもよって小林君に見られたりもしているので、この件を踏まえてもぐいぐいいく小林君には何か思惑があるのでは、とも。あの醜態以上の醜態を見て、好きとかなあ。それとも本当に相当出来た人なのか? その辺が1巻最大の謎となっております。この謎、2巻以降で解かれるのだろうか……。と、もうすぐ2巻発売なのを思い至りつつ、この項を閉じたいと思います。

*1:その延長線上で黒川さんが一人結婚式発見する。

*2:性的な意味ではない