ネタバレ感想 柴田ヨクサル 『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』3巻

東島丹三郎は仮面ライダーになりたい(3) (ヒーローズコミックス)
東島丹三郎は仮面ライダーになりたい(3) (ヒーローズコミックス)

 大体の内容「皆一生懸命生きているんやで!」。ということで、ショッカー強盗の頭目、中尾さんの話が大きすぎて、仮面ライダーになりたい人達の集まりが、その空気感のヤバさ以外特に印象に残っていないという、柴田ヨクサルマジックが発動し始めたのが、『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』3巻なのです。
 とりあえず、今回はなりたいライダー陣営の話は、V3の人とライダーマンの人ん家の長女さん登場し、実は兄妹で一番強いんだけど、ライダーに一切関係がない、というかむしろV3の人のせいでオール無視という地獄を見たという素性の持ち主で、それでライダーを嫌いにはならなかったというのが奇跡的なんですが、だからこそのライダー知らんなので、ショッカー相手の戦力にならないか? と東島さんが言っても駄目だとなるのもむべなるかな。諸々の、絶対ないを見たうえでそれでも、というのだから超強いんですよ。戦闘員を圧倒したV3の人を圧倒していたので。どんだけ強いんだよ。
 で、そんなガチャガチャしたところで、更にライダーマンの人こと三葉さんとショッカー戦闘員のユカタンさんが結婚式をしよう、となって更にガチャつきます。長女さんの仕事場でもある居酒屋で始まる、いきなりの結婚式! そこで兄妹喧嘩と式辞も絡まって、わちゃつきが止まらない! という感じで、なんか愛の儀式が成立した以上のことが何もなかったに等しい展開なのに妙な満足感だけはあるという、わりと意味不明の感覚を叩きこまれます。ヨクサル味!
 さておき。
 今回のメインイベントは、ショッカー強盗を思いついたやーさんの中尾さんが、ショッカー戦闘員になる話です。もういきなり脇の話をぶっぱなのかよ! と慄きますが、これはこれでショッカーの謎について接続する部分もあるので、ないがしろには出来ません。それを込みにすることでないがしろを回避する見事なジョブです。
 この中尾さん、色々あって今ではやーさんですが、そんな彼にも過去はあります。それが、走馬灯としてちらっと開陳されます。父親がたい焼き屋に失敗し、どっかのおばはんの愛人になる、と伝えて去る、という話なのですが、このだからその挿話いる!? 感が満点なのに、それがこの巻最後の展開に効いてくる、というのでもう駄目。好き。
 たい焼き屋に失敗して愛人となり消えた父が、そのたい焼きで再起を果たしていた! という、やっぱりこれその挿話いる!? なのに胸アツな展開! それを守るのが、ショッカー戦闘員となった中尾さん! 子が、父を、そうとは知られない形で救う! でも、この挿話あんま要らないですよね!? この振れ幅よ!
 そんな、ある意味入っていていいんだけどあんまり要らないのではという挿話ですが、怪人蜘蛛男が荒事系の仕事をしている、という話とも隣接しています。どうにもショッカーから資金がとかそういうのがないようで、荒事が最終的に怪人になって対処するようになってきて、結局仕事を変わらないと、とかよくやっている風でありました。
 そして、その荒事の過程で中尾さんは蜘蛛男に殺され、たはずなのに、なぜか生きていてショッカー戦闘員になる能力を持つにいたります。これがどういうやり方でそうなるのかは分からない、というマスキングをかましてきますが、それなりにショッカーになりたいという要望に応えることが出来るやつが、どこかにいるのでは? とも思わされます。あるいは、怪人が素養のあるのを戦闘員にしてまわっている、というのもありそうですが、どちらにしても、それを為す何かがあるはずで、そしてそれは誰かが作ったはずで、と考えてしまいますが、情報がないので答えは導き出せません。
 この辺がずーずーで終わるのか、ちゃんと種明かしされるのか。ある意味この漫画の成立はそこにかかっているよなあ、などと思いつつ、この感想を終えたいと思います。