ネタバレ感想 福地翼 『ポンコツちゃん検証中』2巻

ポンコツちゃん検証中 (2) (少年サンデーコミックス)
ポンコツちゃん検証中 (2) (少年サンデーコミックス)

 大体の内容「地球を守る為に、今日も今日とて検証中!」。毎日更新される能力で、地球の危機を救えそうなのを見つけるのだ! というミッションをこなす水戸くんと夢咲さん。されど、青少年時代の男女というのは甘酸っぱいのおー! という側面もガンガン使ってくる漫画。それが『ポンコツちゃん検証中』なのです。
 この漫画がするべきミッション、というのと今回の巻は少し趣きが違います。というか、そういうのは1巻1話目できっちり提示されているので、そういう意味では2巻はそのくびきを越えないようにしつつ、水戸くんと夢咲さんがキャッキャウフフすることを魅せる。そういうある種眼福の世界が広がっているのです。
 本当に、2巻の、古のラノベ用語で言うところの<ラブあて>は素晴らしいです。まだ恋愛関係というものにはなっていないけど、お互いのことを気にしまくっている、というラブコメのビンテージが芳醇の時を迎えているのが、この2巻と言って差し支えありません。
 このラブあての圧が強いのが、ほぼ全部の回で相当の圧なんですが、それでも特段に、とするなら2巻最初の回、<検証その10 よく当たる占い>でしょう。あなたの恋人は、この啓示に当たる人、というのが提示されて、それを一々水戸くんが回収していく、ただそれだけと言ってしまえばそれまでなのですが、この、当たっている!? というのがかなり強引な解釈で、当たっているっちゃあ、そうかもしれんが! となります。
 しかしそれで当たっている!? ってなるのは、つまり夢咲さんとしてはそれで当たっていて欲しい、という願望の現れではある、と言えるのです。何のかんので、夢咲さんの中で水戸くんはそう言うのであってほしい存在である、という訳なんですよ! 立ち上がってますよ<ラブあて>が! ハイパーン!(机打)
 この気持ちが更に進んでいるのが分かるのが、<検証その16 夢と現実>。
 相手を夢うつつにする能力で、その時、寝ている相手は素直に答えてしまう、というので、水戸くんを眠らせ、普段聞けないことを聞く、というので、水戸くんの個人情報をガンガン聞き出していく様と、その時に夢の中だからと素直に夢咲さんカワイイな、という水戸くんにひょはー! ってなるとこが最高です。
 ここで相手のことがもっと知りたい、という欲求が、進展が出ているのが分かりますが、普通に聞いても話してくれそうなことばかり聞いて、自分のことが好きか嫌いかを聞かない辺りが夢咲さんらしい。でも、そこで水戸くんが素直に好きな人いるの? とか言い出してさあ大変。ああ、青い春!
 そんな蒼の力を全開にしつつも、一日一能力の基本は常に維持されます。
 商店街の七夕の催しの手伝いを、というわりとよくあるシチュエーションながら、その時の能力がサイコメトリーなことでその短冊に込められた想いを見る、という味付けと、手に取る短冊に一々絡んでくる敏夫さんというエッセンスで一気にバカ話として立ち上がってくる、というのに最後は水戸くんの短冊に込めた想いを読み取り、いい感じに終わる、という中々のアップダウンを見せてきます。ちゃんと能力を使ってバカ話からいい話に展開していくのです。
 また、<検証その20 勉強とモヤモヤ>も、成績下降気味の夢咲さんが水戸くんに勉強を見てもらう、というこの手の漫画では超よくパッシブされるタイプのイベントですが、そこにモヤモヤすると暗雲を召喚してしまう、という能力を加味することで、普通に勉強教えるだけで大変だ! という状況を作り出します。
 というか、モヤモヤ発生が超早くて、本当に勉強苦手なんだなあ、というキャラクターの側面を魅せる点もいいですし、それでも挫けない水戸くんの精神の太さも魅せる展開でもあります。能力的には一年後の隕石衝突には効果はないだろう、というのがすぐにわかっても、捨て回ではない、滋味なる積み重ねをきっちりしてくる辺りがマジでこの漫画好き……。ってなるところです。
 最後にこの巻で好きな回は、全部好きですが、特に好きなのが水戸くんの優しさ、良い奴さが爆裂する<検証その14 水戸くんとタヌ吉>です。これも、その人物が苦手な動物をが、目の前で動けなくなってしまったら、というこの手なら超ド基礎パッシブスキルな内容ですが、その動物が実は変身能力で狸に変わった夢咲さんで、というので一味違う仕上がりになっています。自分である、と知らせようと付きまとうけど、水戸くんはマジ無理。って言うのが積み重なったところで、狸の夢咲さんが自転車に轢かれるイベント発生! そうなっちゃうと、水戸くん、無視しちゃわないんだよなあ。最終的には、苦手の狸にしばらく居てもいいぞ、とか言い出して、こう、情にほだされるタイプだよなあ、らしいなあ。って思わされます。基本面倒見がいいというだけでも、いいキャラクターというのは、こういう地味な積み重ねなんだなあ、と思わされるのでした。
 そういう、積み重ねをきっちり出来る漫画なのが、『ポンコツちゃん検証中』なのです。と書いてこの項は終了!