ネタバレ感想 船津紳平 他 『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』8巻

金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(8) (週刊少年マガジンコミックス)
金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(8) (週刊少年マガジンコミックス)

 大体の内容「やっぱりでかいな金田一……!」。そう思わせる『金田一少年の決死行』も収録されているのが、『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』8巻なのです。
 今回はちょっと詰め詰めで4編が俎上されていますが、その中でも特に際立って良さが出ていた『金田一少年の決死行』について感想を書いてみたいと思います。
 『金田一少年の決死行』は金田一が殺人の汚名を着せられるも、不屈の闘志で真実を暴き出すエピソードです。以前にも似たタイプの話はありましたが、こちらはその絵図を描いているのが高遠、というので、金田一の危険度ではトップクラスの回ともなっています。
 その犯人は、途中から金田一と行動を共にしていくのですが、その背景は今までの金田一犯人の中でも特段に暗いものになっています。幼い時期から洞窟に閉じ込められ、そこをなんとか、復讐を胸に生き延びた。その復讐に、それを含めつつ金田一をハメようという意図で高遠が絡んでくる。そういうお話です。
 その犯人、作中の言葉を使うなら巌窟王は、12年という長きにわたり洞窟生活をしていました。それゆえに、復讐心があるにしても外の世界が眩い、という状態になっていきます。それを、金田一が陽、高遠が陰の側面を持って、外の世界、というものの素晴らしさと恐ろしさを巌窟王に見せていく、という流れで、この漫画は推移していきます。どちらも金田一世界では相当の陽と陰。それで気持ちがぐらぐらしちゃうのも、仕方ないな。と読者に思わせてくるのです。
 そのことが最後のシークエンス、つまり犯人暴きでの、犯人であっても困難を共にした事には変わらない、という金田一の親友発言に繋がり、巌窟王も、金田一は友達だ、という言葉を引き出します。この辺の流れが大変上手く決まっていて、それだけのアップダウンが巌窟王にあった、というのもきっちり提示されており、今までの犯人たちの事件簿シリーズの中でも出色の出来、と言える仕上がりとなっていました。やっぱりでかいな、金田一……っ! 『怪奇サーカスの殺人』編で14歳の着替えを覗こうとした奴とは思えんくらいだ!(色々台無し)
 さておき。
 巌窟王が捕まり、いつもの試合後インタビューが始まりますが、そこに唐突に今までの、つまり『犯人たちの事件簿』の死亡犯人たちが、巌窟王に語り掛けてくるシーンが含まれてきます。お前ら、巌窟王のこと知らないだろ! というツッコミを全編にかましてくる謎シークエンスですが、成程、これで『犯人たちの事件簿』シリーズが終わるのか、という話がちらりと見えてきます。実際、金田一の連載話は大体やっちゃったので、それも仕方ないか。
 などと、その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ。
 ということで、巌窟王に語られる、もうちょっと続けて欲しいという編集部の意向! というので、これで終わりじゃないならなんだったんだよさっきの霊は! というかなりのボケをぶっこんでこられました。本当に、終わりじゃないなら本当に何だったんだよあの茶番! という感じでしたが、とりあえず後2巻分はやっていく、という話になり、それで少し安堵した私もいたりします。もうちょっと、読めるんだ! という感じですね。さて、金田一に勝てる犯人は出てくるのか。このシリーズが最後まで続くならそれは……。感がありますが。ということで後2巻、刮目したいと思います。