ネタバレ感想 船津紳平 他 『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』7巻

金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(7) (講談社コミックス)
金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(7) (講談社コミックス)

 大体の内容「今日もどこかで金田一……!」。実際、37歳の事件簿があるので、新たな金田一……! 案件は積み重なり続けている訳ですが、そんな金田一も、過去にまさかこのように思われているとは、というのが頻出するのが、『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』7巻なのです。
 この巻から内容はFileシリーズからcaseシリーズに突入。それに伴い単行本の方もデザインリニューアルとなりました。内容の方はいつものなのでご安心ください。
 ということで、今回の3つの事件を見ていきましょう。

『魔犬の森の殺人』

 野犬が闊歩する森で取り残された面々に、死の足音が! と言う感じで、出ていけない環境をどう作るか、というのに腐心した感のある回です。
 この回の犯人は、金田一の友人、ということで、まず初手で金田一を呼ばない! というある意味最高の解答をかましてくるのですが、金田一が美雪さんとよろしくやるのを狙ってついてくる! というある意味最悪の返歌をされる形になってしまいます。
 ただでさえ、野犬のふりをすることになる犬たちに信頼されていないという、この話の根幹が崩れそうなところから始まったのに、その上で金田一まで来るなんてあんまりだぁー! なんですが、犯人は挫けず作戦をやっていきます。
 というのに、死をくれてやるやつらを追い込む為の手段を始めよう、としたら金田一がそうとも知らずに加担してくるというアクシデント。いきなり錯乱茸汁を振る舞う、という、金田一の頭おかしくねえか? そんなに美雪さんとやりたいの? 事象が巻き起こります。犯人も、殺人を犯そうという己がもっとも言ってはいけないコンプライアンス! というのを言ってしまうレベルの乱痴気騒ぎ。しかし茸ではラリらん! となった犯人が、ラリって火を点けだした美雪さんに乗じて灯油をまき、作戦は実行段階へと向かっていきますが……。後はある意味いつも通り。
 この回では金田一のヤバさが浮き彫りになり過ぎている感がありますが、最終シークエンスのなんか犬がけしかけてもないのに金田一は襲った、のに自分はけしかけても襲わない、というのもなんか趣深いものがあります。犬の気持ちが、とか言う前にやっぱり金田一は犬からしても襲うくらいヤバイのかなあ。という感想がもろりと出てしまう、そんな回でありました。

露西亜人形殺人事件』

 トリックを解いたものに、遺産を与える。というので巻き起こる殺人! 五人の遺産継承者の、誰が犯人!? という、疑わしい人ばかりの中で、まさかそこかよ! な犯人の位置が際立った回です。
 そこ、その犯人に視点が本編道中ではほぼいかない為、ある意味治外法権というか、もうギャグするしかねえぞお! という割り切りがぶっぱなされます。
 どの辺がというと、この犯人が今までの犯人の中でもメンタルの危険度はトップクラスな点です。異形、それ故にギャグに成り立つ描写が連発されます。五人の遺産継承者が全員死ねば、自分に遺産が舞い込んでくる! というのが確定した瞬間の、心中で「勝った!」ってなっても全く動じないように耐えれるとことか、一人殺すごとに牛丼に卵を付けられる。とか言い出すとことか、非常に危険人物のそれで、もしかするとこの漫画でも、高遠の次くらいにやばいのでは? という様を見せつけてきます。殺人をこなすのに、これで金持ちになる。でも執拗に牛丼を食っているシーン、場所がタワマンから飛行機の中へと、という金持ちに対する視線が偏り過ぎているけど、それだけで乗り切れるんですからね。ぶっちゃっけモンスターにしか見えませんでした。犯人も、まさか後世でこんな危険な奴扱いされるとは露ほども思って無かったでしょうが。
 ただ、この犯人が不幸だったのは、ただでさえいたら凶敵の金田一に加え、出番が少ないがゆえにかっこいい場面多々のちゃんとした高遠も場にいたこと。ある意味この漫画世界の最大知力同士の競演で、ジョニー・ジョースターならずとも「できるわけがないっ!!」という環境。それでもわりといい線までは行った辺り、モンスターの為せる業か、といえますが、まあ、あの二人いる環境で勝てたら、たぶん殺人とかしなくても世界制覇する会社とか作れると思います。それぐらいに高すぎるハードルですよ、あの二人。

『銀幕の殺人』

 相変わらず殺人事件に絡む場合が多過ぎて、当時の謎本でなくとも「この高校、なんか呪われてんじゃないの?」と思わずにいられない不動高校での事件です。
 今回のネタは説明口調。内容面ではわりと地味ながら内容としては凝った仕掛けを、四苦八苦してつくっていく、という中で殺人も行うんですが、その前に被害者が妙に長尺でくちゃべり出すのです。犯人もつい聞いてしまうという、ネタ度合いの高い唐突の長尺。この迂闊な喋りで、犯人に以前起こった事件について知られているので、こいつら長尺しないと死んじゃうタイプのキャラクターだったんだろうなあと思います。
 さておき、一つ前の話の犯人はモンスターでしたが、対してこちらは地味な人。あっちの、金が入るぜうぃー! というテンションで、心の中では暴力が全てを解決する! とか言っているのに対し、こっちは肝のトリックを何度も繰り返しても落ち着かなかったり、金田一に謎を一解かれるか、と心配でナーバスになったりと、大変普通のひとでした。その人が殺人を、というのが重い訳ですが、それでも金田一の追求はしっかりなされます。ここの犯にはあんただ、の仕込みも奮っていますが、やはり豪運は恐るべしです。無ければ完全犯罪だったかも、というのに。金田一、お前どこまで運がいいんだよお前……。

まとめ

 全体的に尺長めになってますが、それ以上に、この3回は犯人が死ななかった、というのでちょっとびっくりしていたり。犯人がむやみやたらに死ぬのが金田一の印象なんですよね……。ケースシリーズはちゃんと読んでないので、どうなるのか分からず大変楽しみなんですが、でもこのままだとファイルシリーズは犯人が死に過ぎィ! とか言われそうです。どうなるんだろうか。
 とかなんとか。