ネタバレ?感想 高遠るい 『はぐれアイドル地獄変』9巻

はぐれアイドル地獄変 (9) (ニチブンコミックス)
はぐれアイドル地獄変 9

 大体の内容「エロが拝めずビビりまくりだぜ!」。という感じに、またぞろエロ? 何? それより格闘だろ? な方面にがっつり寄せた巻なのが、『はぐれアイドル地獄変』9巻なのです。
 7巻で見事な格闘大会話をぶっかましてきた『はぐれアイドル地獄変』。この巻でも、その切れ味は鋭く、勝敗が全く読めない流れを持ってくる様も板について、でもこれだけやって板についても予測不能だと!? という驚愕の状態にあるのもまた、『はぐれアイドル地獄変』なのです。
 7巻でもトーナメントが超高速でこなされつつ、様々な決着を見せてくれましたが、それはこの巻でも異口同音です。さくっとこなされて味が薄い、なんてことはないのも7巻の時と一緒。どれも誰が勝つ? というのをマスキングした状態でキャラ立てを高速で行い、そしてジャガる。この高速ビルド&スクラップ芸は、巻を重ねても衰えることはありません。慣れてきたこちらの慣れすら超える感じで、ガシガシ漫画してきます。
 特に、二回戦に勝ち残った8人のキャラがやたら立ちあがる形になっているのが、大変漫画であるなあ、と。エンタメであるなあ、とも言います。一回戦の双方のキャラ立てを踏んできているので、そりゃあキャラが立ち上がりまくるのも当然ですが、それにしたってキャラクターの存在感の積み重ねが、最初より乗算されているくらいの立ち上がりです。このどちらが勝つか、というのも出来れば己の目で見て感じ入っていただきたいので、誰が勝ったとか書けないんですが、それでも勝った方は負けた方の分も背負って次に、というのが露骨のレベルで出来上がっており、トーナメント系の漫画の面白さはそこだよなあ、と感じ入ってしまいます。いいなあ、こういうキャラの立て方。
 さておき。
 試合結果に関しては記述しない、と約束したな。
「ああそうだ大佐……。助けて」
 あれは嘘だ。
「うわー!」
 という茶番はさておき、一部どうしても試合の結果を匂わせる形になるけど、これに言及しないのは嘘だと思うので、ええい! と書いちゃいますと、今回の大ふかしとして、ロボが出てきます。
 うん、何を言っているのかって顔だね。分かる。俺もそいつが最初に出てきた時、お前は何を言っているんだ。ってミルコ・クロコップ顔になりました。でも、ロボなのです。格闘ロボなのです。伊達でも酔狂でもなく、ガチの格闘ロボなのです!
 それがどのような形になっていくか、というのはまあ見てください! というシャクティ顔でスルーしますが、しかし、本当にロボと人間が格闘で対戦する、というのは驚きの世界です。確かに、最近のロボのクオリティは高くなっています。使役する程度には十分な能力ですよ。倒しても立ち上がってくるやつとか、揺らされてもこけないやつとか。でも、それでも、格闘という部分で、ロボが人間の相手になるのか? 色んなものがあるのを、統御できるのか? というのを、では相手して差し上げましょう。というのがこの漫画。もう、バカ。
 実際の所、ロボと人間が戦った場合、ロボをどう倒すのか、というのは中々難問だったりします。痛みがないから、いかような姿勢も取れるし関節も決まらない。内臓も無いからそこへのダメージも意味ない。破断すればいいけど、そこまでの力が格闘家だからってあるはずない。なら、どうしたら倒せるのか。というのを11、12巻くらいにやってくれそうです。ネタ振りはしているので、確実に刈ってくれそうですし。次の巻はまたエロネタでしょうから、ちょっと待たないといけないのが忸怩。
 さておき。
 この漫画が理詰めで作っている、と勝手に吹き上がっていた時期が俺にもありました。しかし、この巻のあとがきで、全試合の絵図を内容が被らないように作っていた、という部分を見て、やはり、物が違う……。ってなりました。それでも、似た形になっちゃう場面もあったけど、それは漫画力でカバーした、というのでもう、バカ。
 ということで、またこの巻から入ってもいいという、それだけ初出情報の出力が美味い漫画になっているのが、『はぐれアイドル地獄変』なのです。もう、好き。