ネタバレ?感想 原田靖生 『マジカルパンチ マジカル抜き』1巻

マジカルパンチ マジカル抜き 1 (少年チャンピオン・コミックス)
マジカルパンチ マジカル抜き 1 (少年チャンピオン・コミックス)

 大体の内容「魔法が効かなければ物理で殴ればいい」。魔法は、あります! とする芦花久遠さんは高校生。いや、マジ魔法あるんですってば! とやって笑い物になる彼女ですが、ある日魔法陣にえっちらおっちら、とするとまさかな、魔法陣が機動! そして良く分からないけど魔法のある世界に到達!
 呼び寄せたアンジェリカに魔法のスイッチを入れてもらい、魔法使えるぜえ! となった所で魔物到来! なる! 前哨戦だね! と魔法をぶっぱなしますが、魔法は何故か魔物に効かない!? どうする!? となったところで、この漫画の題、マジカルパンチマジカル抜き、つまり単なる武力が突き刺さっていくのでありました。
 そういう漫画なのが、『マジカルパンチ マジカル抜き』なのです。
 久遠さんは、何故魔物をぶちころがすことの出来る武力をもっているのか? というのは父がこの漫画世界のトップ10に入る武術家の愛娘だからです。幼少の頃から、修行と称して色々させられており、その武力が、この魔法の効かない魔物に対してがっつり刺さったのです。
 勿論、これは単なる当て推量で呼び寄せた訳ではありません。ちゃんと、その武力の継承者として、まず魔法に
興味があったがゆえに近かった久遠さんが選ばれたのです。どこでどうやって? 案件ですが、これは久遠さんを呼び寄せたアンジェリカさん(死んで幽霊に)が、幽霊なのをいいことに色々と調べた結果だ、と提示されていますのでご安心を。適当ではござらぬ。
 この漫画、一発ネタ感が半端ないと思われるでしょうが、それがどうして、きっちり練られた内容となっております。
 魔物の世界と人間の世界の間の狭間界でないとスイッチが入っても魔法は大したことがないとか、移動魔法陣は色々と制限があるとか、魔法の制約とかもきっちりなのもですが、魔法が効かなくなったことと、人間界のトップ10の武術家には魔法のことが知れている、という二つが、微妙に合わさりそうな意味合いを持っている点が、個人的にはおお、と思いました。
 普通は魔法のことなんて知らない人間世界の人が、魔法について知っている。これは、その人たちも呼ばれている? というのと、もしかすると魔法が効かなくなった理由に関係がある? というのが合わさっていると感じたのです。合うようで合わないけど、もう一つ線があればもしかすると、などと思っています。これはやるぞこの漫画……。
 さておき。
 導入からしてバカ漫画かと思われそうなこの漫画ですが、確かにバカ漫画です。しかし、かなりブラックな部分もある漫画でもあります。悪魔側は結構倫理観ガバガバというか残虐で、早贄(婉曲表現)を美しいとか言い出しますし、アンジェリカさんの親とかも縊り殺されていて、更にアンジェリカさんも、という話もあったり、久遠さんが幼少期に酷い目に遭った話も本当に酷かったりします。この巻最後の方で出てくるリンリーさんの、久遠さんへのコンプレックス話も中々に重みがあります。
 そう言う部分もきっちりある。でも基本は物理で殴ればいい。この明快さが、この漫画をさぱっと見れる一因になっているのです。それに久遠さんが基本的に陽性の性格でメンタルも強いのもあります。そこが二輪となり、安定感のあるバカ話として立ち上がっている、という見立てをしています。こっからダークに振れてもシリアスに振れても、結局バカに戻りそうな、その見事な足回りの基礎はそこ、と言えるでしょう。
 そういうことで、基本バカですが、ちゃんと召喚ものらしくあり、バトル漫画としても成り立っている。謎もちゃんと配置され、それが解決すると話も解決する方向性になるのも分かる、という中々のバランス感覚がある漫画、それが『マジカルパンチ マジカル抜き』なのです。