大体の内容「まだあったぞ金田一……!」。ということで、金田一少年の事件簿ものなら、短編だろうがドラマオリジナルだろうが全てを出しきる! という本当にファイナルターンに到達したのが、『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』なのです。
8巻でFILEシリーズもCASEシリーズも終わってしまった! という状況にありながら、まだ続けられるよね? という無茶ぶりから、とうとう金田一少年作品ならなんでも使ったる! という境地に到達した犯人たちの事件簿シリーズ。それによって10巻までの目算が立った形ですが、ここまで来ると逆にまだ続けられるよね? という話はブラフなのでは? というくらいに綺麗に10巻までのロードマップが提示されます。
そのロードマップ上の三作、『吸血鬼伝説殺人事件』、『オペラ座館・第三の殺人』、『雪霊伝説殺人事件』が、9巻の内容となっております。
個々に見ていきましょう。
『吸血鬼伝説殺人事件』
血を抜かれて死んでいる! という死体から吸血鬼という存在が……とおためごかしつつ、お話としては探偵が犯人、というパターンの話ですが、そこに金田一が来るから……。金田一……! という展開のお話でもあります。
殺害方法はともかく、メインのトリックに体重が絡んできて、それなら血を抜けば可能……! というネタで押す回です。が、犯人さんの泥縄っぷり、当初予定していた血抜き相手が体重増加して抜いても無理! でも美雪さんが丁度その体重! というので止めておけば良かったのでは、案件でもあります。美雪さんが絡んだら、金田一が発奮しない訳ないのです。まあ、金田一がヤバイ! というのに気づいてなかったのでしょうがないとは言えますが。
しかし、犯人さんのやり遂げようという意志は強く、美雪さんが想定通りの血を抜いてもトリック用の仕掛けが動かない……! となっても、なら髪を切れば! 減らせば! と想定外を乗り越えていきます。金田一犯人によくあることですが、その意志力があるなら犯行以外の方法でやられたこと弾劾出来ないですか? レベルの意志力です。そうすると話が終わってしまうのでしょうがないんですが、でもこのシリーズを見ていると、毎度毎度そういう感想を持ってしまいます。ここまでやれるんなら違う手があったんじゃあ……?
『オペラ座館・第三の殺人』
またか、オペラ座館! ということで、またしてもオペラ座館で殺人が起きる話。37歳の方でも最初がオペラ座館なので、不動高校とタメを張れる危険地帯です。
この回は、ちゃんと役者の人が臥薪嘗胆。トリックを考え、覚え、仕掛けを作り、実行する中で、初代ファントムがちらちらと先輩風吹かせまくるという、十重二十重にネタ度が高い回となっております。
とにかく犯人さんのメンタル、役者としての仕上がり具合によってかなり大がかりな仕掛けが行われますが、最後に役に立ったのはやはり役者魂。このままではこいつが殺せない、という段階になっても弛まず、最後の最後で出来た付け目をきっちりついて、殺人を全うする、そして証拠が無ければ金田一でもあわや、という中々レベルの高い犯人さんでした。
この犯人さんも、そこまで超考えて殺人する必要があったのか、というくらい頑張っていたのが印象的です。違う方向が流石にないか!? そこまでやるなら違う手でも良かったんじゃあ? とこのシリーズの犯人のよくあるパターンに突っ込んでいた印象です。
『雪霊伝説殺人事件』
吹雪の舞う雪山のペンションで起きる殺人事件! という要約すると、どれだ……! ってなりかねない良くあるパターンながら、どう考えてもこいつが怪しいというやつが犯人だった、という、金田一セオリー崩しをしてきた回です。
この巻の前二つの事件の犯人さんが憎悪で心がホットだったのに対し、この犯人は憎悪であっても心はコールド、凍てついた心でお前らを殺すぜ。という、ある意味珍しい回でもあります。
しかし、この犯行、色々とギリギリというか、バラバラ死体を窓の外から室内に組み立てる、というのが一つ大きいトリックなんですが、色んな意味でそれ出来る? というかくっつかないからよっぽどのことが無いとすぐバラバラだってバレない? 案件なんですよ。でも、犯人さんがやれているので、やれたんだ、で済まされるツッコミどころが切り立っている回でもあります。
つか、今までの金田一の事件のトリックの中でも特段にグロい! 何せバラバラ死体を組み立てるんだから! というのに犯人さんが心が凍てついているから可能。って言ってますが嘘だそんなこと―! といいたくもなる回でもありました。連載外は色々フリーダムだな……。
さておき
今回の巻で特徴的なのは、やっぱり犯人さんたちが不屈の闘志だなという点です。金田一犯人は大体常時精神コマンド不屈が入っていますが、その中でも特段だった印象を受けました。『吸血鬼伝説殺人事件』の犯人さんは特に不屈がガンギマリと言えるでしょう。予定とずれた! というので止めておくべきだったけど、美雪さんが丁度いい相手! となって続け、そそいてそれでも作戦が失敗しそうになるのに、でも! と頑張った様は、やっぱりそこまで殺人にこだわらなくても良かったのではないか、というあんまりと言えばあんまりな結論が誘導されるのでもう駄目。つか、不屈の使い方間違っとるんや! どいつもこいつも! という視点にどうしても引っ張られるのが、『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』の行きつく先なのです。