感想 つくみず 『シメジシミュレーション』1巻

シメジ シミュレーション 01 (MFC キューンシリーズ)
シメジ シミュレーション 01 (MFC キューンシリーズ)

 大体の内容「シメジと目玉焼きの友達エチュード」。中学途中で引きこもりになり、頭にシメジが生えた月島しじまさんは、2年経ってシメジも生えたし、高校いかな、となり引きこもりから脱したらば、高校で目玉焼きを頭に生やした山下まじめさんと出会い……。という青春話のようでいてちょくちょく得体のしれない部分をぶっこんでくる漫画。それが『シメジシミュレーション』なのです。
 基本的には、友達とは、という部分を基礎とはしているものの、シメジとか目玉焼きとか生やしている段階で「俺にどうしろというのだ……」というヘンテコな部分の上振れがある。でも基本的にはちょっとした青春の話。というので、中々つかみにくいというかぬめっているというか手が滑るというか、とにかくどこに目線を置いたらいいのか、というのが難しい漫画です。この辺りのアトモスフィアは、つくみず先生の前作『少女終末旅行』ではお出しできなかった部分なのかな、という感想も持ったりします。あっちはSFの意匠であったのもあり、ドラッグマジック的な話は基本してなかったんですが、こっちは全体的にSFと呪術のハイブリッドな怪しい魅惑で攻めてきます。でも、基本は青春の話。だから訳が分からないんですよ。
 青春な部分である、しじまさんとまじめさんの友達付き合いというのは、いい感じで二転三転、一歩進んで三歩下がって二歩進む感じで、でも妙に仲が良い感じに見えなくもないという、ここもまた不思議な立ち回りをやっています。好き嫌い、どちらかというと大反対というやつなんですよ。よく分からない? 読んでる方もわりと何されているのか分かってないです。でも、絶対に大嫌いではないだろうなあ、というのがまた何ともよく。いい関係性はいいんです。トートロジーですが。
 さておき。
 この漫画が、単に青春のエチュードって感じだけでないのは、偶によく分からないものがインサートされるからですが、その最たるものの二つ、穴掘り部としじまさんの姉の話は特によく分かりません。
 穴掘り部、というのはしじまさんの通う高校にある部活ですが、ただ穴を掘るだけ、という、エモさもビビッドさも青春ぽさもまるでない、単なる苦役では? というものです。そこで先生と出会う、という事態の為のワンクッションだった、と言えばいいんですが、でも、青春の運動を全て苦役では? という疑義は結構クリティカルに楽しかったです。確かに、あれと穴掘り部の差はどこにあるんだ? と一瞬混乱してしまいました。違い過ぎるだろ! 案件ですが、でも本当の所、どれほどの差があるのか、とも思ってもう駄目。混乱する。ちなみに、しじまさん姉のいたころは穴埋め部だったそうです。ますます分からん。
 そのしじまさんのお姉さんもかなりの難物。何かの研究をしているんですが、ほぼほぼ意味不明のムーブしかしていない、というキャラクターとなっております。その研究が、この巻最後の方で一つ結実する、んですがそれマジックマッシュルーム系のキメキメなドリーミングなやつで、実際しじまさんが謎の夢を見る形で謎さ加減だけが強調されます。
 結局、なんかヤバイやつキメただけなのでは? という案件なんですが、その夢を境に、しじまさんの家のある団地に謎のオブジェが増えた、というのを提示されてそのまま1巻は終わってしまいます。しじまさんの見た夢とそのオブジェに何か関係が? そもそもしじま姉は何を研究しているんだ? 謎の魚の霊が関係しているようですが、そもそも魚の霊ってなんだよ案件であり、とにかくしじま姉は謎が多い、という点が、でもオブジェ増えちゃったし……。という部分と合わさって、かなりの不穏さをぶちかましてきます。
 とにかく、この漫画の着地点は全く分からない、というか青春する以外はその辺を匂わせていくだけなのでは……。という恐怖というか悦楽というかをぶちこんでくる、とにかくみょうてけれんな漫画なのです。一体どういうものの日常系を見せてくるのか。つくみず先生は相変わらずガチだというのだけはよく分かる。それが『シメジシミュレーション』なのかもしれません。