ネタバレ感想 春雨 『魔王城ツアーへようこそ!』1巻

魔王城ツアーへようこそ! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
魔王城ツアーへようこそ! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「魔王城が(金銭面で)大ピンチ!」。とある現代社会の歯車だったつむぐさん(眼鏡っ娘)。ある日、通勤途中で異世界に召喚されてしまう! でもぼんやりしてて電車の扉開閉ボタンかと思っておぱいたっち! というこれが異世界だから許されたようなもんの展開から始動する漫画。それが『魔王城ツアーへようこそ!』なのです。
 この漫画は、昨今大流行り過ぎて既に退潮の兆しすらある異世界召喚物です。きらら系には既に榊『異なる次元の管理人さん』という異世界召喚物が存在しますが、それを含めても異世界召喚物はきららにおいて、実はそんなに多くはありません。しかも時期的に退潮の兆しすらある最近においては、弾としては超遅球レベルではないかとも思います。
 しかし、超遅球が使い方次第であることと同じで、遅いなら遅いゆえの冴えというのも見せつける。それが『魔王城ツアーへようこそ!』の凄みであります。その部分は設定からしてすこぶるなのです。
 まず、つむぐさん(眼鏡っ娘)が召喚されたのは、魔族と人との争いが千年ほど前に決着した世界。その世界の魔王の末裔、メロウさんによって、つむぐさん(眼鏡っ娘)は魔王城の経営を軌道に乗せるべく召喚されたのです。魔王城の経営! そういうのもあるのか。と一瞬なりますが、しかし栄華は既に遠くなり、今は完全にうらぶれてしまった魔王城で、つむぐさん(眼鏡っ娘)はその色々駄目なところに翻弄される。そういうお話となっております。
 魔王城、観光地として利用しようという時点でどんだけ栄華が遠いんだよ! 案件ですが、状況はかなり切羽詰まっております。このままでは抵当権が! という魔王城に対して使っていいのか、な言葉が飛び交ったりします。そもそも、魔王城、つまり要衝なので、切り立った崖がそびえ、つまり来れる人が殆どいない、来れるのは有翼種のみという、それでどうやってここを盛り立てるおつもりか! となっています。こういう大まかい問題点を潰していく話としてこの漫画は成り立っています。
 そんな無茶なの、いきなり職員だっただけのつむぐさん(眼鏡っ娘)には荷が勝ちすぎる! とも思うのですが、わりと初手のミスが多く、そこを潰していけば意外となんとかなっていく、という形になっております。先に書いた有翼種しか来れないだろ! は輸送の足の委託先としてドラゴンさんを見つけて解決したりしてます。堅実! ついでにそこの野菜の購入先にもなって一石二鳥! ドラゴンが菜食なのが気になるけどスルーで! って感じで、問題はちまちまと解決されていきます。そういうすっとこどっこいな経営ものが好きならお薦めできまっせ!
 さておき。
 この漫画はまんがタイムきららMAXに連載中の漫画です。つまり4コマ漫画な訳ですが、通常の4コマとは違います。
 それはワイド! と黄金バットの「それは正義!」っぽく言うほどのことはない特徴ですが、しかし、現在の4コマ漫画界ではわりとトピックになる案件です。他の4コマ雑誌でもワイドはありますが、きららで導入された最初期のものだと、この漫画は言う事が出来ます。ちなみにワイドについて簡単に言うと、1ページ8コマの所を横を繋げて4コマんしているようなものですね。
 そのワイド、この漫画はどう活用しているか、というと、きらら漫画であるゆえに、女の子キャラをずらっと横に展開する、という方向で使っています。女の子を沢山出せるからこその、ワイドだ! という分かりやすい、全てを、振り切るぜ! であります。そしてその案はイエスだね! という感じできっちり女の子可愛いしてくれるので、狙いは的中と言えるでしょう。
 しかし、それだけで満足、したぜ……。と完全満足する漫画家では、春雨先生はありません。伊達や酔狂であの、そうあの問題作『JKすぷらっしゅ!』を描いた漫画家ではないのです。今回の漫画も、諸所でフェチいネタがぶっこまれます。初手のおっぱいたっちもそうですが、その後の羽ハラ(羽根ハラスメント。やると訴えられるらしい)や狼っ子の下の方はモフモフなの? とかつむぐさん(眼鏡っ娘)が一々知らないから攻めちゃう形になる為、なんとなくエロちっくになっております。この巻でのエロチック最大は狐ロリおもらしですが、あれは流石に攻め過ぎかと思います。いいぞお!
 さておき。
 1巻は魔王城の電源関係が分かり、これなら、あれが! という段階で終了します。あれ、そうあれ! とそこは濁しますが、しかし、魔王の末裔なメロウさんも知らない機構がある、というのは魔王サイドの情報伝達の不備を指摘したくなります。とはいえ千年近く経ってりゃそれはね。現在の私たちが平安時代のことを完全に伝達されてないのと同義ですし。でも、これだとまだまだ魔王城には謎が多いのかも。電源装置の段階で謎度高いですし。その辺がつまびらかにされるのか否か。そういう部分も楽しめるのが『魔王城ツアーへようこそ!』なのです。と書いて〆。