ネタバレ?感想 高遠るい 『はぐれアイドル地獄変』12巻

はぐれアイドル地獄変 12
はぐれアイドル地獄変 12

 大体の内容「マオマオVSグゼバ!!」。11巻*1ではわりとさっくりと準決勝の海空さんVSミカさんをやったこの漫画ですが、今回は1つの巻を使ってマオマオVSグゼバ戦を魅せてくる。そういうのも出来るんだぜェ! という魅せ方をしてくるのが、『はぐれアイドル地獄変』12巻なのです。
 とはいえ、見所がない時間があったんじゃないかと疑われる筋もいらっしゃるでしょう。それだけ、今まではがーっと高速で済ませてきましたし、海空VSミカ戦もわりと早かった。
 だがしかし! まるで全然! それで高遠るいを計るには程遠いんだよねえ!
 と言う、何が程遠いのかよく分からない発言が、しかし12巻を読むと飛び出します。少なくとも私は飛び出しました。それくらいのpowerつまりパワーがある巻だったのです。
 このパワーの源泉は、今まで散々っぱらダークホースしてきたマオマオさんの闊達さと、その背後関係でしょう。その背後関係については、予想通り色々あるんですが、そこはそこ、ここはここ! と言う感じで今回も闊達にグゼバ攻めを行っていきます。
 しかし、その初手というのが、柔道をする、という宣言からのつかみ合いです。普通のやつがこれをやったら、タヒんだな……。自暴自棄か……。なんですが、そこはマオマオさん。作者もこいつ主人公みたいな力あるよね、とか言うだけのものを魅せてくれます。力を利用する柔らの力を利用する! という、書くとほとんど頓智ですが、実際にやってのけているところを見ると、な、なるほどー! ってなる魔弾による力の利用を魅せつけてくるのです。
 実際、何が何だかだったのは読んでいた私もなんですが、実際に映像としてそれが提示されると、な、なるほどー! しか言いようがないのです。文章だけでは伝わらない。映像にするには無理がある。だからこそ、漫画なんだろお! って所作がぶち込まれているのです。
 でも、この漫画に狂っておいてなんですが、あえて言わせていただくと、んなわけねーだろ! ではあるんです。そんなダメージのある変化出来るかあ! なんですよ。だからたぶん生身での動きとして、何かしらの特殊効果なしで映像には残せないだろう。でも、そこは漫画。出来るんだ、と言ったら出来るのです。そこを上手く突いてきた格好です。
 が、ここまでかなりの対戦が行われていながら、グゼバさんにはまだ持っているものがありました。それをもって宣言するんですよ。打撃をすると。
 アイエッ!? 付け焼刃重点!? などと、その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ。元々の柔の術には打撃もあり。そこをきっちりと履修して、打撃戦でも一流なのが、グゼバさんだったのです。ここの、そーきたかー。具合は素晴らしいものがありました。
 柔の術にあったから、ちゃんと履修している。だけでは通常飲み込めないんですが、今までの打撃の名手たちの打撃をきっちり刈ってきた、という今までの積み重ねが、ここにきて説得力をグゼバさんの打撃に与えているのです。その上で、打撃のマオマオに対して劣らぬところを、むしろ体格からの前歩きの圧すら有効打! とまで言わせておいて、きっちりその力を魅せつけるに至ります。
 元々体格差からして違いのある二者ゆえに、打撃を対処されれば後はどうしようがある? という状態までもっていき、実際魔弾で押そうとしたところで、今度は柔の技! となります。当然、そっちが本命なのできっちり決まる訳で、本当にたちが悪い強さとなっています。
 と、この段階でももう既にやたらめたらな展開なのに、ここからまたギアが一段上がり、マオマオさんとグゼバさんの乱打戦へと展開していきます。マオマオが、グゼバが、打つ! 打つ! 打つ!
 どちらが勝利するのか見通せない乱打戦の中で、しかし、勝負を決めに行った魔弾!
 からの展開が本当に凄い。柔道すげーなー、という脳みそ使用率2%の感想しか出ないんですよ。正直に言えば、何をされたかは分かっているし、解説出来るけど、感得はさせられないだろうという、そういう類のものでした。主人公補正をぶった切る力、という、よくよく考えると異常なそれを、グゼバさんが魅せてくれます。運命を変えようが何だろうが落ちる者は落ちる、という領域。柔道すげーなー。
 さておき。
 そういうことでマオマオVSグゼバ戦で、この12巻は終了します。最後にマオマオさんとかの後の話がちらっとにおわされたりするなど、ここまで来たらそれくらいのものは入れたいよね? という所作もありますが、1冊使って1試合。これに遅いとか全く思わない、というかもう終わっちゃったの!? という速度はきちりと存在します。1巻丸々の長丁場だったはずなのに、もう終わった!? ってなる、その妙なる速度感は、本当にこの漫画の存在を変な方向に流してもいるんですが、それでも楽しい。これが終わったら終わった! くらいの見切りで元のエロネタに戻っても私は一向にかまわんッッ!! のだけど、戻らんだろうなあ。
 そういうある種諦観もありつつ、しかしだからこそ今楽しむんだろうが! という感じで、ある意味最強が最強ムーブで海空さんと当たることになった訳で、果たしてその試合はどういう決着を? というか海空さんの積み重ねだけではグゼバ戦勝てそうにないくらいにグゼバさん積もっちゃたんですが!?
 なわけで、最強に勝つに足る何かが、海空さんに宿るのかどうか。このままそれが無く倒したら一気にブーイングもんなので、高遠るい先生にはしこたま頑張っていただきたい。
 などと勝手なことを言いつつ、この項を終わりたいと思います。