ネタバレ感想 険持ちよ 『RPG不動産』1巻

RPG不動産 (1) (まんがタイムKRコミックス)
RPG不動産 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「ファンタジーで不動産!」。学校を出てジョブが魔法使いになってはみたものの、冒険者って柄じゃないし、ということで街の不動産屋に就職した琴音さん。そこで待ち受ける、お仕事の数々! ということで、異世界ファンタジー不動産業話。それが『RPG不動産』なのです。
 この漫画の良さというのはきらら系漫画故に、当然女の子の可愛さです。が、それ以外もきっちりあるのがこの漫画の特異と言える点でしょう。いや、他のきらら系漫画でも、他の漫画とは違う光は当然あるんですが、この漫画は特に他の漫画よりも明確にロジックとしてそれがあるのですよ。それ、つまり<謎>が!
 謎! この視点は故人となられた小池一夫先生の必殺ファンクション。それは様々なレイヤーがありますが、しかしそれを追うことがキャラクターを立てる。という趣旨の内容を、小池先生は著作に残しています。その門弟である方たちは、使い方の違いはあるものの、大体の場合、謎を提示し、それに対してキャラクターが動く。そういう所作をしています。一番わかりやすいのは門弟であった暴獣板垣恵介先生の最凶死刑囚編でしょう。死刑囚が脱走してまで何を求める? という謎、こいつらが刃牙たちと戦ったらどうなるの? という謎。それだけを持って引っ張っていく暴獣板垣恵介ムーブが炸裂した怪作です。しかし、その謎が解かれた時、個人的には花山VSスペック戦がそれですが、出すゲインは最大を越え最強に。そう言う意味で小池メソッドの正しさを証明しているという、一つの例として挙げられるでしょう。
 ちょいと前置きが長くなりましたが、この『RPG不動産』も小池メソッド、詰まる所、謎! の継承者です。さっくっというとそれは険持ちよ先生も、小池一夫門弟だからなのです。その視点を持ってみると、『RPG不動産』の謎のレイヤーは大変細かくサシが入っていて、いい霜降りとなっておるのです。
 まず話の根幹はお客とお家を取り持つ不動産業。これからして、謎解きとして立ち上がっています。どういう家をお客に引き合わせるか。そのお客が持つ特性を、それに合致する家に繋ぎ合わせるという、謎解きなのです。これが綺麗に決まっているのが、ペガサスの飼い主のお客さんの第6回でしょう。小さい頃に露店で買った卵から生まれたペガサス、というもうこの時点でキャラが立ちすぎのペガサスと一緒に住める家を! というので色々探すのですが、ペガサスが広々した場所じゃないと上手く寝られないから、その主人が狭い厩所で寝るとか言い出して、そうなると街中では広い家となると高額なものしかない。となってどうも出来ないのか? となったところで、ペガサスなら飛べる、という地点に思い至り、なら飛べないと使いにくい場所にある家という点が立ち上がり、ご成約と相成ります。成程、謎解きと理解していただけたでしょうか。
 次に、キャラ関係の謎。先輩で戦士職持ちのラキラさんと、同じく先輩で僧侶職持ちのルフリアが大変百合百合しておられる。というのでこの二人の間に何があるのか? と謎が提示されるわけです。その解は第10話で解かれますが、これがまあいい話なんですよ。二人の絆というのがいかなるものか、というのが各々が成った職業に反映されているのが芸コマ案件です。お互いが目指す場所が一緒な二人って、素敵やん? 住む部屋も一緒ですけどね既に!
 さておき。
 最後に上げる謎は、一番大きく、しかし一番密やかに進むものです。それが、亜人の子であるファーちゃんさんの謎です。この漫画の舞台では、魔王が15年前に滅ぼされた、とされています。そして、現在では巨大なドラゴンが大ごとを起こしている、という情報が投げ込まれますが、そこでファーちゃんさんのしっぽがドラゴンのそれでは? という提起がされます。それから先にも、ファーちゃんさんが亜人の言葉を理解出来る、という部分が魔王が持っていたそれだと提示されたり、魔力が異常ともいえる量を持っていると見せられたり、ファーちゃんさんが寝相が悪い、というのが実は寝ている時に何かしているのでは? という示しもされます。こういう細かいネタの積み重ねからこの巻最後は、幼い感じで快活なファーちゃんさんではしないような艶のある笑みで締めくくられます。謎!
 さておき。
 こうやって謎を解いたり積み重なったりによって、キャラクターがぎゅんぎゅん立つのもまた、小池メソッド。先にも書いた部分と重複しますが、ラキラさんとルフリアさんのお互いの存在が当然あるものって感じの気安さが、その二人のお互いを想うところによって醸成されているのとか、ファーちゃんさんが基本的に無邪気であるのに、その後ろに何かある、でも可愛いだけの子に見える、というので謎によって印象ががらっと変わってくる感じとか、それでキャラクターががっつがっつん立っている訳ですよ。そう言う部分があまりない琴音さんがわりくっている感じですが、それでも色々と立ち回る彼女も魅力的です。謎も魅力的ですが、謎を解く人もまた魅力的なのは、探偵キャラが人気なのと軌を一にするところかと思います。
 四人娘もいいのですが、個人的な好みのキャラとなると、この巻7話目のお城の官吏セーラさんです。どういうお人かというとうっかり八兵衛です。7話目ではワープ装置の設置の為の魔力を貯めるという事業をするんですが、セーラさん、目標の魔力が当初の予定の二桁上という大うっかりを発動します。それどう考えても人集める前に気づきますよねえ!? 案件で、この人が曲がりなりにも責任者になれたという事実を含めてこの国大丈夫か案件です。でも、あまりに凄いうっかりなのでキャラクター性が一気に立ち上がってもいて、印象にこびりつくものが。これもナンデ!? が、うっかりで! という謎とき、そう考えることもまた可能かと思います。言い過ぎですけども!
 ということで謎という視点で見てきたわけですが、そんな部分を気にしなくても、大変カワイイヤッター! な女の子が頑張るお仕事話としてもきっちり立ち上がっているので、大変お薦めしやすい漫画でもあります。というか、皆買え!
 とかなんとか妄言を吐いてこの文を終えたいと思います。