ネタバレ感想 高遠るい 『はぐれアイドル地獄変』10巻

はぐれアイドル地獄変 (10) (ニチブンコミックス)
はぐれアイドル地獄変 (10) (ニチブンコミックス)

 大体の内容「戦乙女闘宴、準々決勝開始!」。ということで、エロ展開が来るかと思った10巻ですが、そこはほとんどなしで大イベントに向かっていく高揚感と、その大イベントに少し不穏なものが混ぜてこらえる、というのが『はぐれアイドル地獄変』10巻なのです。ちなみに不穏の話はしません。本当にちょっとした感じなので、実際に不穏になるか分からないからです。後、今回は勝敗に関してかっちり語っちゃうので、まだ見てない人は早く見てください! まだ本屋に無いならKindle版でも! というシャクティ顔をしたいと思います。
 さておき。
 先にも書きましたが、今回はバカエロ展開はそんなにないことを、まずは記述します。ちょっとした、ぱいでボトルキャップチャレンジとか、はあるし、海空さんの準々決勝戦で相手のマリアさんとレズックスしたり、その後おしおきレズックスもあったり、マリアさんマイクロビキニで試合したりするんですが、ボトルキャップチャレンジの方は一瞬ですし、バトルの方はそのことを忘れるくらいに白熱するので、実質的にエロネタはレズックスしかなかった、と言いきって良いかと思います。え? 男女の本番有ったろって? そう言えばそうね、くらいの印象しかなかったです。海空さんの妙なスター性についての話の方が主題に感じてしまったので。添え物感強かったんですよ……。というかわりとがっつりやってるのに、何でこの添え物感……。
 そういうことはさておき、試合の方は2戦が終わった形です。今までが魅せ方と時間の関係によってわりと高速でガチャガチャしていましたが、こっからはあと7戦! ということでじっくりと時間をかけて、具体的には3話くらいかけて一戦を見せる形になっています。
 今までは高速ジャガリだったがゆえに面白かったのでは? 普通ならゆっくりするところが早いから、騙されているのでは? 予想不能の高速さというのが面白さの根源だったのでは? などと、その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ。というのが、今回の2戦で如実となります。スピードだけでこの漫画が、このバトルが成り立っていると思っていたのか? 案件です。じっくり魅せても、この漫画の格闘漫画としての強さはきっちりある。それを無意味な昇竜で分からせるレベルで分からされました。転子ちゃん様レベルで精神ダメージです。
 さておき、特に、どちらも流派は違えど空手があったのが、それゆえに対比となって表れているのが面白かったと思います。海空さんとミカさんの、勝負感の違いというのがここにきっちり出ていました。
 海空さんが如何に倒すか、という点を主題というか、そもそもそこまで闘争向きの性格でもない、闘志はプリセットのタイプなのが、マリア戦での闘い方、勝ち方で見えてきます。相手を壊すのではなく、倒す。その為に、一つの到達点に至るのが、この巻での海空さんなのです。相手の天性と言える回避勘を越える、その瞬間でも攻撃と分からないくらいに、という脱力からの打撃でした。言いたいことは分かるけど、よくよく考えて無理なのでは? とも思うんですが、実際それで勝っているので、出来るんだあ、としか言えません。この辺の説得力は流石です。
 で、それと対照的なのがミカさんな訳ですよ。
 如何に勝つか、いや勝つかではない、勝つのだ。というのがミカさんの方です。こちらは闘志がナチュラルボーンなタイプなので、よって相手を破壊することに対して躊躇がない。目潰しなんて基本とばかりに使いますし、鎖骨折りが刺さってからは相手をどんどん破壊していきます。その結果として、相手は重傷、という格闘大会ならある種当然の光景が繰り広げられます。
 そしてそこが海空さんとの差として、表れてくるわけですよ。破壊すら辞さない相手と、倒すことに注力した相手。この二者が、どういう試合を見せるのか、という積み重ねとして積載されてきています。今までの積み重ねが更に積る! 大会系の醍醐味がここにあると言っていいでしょう。この、バトルに対する気持ちの違いがどう対戦に表れるか。楽しみです。
 ただ、それは次の次の巻辺りに、最低でも決着は持ち越しになりそうです。その前に、最大対最少戦と、みんな待ってるロボ戦があります。前者は思ったより早く終わる可能性があるんですが、後者は結構長引くのでは、と予想しています。対ロボ戦の種明かしから一回もつれそうな気がするんですよ。グダグダした闘いには基本ならないこの漫画ですが、相手はロボ。そこは我々の予想を超えたそれがそこにある、と思うんですよ。だからぐだってもいい。むしろぐだれ。ロボをどう倒すか魅せてくれッッ!! なのです。
 というかロボが勝てるビジョンが一周回って見えないのって凄いですね。普通に勝てない相手っぽい気がするのに、勝てそうに思える。ある意味積み重ねの妙味というのがここに来て明確になってきているのでは。そう思いつつ、この項を閉じたいと思います。
次の巻の感想
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