ネタバレ感想 吉田創 『ガールズ&パンツァー プラウダ戦記』3巻

ガールズ&パンツァー プラウダ戦記 3 (MFC)
ガールズ&パンツァー プラウダ戦記 3 (MFC)

 大体の内容「西住まほの狂キャラっぷりが如実になってきた!」。プラウダの方の話と平行しつつ、黒森峰の話もされるんですが、そこでの西住まほという存在の狂っぷりがヤバすぎるというか、この内実であって、その年の10連覇は達成されず、西住みほは脱落、となってもその次の年に、つまり『ガールズ&パンツァー』本編年にラスボスとして君臨する、ってまほさんちょっとおかしくねえか!? となってしまうのが、『ガールズ&パンツァー プラウダ戦記』3巻なのです。
 野上武志ガールズ&パンツァー リボンの武者』でも強キャラっぷりを見せていたまほさんですが、こちらではどちらかというと狂というべき姿を見せています。戦車道は人生(ライフスタイル)まで言うまほさんですが、その年は10連覇を望まれた年であり、同時に頂点から失陥した年でもあります。だからこそ、その後を我々は知っているがゆえに、そのすっくと立つさまが逆に怖くなってくるのです。その足元、ヤバイ!
 ここまでは特に語られていなかった、というガルパンにとってはいつものムーブで、黒森峰の現状、まほさん2年時の、というのが語られますが、その内実は、西住家忖度の塊でした。みほさんを過剰に手厚く扱う辺りがまさにそれ。訓練も、どこかマスゲームのそれになりつつある。そもそも、3年がこぞってやめて空洞期となってきていて、というのが開示されていきます。
 その状況下でも、まほさんは強くあらねば、としております。実際に黒森峰は決勝までコマを進める、というのは既定路線でもあるんですが、そんな状況下の黒森峰を引っ張れた、というその存在の凄さが、やや常軌を逸しているのでは? と思ったりもします。しかも、その決勝で、黒森峰は負ける訳でしょう? それなのに、この頃とアニメ版、それから劇場版にリボ武者で、まほさんのメンタルがその時期にヤバかった、という雰囲気がないのです。というより、この失態をさらっと越えてしまっているのではないか? というヤバい予測も立ち上がってきます。
 下手すると家名に傷がつくどころじゃない上に、妹は責任を取ってか出奔。たぶん、その年は大揉めに揉めただろう。そういうメンタルに大ダメージのところがあるのに、それを全く感じさせずに以後もまほさんしている。特に妹に対して何かしら黒いものがあったりしないか、この状況だと。と思うんですが、劇場版やリボ武者のそれを見るにそう言うの全く無さそうに見えます。リボ武者の「無能な指揮官だぞ?」くらいですよね、そういう黒まほ見せたの。そこがあるにはある、というのがリボ武者の提示でしたが、その後でその黒を引っ張ることはあんまない。何なのこの子……。
 実際問題、みほさんはその辺の葛藤が酷くあり、出奔、という形だったのではという部分それが、今のガルパンの基礎がある訳です。しかしこの黒森峰クライシス一歩手前なプラウダ戦記状態ところから、それでも次の年の決勝にコマを、というので、その後のまほさんの辣腕というのがあった、とは思うんですが、ここでメンタル挫けるも実際あると思うんですよ。なんといっても18歳ですよ? まだまだ子供と言える歳ですよ? 家元の力も絡んだかもしれませんが、それでもPTAのせいでガタガタになりかけてて、その上での敗戦、となった黒森峰を引っ張れるものなのか? な訳です。ここはこの漫画のおかげでクローズアップ出来た部分なので、実際その時の顛末が気になり過ぎる状態となっております。じゃなく、その辺の時の黒黒としたものが、以後のまほさんから全く見いだせない、というのが問題なのです。どんだけメンタル強者、いや狂者か? とにかく常人のそれじゃない! とか思うんです。普通何かありますよね? ない訳ないから、フォローありますよね? と狼狽えてしまうのです。どうなるんだろうか……。
 まほさんの常人ではなさ具合は精神面だけではなく、戦車道でも発揮されております。照準に入らない動き、という、言葉にすると簡単だけどそれ実践無理じゃね? なことをやっておられました。その様子を見て、更に位置バレしたカチューシャがビビりまくって睡眠障害をするくらいですから、常軌が逸しているのは間違いないところです。それに対決出来るのはその時点ではみほさんだけ、というのも相まって、強キャラムーブが偉いことになってきました。
 でも、そこに対策はちゃんと持っていく、というのがこの漫画の地力のあるところ。それもプラウダらしい戦術、と言うのもあって、考えるなあ、と感心しだいでありました。偵察しておいて何の策も出さない訳がないにしても、その点を思いつけたし実行できるのが現プラウダなのだ、という矜持を感じました。この辺はしっかりしておる。
 さておき。
 今回一番笑わせてもらったのは、アールグレイさんとダージリンさんの寸劇、もなんですが、それ以上にノンナさんが隊員を一人吊るしたところが最高でした。ノンナさんの胸にキスマークが! ということから発展して、ロシアンマフィアに男がいる、という話に転じてしまったその根源を絶ったら吊るすことになった、という顛末です。そのキスマークは、ノンナさんがカチューシャの睡眠障害の軽減に肌を出して抱いたら吸いついてきて、という真実がそこに植わっているのですが、そこをバレない為も含めての粛清だった、というので二重で腹筋が鍛えられました。何気に酷い話な部分もあるんですが、まあロシアンマフィアとか言い出したら行き過ぎよね。
 さておき。
 3巻最後で、とうとう戦車道大会へと向かう形になった訳ですが、案外この漫画さっくり終わるのだろうか? という疑念が出ています。もう、件のところに近くなってますからね。そこまで長引かないのか、とも。個人的には、まほさんのメンタルの変遷が超見たいので、プラウダが天頂とってから、みほさんが台頭するところくらいまではやってもらいたいんですが、さて、どうなるのやら。と疑問を置いて終わり!