漫画感想 長イキアキヒコ 『ギャル医者あやっぺ』

ギャル医者あやっぺ (バンブー・コミックス)
ギャル医者あやっぺ (バンブーコミックス)

 大体の内容「ギャルの医者! それがあやっぺ!」。黒ギャルが医者、という段階でこれはフィクショナルですね。という立ち位置を速攻獲得している様が勇ましい。そんな漫画が『ギャル医者あやっぺ』なのです。
 あやっぺ先生はギャルです。黒ギャルです。そして、医師である前に黒ギャルなのです! ということで医療従事者が見たら眉をひそめ過ぎていくえふめいになるレベルな、とにかく医師としてそれはないだろう、というナンセンスギャグマンガとなっております。まあ、黒ギャルなのに医師、と言う段でリアリティー&ラインはかなり後ろの方に引かれているかと思いますが、その予断を更にもう三段くらい下げないといけないくらい、強度のナンセンスギャグとなっておりますので、参加される方は努々それを忘れることなかれ。
 馬鹿な口上はさておき。
 とにかく、ギャル思考で医者をする、というラインが基本な漫画ですが、基本を覆すのが応用なのであり、更に言えば見せ球としてのギャル医者というのをガンガン不安定にしてくる所作こそ、この漫画の至高と言えるところでしょう。偶に挿入されるその応用の球としての強さ、いきなりゲームファンタジーめいた方向に目を剥いた時は本当に何をされているんだろう、でした。こういう球の軌道の無軌道さこそが、この漫画の真骨頂だと、私は感じました。感じたのです。
 個人的にそれが強い、と思うのは、あやっぺ先生の何かの先輩であるミヤビ先輩でしょう。外見の黒ギャルの長感も中々類を見ないレベルですが、どう考えても適当に考えたキャラなのに、その後適当に出てくる部外者という役回りを一身に受けたせいで謎の存在感を見せてくるのでもう駄目。最終的にすりつぶした豆食ってるだけで絵が持つという謎の立ち回り。オギャる。訳が分からなくて。
 この異次元の立ち回りでキャラが立つのは、他には院長先生もそれで、あやっぺに甘い、を通り越して何か弱みを握られているのでは? という疑惑が個人的に出るくらい、あやっぺに甘いのですが、それとは関係なく浜辺で相撲取ってたら漂流して、という回のインパクトが尋常ではなかったです。なんで相撲で海に入って行って、板も無しに漂流出来たんだろう。という前提の意味不明さもまた尋常ではなく、最後のオチの、謎の毛むくじゃらになった院長という地点に到着された時には本当にこの漫画読んでて大丈夫か? という気持ちになりました。頭おかしい過ぎる!
 と言う訳で、基本的に発想の基礎が無茶苦茶だからこそ、スゥイングする漫画のドライブ感に浸れる漫画。それが『ギャル医者あやっぺ』なのです。年一回くらいのペースでなら読みたいですね。毎日読むとヤバイ気がするので。