教養としてのまんがタイムきらら系漫画 第一回

この項について

 まんがタイムきらら系漫画を教養にしよう! という熱意のフリをして、まんがタイムきらら系漫画について語らう。そういうものになっていくと思われる項シリーズです。知るべきだースタローン、とまでは言わないまでも、教養として押さえる、という所作で相手より格上に見られる! という邪念たっぷりでお送りいたします。いたしまーす。んがぐぐ。
 と終わりそうですが始まります。それではいってみましょう。

第一回 『けいおん!』と『けいおん!』フォロワーと『けいおん! Shuffle』と

 今回はきらら系の漫画として知らない人はそういない。居たら貴重。でも意外といるのかも? な、とにかく一時期の大看板、それもきらら史に残るものだった、かきふらい先生作『けいおん!』について語って行きます。そしてそのぱっと見のフォロワー、そしてかきふらい先生自身がフォロワー化している『けいおん! Shuffle』についても書いていこう。そういうものであります。
 そもそも『けいおん!』知らん人おる? というスタイルでこっから先は書いていくので、内容はまだしも、基礎情報くらいは自ずから仕入れて頂きたい。単純に言うならググれ。そんなに手間じゃねえですよ。ここは義務教育の場ではないのだ! 己の手で掴みとれ! という面構えをかましてまいります。
 それではいってみましょう。

さて、『けいおん!』とは!

 さて、『けいおん!』とは! とまず大上段で打ちかましますが、ここはベーシックに平沢唯さん達のいる軽音部の話です! と答えれば足りるでしょう。ここは意外と重要で、『けいおん!』は唯さん達がいた頃の軽音部の話である。という点を押さえる事で見えてくるものもあるのです。『けいおん!』は4巻で完結後、すぐに唯さん達の大学編と登場人物の1人である梓さんの高校編がとで袂を分かつというか、分離しましたが、そこに唯さん達がいた軽音部、というのが深く関与している、という見方も可能じゃないかなあ、と思う訳です。
 そういう訳で、『けいおん!』とは平沢唯田井中律秋山澪琴吹紬の四名のお話である、という設定をまずしてみる。そうするとそこに中野梓が加わり、それは最終的には分かれるけど、『けいおん!』の一部として高校編を担うようになる、という見通しが良い。
 『けいおん!』が受け継がれていく! とでも言いましょうか。あの四人からスタートした話。そういう話であった、唯さん達が種をまいていく物語であった、ということの証左ではないかと、ワタクシ見ておるのです。
 なので、『けいおん!』というお話が大学ちょろっとして区切り悪く終わるというのは、ある意味では高校生だったからこそ『けいおん!』であったのだ。今はもう違うのだ。ということであり、梓さん編としての高校もちょろっとしつつもちゃんと区切りよく終わるのは、やはりある意味では高校生だったからこその『けいおん!』であったのだ、ということなのです。
 ということで、そもさん! 『けいおん!』とは!
 説破! 平沢唯さん達がいる軽音部の話です! となる訳です。

けいおん!』の施行した制度とは

 突如施行した制度って記したくなったので記しましたが、大きく意味はありません。というか、これは当初よりきららに敷かれた制度なのです。そう、女の子がわちゃわちゃするという!
 わちゃわちゃとは。ノリと勢いでカカッとやるやつです。その漫画家さんの独特のノリと勢いで行う施策、それがわちゃわちゃです。『けいおん!』のわちゃわちゃは、初期は案外今見るゲスト作家さんのノリに近似だったりするのですが、2巻に移行して梓さんが出た辺りで、だいぶノリと勢いがかっつりと変わってきます。ふわっとしたノリは変わらずですが、勢いが一足増した感じになっています。擬音にするとぐわあー! とした動きです。実際は、ああ言えばこう言う、という言葉遊びとかではない、色んなコール&レスポンスの早さがいい具合となっているのです。
 これを表す戯れ唄に、

トリコロ』がつき、『ひだまりスケッチ』がこねし天下餅。座して食らうはかきふらいけいおん!

 というものがないですが。
 そう、ないのです。
 昔から勝手に私が思っていた戯れ唄なのです。
 しかし、雰囲気は分かっていただけるかと思います。前二作とも、女の子がわちゃわちゃする漫画として、後世に記録される漫画とであり、そのメルクマールの一つとしていい漫画となっています。どちらも、若干言葉遊びの面が強いとこがあるのが、差としてあったりしますがそれはさてとおきます。
 しかし、その二作が施行した制度を継承した漫画で、『けいおん!』の連載時期にメガヒットしたアニメ化きらら作品は、結局『けいおん!』に収斂します。『ひだまりスケッチ』もあるにはありますが、若干時期がずれている感はあるかと、勝手に思っております。枠もちょっと違いますしね。この辺はもっと詳しい方の情報をあてにした方がいいと思うので、ここは軽く流します。アニメのことはいいんだよ! それはそれで君とアンディに任せる。そ、そんなあ……。
 それよりも、きらら系の系譜としての、女の子がわちゃわちゃするやつです。この点に関して『けいおん!』が画期的だったことというのは、あえて言えば部活物という要素をこれに組み込んだことだと、私は身勝手の極みしています。
 部活物! というと様々な形態がありますし、『けいおん!』以前にもきらら系でも色々あったかと思います。『けいおん!』連載中にきらら加入した新参なので、そこがよく分かってないところはあるのが辛い所。
 しかし、『けいおん!』はその中であって頭一つ抜けた、というのには、やはり天下餅を食っただけの何かがあるという見方をするのが妥当でしょう。更にもう一段進めるなら、女の子のみ、という部分がフォーカスされるのではないか、と愚考するのです。

女の子だけ、の焦点

 きららが生まれる前までは、女の子だけ、というタイプのクローズドサークルは、無かったとは言いませんが少ない傾向だったと思います。だからこそ、『あずまんが大王』がヒットを飛ばして状況を変える、というシーンへと移るという指標として機能しました。そこから、女の子がわちゃわちゃ、という施行がぐっと、強く進むことになり、その同道としてきららも生まれた、という側面もあるので当然の帰結ではあります。
 そのきららの中にあって、『けいおん!』が大きく踏み出し、フォロワーを生んでいった背景とは、という視点を持ちますと、わりと訳が分からないという結論がするっとしそうなのですが、そこをせいやなのにエイヤと言いながらうっちゃれば、やはり女の子だけ、という焦点に辿り着きます。
 この焦点は、『あずまんが大王』で世の中に明確に意識させられた点ですが、それ以後のきららヒット作には漏れなくこの焦点の位置があります。例えば『トリコロ』、例えば『ひだまりスケッチ』、例えば『けいおん!』。という具合に。
 で、その焦点の位置こそが、おそらく名を成したきらら系漫画の特筆すべき位置なのだ、とも言えましょう。その焦点、詰まる所女の子が集まるところというのが、きららの名作にはついて回るのだ、とすら言えるのです。
 この点の位置が、部活とバンドにあたった、というのが『けいおん!』のエポックだったのです。という気がすると言っていた! か、勘で動いている!? という勘で言ってみるのです。
 つまり、女の子×部活×バンドという三つのミクスチャー。これです。
 部活物もバンド物も、他の漫画はある。が、女の子だけでわちゃわちゃやってないでしょー! という地点を見つけ出し、それ以後、フォロワーとしての部活物が出る、その素地を作ったのが、『けいおん!』の炙り出した焦点、ということが出来るでしょう。

部活物は多かりしや?

 『けいおん!』の部活物としてのエポックは、部活でするものに対して女の子を絡めれば、あるいは女の子だけにすればいい、という地勢の把握をさせたことにある。これに尽きます。
 その流れから行くと、かなりのきらら4コマ、あるいはきらら漫画が『けいおん!』のフォロワーとなる、といえることにもなります。
 その形式的フォロワーの最右翼は、三上小又ゆゆ式』であることは論を俟たないかと思います。
 いや、俟ちますね。
 形式的にはフォロワーとして最も映える『ゆゆ式』ですが、きららに加入したのは『けいおん!』初期から中期に移行する辺りです*1。この点を見ると、この、女の子+部活動、というのは既に『けいおん!』連載域周辺では既にわりとベーシックだった、と言える可能性はあります。見れる範囲での過去掲載作からすると、ぱっと見ではそうでもなさそうなんですが……。
 さておき、ここから記憶の印象という茫漠としたことを根拠にすることを、やや強引にフライング土下座して進めますと、『けいおん!』掲載初期域で、いうて部活物はそう多くなかった、という記憶はあります。女の子メイン、というのは当然あるのがきららですが、部活と組み合わせるのはそう多くなかったような気が。『けいおん!』がヒットして以後の方が、それ以前より遥かに多くの部活物が生まれた、とは言えるかとも思いますが。特にゲスト掲載では今でも部活物、という形を為していく漫画がけっこうあります。これは『けいおん!』に倣って、と言えるかもしれません。

フォロワーの形

 話が混乱していますので、ひとまずさておき。
 フォロワーの形式的なのは、影響があるかというとはてな? な部分があるものの、『ゆゆ式』(まんがタイムきらら連載)の名は上げられます。女の子×部活動、とくくってしまうとなんか違う気もしますが、しかし方向性は基本的に同じでありますし、このワンクッションを持って、更に『けいおん!』のフォロワーの孫とも言えるフォロワーもいます。
 現在で有望株では形式的フォロワーでは大熊らすこ『星屑テレパス』(まんがタイムきらら連載)や、こんぱる&ふじしまペポ 『のむラリアット』(まんがタイムきららMAX連載)があげられるでしょう。前者は女の子×部活動×第一種接近遭遇が継ぎ目なしに融合した今後期待の一作で、後者は女の子×部活動×プロレスという、女子プロはあるもんな!? という落としどころの見事さが決まった一作です。
 形式的以外では、直接的なフォロワーもいます。つまり、女の子×部活動×バンド、それ自体というもの。それの最右翼は学校外でバンドしてるから部活ではない、という気もするけどな、はまじあき『ぼっち・ざ・ろっく!』(まんがタイムきららMAX連載)や、ある意味ガールミーツガールだけどねじくれている、女の子×部活動×メタルバンドという、カコベン『ハルメタルドールズ』(まんがタイムきららMAX連載)辺り。
 この辺が直接的なフォロワーとなるでしょう。両者に共通するのは、『けいおん!』の持つゆるい感じにバンドする、というのを一つ拭って、ガチでバンドする、という話に仕上がっていることです。
 『けいおん!』は『けいおん!』で、なんかこの子らずっとバンドしてるのかもなあ、という変な言い方ですが、ゆるいからこそのガチ感はあるんですが、それよりもよりガチ度が高いのが、上記二作なのです。この辺りが『けいおん!』との差別化でもある、というのはうがった見方ではないと思います。
 最後に実質的なフォロワーというものがあります。これは簡単で、『けいおん!』との地続きな漫画、『けいおん! Shuffle』(以下シャッフル)のことです。

シャッフルのフォロワー度合い

 シャッフルは『けいおん!』の続編であるなどと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ。というくらいに、シャッフルは『けいおん!』の単純な続編ではありません。そもそも『けいおん!』のメインメンバーが出てくる漫画ではないのです。『けいおん!』メンバーの演奏を見て感化された、別の学校の生徒の話なのです。つまり、『けいおん!』の影響下にある、先述から絡めれば、あの四人によって種をまかれた人たちの話、というのが直喩で行われる漫画にシャッフルはなっているのです。
 シャッフルに関しては続編という扱いで周知された感がありますが、実際にはセルフオマージュと言える一作です。特にバンドに対するガチ度は『けいおん!』メンバーとはちょっと違います。紫、楓、真帆の三人は全くのバンド初心者、演奏経験皆無の面々で、この三人がバンドとしてなっていく話なのです。『けいおん!』メンバーはバンド初心者ですが、唯さん以外は楽器経験者だったので、そこが違うと言えます。
 更にシャッフル側には経験者の先輩がいるという、やはり『けいおん!』メンバーとは違うところがあります。ここに、更に先輩たちのバンド、という部分も挿話されるので、『けいおん!』とはかなり趣を異にしています。梓さん高校編の逆の位相、とも言えるでしょうか。
 そういう訳で、先に上げたように、直接の続編ではない、実質的なフォロワーという扱いが、シャッフルに対する評として正しいものだと思います。そして、女の子×部活動×バンド、という組み合わせに、まだまだ『けいおん!』な味付けは可能である、という証左としても、有効に発露してる漫画となっているのです。
 それと大きい所は、今のかきふらい先生のスキルを持って、バンド初心者の立ち上げからやり直している、ある意味での再奏をしているという部分です。

再奏としてのシャッフル

 先述ですが、『けいおん!』の初期のノリと勢いは、今で見るきらら系部活物のそれと大きくは違いません。今見ると結構拙く見えてしまう、という目が無駄に肥えた面倒なきららファンとしての発言すらしてしまいます。そこに当然光るものがあるから二巻乙にならなかったわけですが、実際ギアが入ったと感じるのは1巻中盤から2巻序盤辺りなので、実際2巻乙にならなかったのが割と奇跡的、そしてギアの入り方が異次元だった、という感想が出せるかと思います。
 そんな訳で、『けいおん!』初期はわりと今見るとこれが天下を取った漫画なのか? と不遜に思ってしまうのですが、それ以後はテクニックが増していくことにより、成程天下取るわ、となり、そしてシャッフルはその天下取った技術でバンド立ち上げの流れを描いていくのです。
 ここのテクニックが大変特徴的で、いつものようにコール&レスポンスの速度はありつつも、ローペースにバンドを組み立てていく、なっていくという部分に時間をかけることで、バンドとなっていく様や、上手くなっていく過程、そして先輩たちとの関係性とかも、かなり印象的に仕上げてくるのです。特に紫、楓、真帆たち3人がバンドになっていく様子は大変微笑ましく、バンドっていいなあ。というプライマルな気持ちが湧いてきます。
 この部分は、『けいおん!』では1巻の空域。ここは、わりとさぱっと過ぎ去ってしまったところです。今見ると本当にさっくりとやり過ぎていて、唯さんの人の良さ、屈託なさで一気にバンドとしての人間関係になってしまう、という弊害というかそこに唯さんがいなかったら成り立たなかったかな? がありました。その点の、早くやり過ぎてしまった部分の再奏として、シャッフルはこの部分をじっくりと描き出すという所作になっている、というのは穿ち過ぎではない、と私は思っています。まあ正しくても間違っててもどっちだっていいんですが。

けいおん!』とは何だったのか

 『けいおん!』とは、と言うのは既に書きましたが、もう一段踏み込んで、何だったのか? 何があったから抜け出たのか。
 そういう視座を持てば、一瞬そんなでもなかったっけ? と怪しく感じます。
 というので、既刊4巻+高校+大学まで買って読んでみましたが、これはもしやきらら部活物のアーキタイプを作ったのか!? という地点に到達しました。この漫画、実は偉大なる始祖となったのだと。
 『けいおん!』序盤は、すごく見た事のある、既視感あり過ぎると再見すると感じたのですが、逆だっ! 以後のきらら部活物が、『けいおん!』の序盤を追従しているのだっ! というくらいに、部活物アーキタイプを一代で築
いているのです。ちょっと変わり者が寄り合い所帯、という、きらら部活物の骨格をさらけ出してしまえばそれまでなやつを、最初ではないにしても、かなり皆の印象に残る形で作り上げた。
 この点こそ、『けいおん!』の存在意義にすらなっている、とすら言えるのです。
 一代で、これを生み出し、今なお模倣される。それこそが『けいおん!』の得難き何かではないか? そう思う訳です。

ラディカルグッドスピード

 さておき、『けいおん!』の序盤のアーキテクトっぷりは分かった。だが中盤からはそれとはまた別個の構造を構築している、とも言えます。この構築がシャッフルでも活かされており、ここが漫画家かきふらいのオリジン、と言うことが出来ます。というか言ってましたね、私。
 では、そのオリジンとは? というとやっぱり4コマであることを活かした即応性でしょう。4コマ漫画は基本的に4コマで片を付ける必要がある訳ですが、そこにおいての速度、というのが『けいおん!』は素晴らしく速いのです。
 4コマ漫画で満足感を高める為に内容を詰め込む、というのはよくあるのですが、『けいおん!』はその点は最低限度しかない。背景とかも必要な時以外はそう描かないのも相まって、コマから得らえる情報量は結構低めになっている。
 のですが、それでも全然満足度が高い。ここは、軽いからこその速度を出せるから、とすら言っていいレベルになっています。サクッと読めて、十分な満足度がある。この仕上がりこそ至上と言えるのです。
 ついでに仕込みというか、ネタとして埋伏させるのも、当然あるんですが、その情報力がすこぶる軽く、しかし非常に効果的に効いてくるタイミングで刺さるので、ホントもう凄い。この、時折励起して刺さるやつは、やはり憂さんの有能っぷりです。あの子、普通じゃない!
 この辺りは、久しぶりに読んで気づいたのですが、基本的にここはこういう速度、というのが非常に高いレベルで制度化されているという戯言さえ言えます。この速度勘は他の作家さんがやろうとしている時もあるんですが、かきふらい先生のレベルに到達した、というのはほとんどいない。しようとしてスカスカだったり、しても遅かったりと、そこへのアプローチはしても届かないことが多い。それだけ難度の高いことを、かきふらい先生はしている、ということが出来るでしょう。
 かきふらい先生も、それらを見て、そしてなによりも! 速さが足りない! とか言っているのかと思うと胸が熱くなりますね(妄想)。

キャラ物としての『けいおん!

 とはいえ、漫画的な部分でのアプローチでこの漫画を計るのは、全答とは言えないでしょう。女の子が皆チャーミングですヨネ。という本国流法しかない! するのもまた、『けいおん!』という漫画の在り方です。
 ただ、ここも、キャラクター性もやはりそこまで濃くないのが『けいおん!』です。それでも、女の子が皆チャーミングですヨネ。となるのは、やはりかきふらい先生の速度勘がある、と勝手に想像し始めますよ、ええ。
 というのも、『けいおん!』におけるキャラ感、というのは、連載していくにつれて、その都度積み重なっていったものだ、と既刊4巻+高校+大学を読んで気づいたのです。あるいは、そういう部分が最初から設定されていた、という可能性もある訳なのですが、わりと大雑把にこう、というのが積み重なっていった、という方が理解が通りやすい、と考えるのです。
 特にこれが顕著になるのは、中野梓さん加入からの展開です。というのも梓さん加入後は漫画の速度が一気にスローになります。1巻で一年生の内容をやってしまっていたのが、梓さん加入周辺からは2年が3巻分、となっていますし、学園祭ライブや新歓ライブ周辺とか、ピックアップされたところを時間をかけて、という形になっていきます。これによって、アニメの方でオリジナルがほぼ、という状態になるので、相性が良い方法論だったのだなあ、となりますが、それはさておき。
 特にですが、2巻の学園祭ライブ周辺は、梓さんが加入した後、ということで皆の色々な行動がよりクローズアップされ、それで起きることによってキャラを魅せる、ということが1年生の学園祭より濃厚にやっていくことになります。その分、お話の速度は落ちます。しかし他の部分を削ってここに集中! としているので蓋然性が高い仕上がりとなっていて、遅いことに気づかないやり口になっています。
 筋書き自体も、その形からこうなってこうか! と非常に納得できるのですが、キャラ的な動きについても非常に蓋然性というか、今までそっと積んできたものがきっちりと生きてくる仕上がりです。特に唯さんの風邪っぴき展開での、まさかの憂さん投入の流れは白眉。先に軽く触れたのもここですね。あまりに衝撃的な一手ながら、それによって憂さんのキャラと言うのが一気に固まる様などは、今見るとこんなにいいものだったのか! とぎゃふんとしてしまうところです。
 こういうキャラの細かい積み重ねと、時折見せる大返しとで、キャラクターを印象強くしていた、と単に言えばいいことをだらだらとながくしてしまいました。すみません。

まとめ。そうねえ。

 だいぶ長くなったので、そろそろまとめと参りましょう。
 『けいおん!』とはきららの部活物のアーキテクチャを作った逸品。ある意味では、この一作を見れば、きららの部活物の基礎は大体分かった。と門矢士顔出来る。そういうものとなっています。
 ですが、その情報量の統御の仕方とそれからくる速度というのは、今に至るまでかきふらい先生以上の物を持つ漫画家は少ない、とすら言えるものとなっています。情報量をどこまで削るか。新たな情報をどう無理のない範囲でぶっこむか。どこに仕込んでそれを回収するのか。
 かきふらいの美技に、酔いな。となる漫画です。その技術を持ってまた別のバンドの立ち上がりをやっているのが、シャッフルなのだ、という感じでしょうか。
 何が言いたいかって? 『けいおん! Shuffle』は跳ねるぜ! ってことです。
 ということで、長くなりましたが、今回はこの辺りで終わろうと思います。
 次回の予告先発は、今回メジャーどころだったので、当然のようにメジャーなとこ行こうかと思います。『しかくいシカク』はメジャーなとこですよね……。←彼は狂っていた

けいおん!Shuffle 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
けいおん!Shuffle 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

*1:けいおん!』掲載が2007年4月からで、『ゆゆ式』掲載が2008年1月から