ネタバレ?感想 大@nani:吉緒もこもこ丸まさお 『ゲーミングお嬢様』1巻

ゲーミングお嬢様 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
ゲーミングお嬢様 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 大体の内容「格ゲーをする時というのはね、なんていうか、お嬢様じゃなきゃ駄目なんだ。一人静かでオギャアアアで……」。
 最近の格ゲー漫画というのは、お嬢様じゃないと駄目なんですか? という感じで女の子が格ゲーする話が乱立していますが、その中にあっても常時ねじが三本程抜けている漫画。それが『ゲーミングお嬢様』なのです。
 『ハイスコアガール』から端を発した格闘ゲームするを女の子話。江島絵里作『対ありでした ~お嬢様は格闘ゲームなんてしない~』*1などはある意味では正統派。格ゲーに対してもお嬢様に対してもきっちりと前歩きの圧をかける、見事な技前です。
 対して、『ゲーミングお嬢様』はこちらもある意味正統派。それもギャグ漫画の文法での正統派です。『ハイスコアガール』も基本コメディですが、こちらはコメディというよりギャグ、という部分まで、格ゲーというものを推し進めています。
 最近はe-sportとして脚光を浴びる格ゲー界ですが、その積み重ねは一朝一夕ではないので、当然ジャーゴン、というかまあ格ゲーオタなら普通に口にしますわね。という単語がある訳です。そこが、しかし良く分からない人にだからこそ、ギャグとして通用するのではないか。という悪魔的奸智を持って前ダッシュ四回からの瞬獄殺という圧倒的ミラクルをしてくる漫画が、この『ゲーミングお嬢様』なのです。
 とりあえず、お嬢様が格ゲー、という設定が突飛なのは、それが異化効果ってやつを出す為というか、まあお嬢様が格ゲーって図抜けて頭おかしい案件ですわね。そういう地点の発見だった訳です。これについては後世に語り継がなくてはならない、ハイクラスだ! インシデントなのです。
 そもそも、格ゲーとギャグというのが親和性があるのか、ということへの解答がこの漫画です。何かよく分からない。でもなんかすげぇ! といわしめる語の配置と勢いだけで突っ込む、ドン・キホーテ級荒武者なのです。
 これで、格ゲー用語が分かっているからこそ楽しめるのですわよオジョオオオン、という格ゲー猛者だけに分かるのをなのに、普通に刺さるギャグ漫画にするからこの漫画は得難いのです。格ゲー分かってないと訳が分からない、が、お嬢様というかませがあるがゆえに、お嬢様が、格ゲー! というインパクトで有無を言わさないアトモスフィアを形成しているのです。
 とはいえ、この漫画を最大限楽しめるのはどうしても格ゲーマーという側面はあります。普通の人はベガ立ちの準備というワードでゲラゲラは出来ません。ワンチャンありますわ! でゲラゲラ出来ない。そういう意味では、格ゲーマーなら選ばれし者として、この漫画は楽しめる。そういう謎の優越感をバフしてくる漫画でもあるのです。
 この辺の情報の出し方、という面で前掲の対ありはちゃんと分かるようにしよう、というムーブをしていますが、この漫画は知らない? 調べろ! とまではいかないものの、知らないんですわね? でも、やるわよ。というある種王者のムーブでネタ漫画街道をバクシンガーします。その部分も、この漫画を格ゲーマー以外が最大限楽しめない足かせとはなっています。
 しかし、こういうネタは狭い所に投げれば爆釣なのは、今までの色んな濃いネタ漫画でも証明されています。狭ければ狭い方がいい、という割り切りは、翻ってネタの濃さについていける層に強く響きます。そういう意味においても、格ゲーを履修してない人なんていらっしゃいませんわね? という強面ムーブは、この漫画の強度の担保となっていると言っていいかと思います。
 この強度、地味に裏返って、でもなんかすげぇ! となってしまう偉容になるから、何が起きるか分からない世界です。ここから格ゲー用語を知っていく、という人すら生み出しかねないパワーに満ちています。そういう部分へのサポートメントが出来ないか、ということで私は<今日の『ゲーミングお嬢様』のワンワードから貯蔵庫 - オタわむれ 日々是戯言也blog>なるものをやって楽しんでおりました。そういう楽しみが見いだせるのも、『ゲーミングお嬢様』の強度を証明するものかと思います。
 さておき。
 基本的に格ゲーとお嬢様とそれらが生み出すケミストリーの漫画ですが、格闘ゲームには素直なのよー。という部分がちゃんとあるから困ります。ちゃんと格ゲー物としての理路がしっかりしていて、こうだから、こう! という理詰めさも存在します。
 これだけ頭おかしい前提の漫画なのに、格ゲーに対しては手を抜かない。そこが、本当の意味でこの漫画の凄いお所なのです、と提示して、今回はここまで。