ネタバレ?感想 木々津克久 『フランケン・ふらん Frantic』4巻

フランケン・ふらん Frantic 4 (チャンピオンREDコミックス)
フランケン・ふらん Frantic 4 (チャンピオンREDコミックス)

 大体の内容「メディカルホラー、以外の面も結構ヤバイ!」。ということで、巻数を重ねるごとにアイデアが先鋭化し、し過ぎて刺突武器になっている漫画。それが『フランケン・ふらん Flantic』4巻なのです。
 無印『フランケン・ふらん』の段階でも巻数を重ねるごとに内容がえぐくなっていましたが、Flanticではその方向性がさらにパワーアップしており、巻数を重ねるというのはこんなにヤバイことなのだ、という謎の大悟を得てしまうレベルとなっています。
 全編トンチキというか、発想がトンデモなんですが、その中でもBL回はこの漫画の一つの極みとして記録に残さないといけないだろう、というまたも謎の大悟が襲ってくる仕上がりとなっています。
 内容の方は、ある日学校の図書館でBL作品を見つけてしまったふらんさんが、そのBL群を図書館にねじ込んだ当人の切野さんと出会うことで、BLに傾倒していく、という話です。
 これだけ聞くと、大したこと無さそう、と思われる方もいらっしゃるでしょうが、ふらんさんは生体科学については超の付くエキスパート。そして人を改造しても特に何も思わない危険メンタルの持ち主で、この回ではBLこそ、男男こそ生命の在り方! と大悟して、BL分子ロボットの作成に成功してしまい、それに気をよくした切野さんがそれをばらまいてしまうという事態に。
 ここで、対策を、とならずにまあいいか、となるのがふらんさんのヤバ側面というか、ほぼどの面もヤバいんだけど特にヤバい面です。どう考えてもヤバいものがばらまかれるのに、まあBLになるだけだからいいか、みたいな対処で、結局実際にばらまかれてしまうことになる訳です。
 その結果、街には男色が溢れて、という状況となるんですが、それで切野さんが満足できねえぜ! 私も男になる! って言いだしてもう駄目。そのまま男子に性転換手術を受ける形になります。ヤオイアナをつけてくれ、というまで余裕があった切野さん。ですが最終的に男の性欲ってあれよなあ、というエンドになってしまいます。この流れのアレさ加減は並の漫画では得られないものがあり、木々津漫画読んでいる、という妙な信頼性が生まれてくるところです。
 その上で、ふらんさんはBLに全く興味がなくなる、んだけどそのミームというか残滓をヴェロニカに、というので、もうやめて! ヴェロニカの属性付与が限界よ! ってなる形になっています。このネタはまあ今回だけ、ということなのか、ヴェロニカが腐女子になってしまうのか、油断できないところです。
 BL回が際立って頭おかしかったせいで忘れがちですが、他の話も全体的にアレ過ぎて、このままこの漫画が順調に育つと、日本の漫画界の危機が訪れるのでは? という錯乱めいた気持ちにすらなります。それくらいに先鋭的な内容となっているのです。
 個人的にはBL回以外ではジジババ若返る話の身も蓋もなさとそりゃそうだよなな展開、そして偶にいい話めいたことするとすぐこれだ! という唐突さが大変好きです。まともに頭が働いたら、そりゃあそうなるよ。という木々津先生の自分から始めておいて自分からちゃぶ台をひっくり返すの、ホント好き。あなたがやりだした展開なのに! 感が凄いんですよ。どうちゃぶ台がひっくり返ったか、は読んでいただきたいところです。本当におまっ! ってなりますよ。
 そういうトンチキな話もありますが、木々津先生のもう一つの側面、精神的グロが今回も発動していました。
 BL回も大体において精神的グロなんですが、それ以上なのが、以前、無印の時代に崩壊した悪の秘密結社の怪人が、ヒーローにやられる、という話。っていうか生きとったんかわれぇ! もあるんですが、その怪人に娘がいて、というのでその回最後のコマで精神的グロがぶちかまされます。
 絵的な面でのグロもある漫画ですが、この精神的グロがやはり強いのが木々津漫画の真骨頂と言えます。久しぶりに食らって、かなりのダメージでしたよ……。おろろろろ……。
 ということで、巻数が重なってきたがゆえに徐々に力の具合が強くなってきたFlanticシリーズ。このままどこに行くのか、ただ一人。ギター抱えて、ただ一人。とキカイダーのエンディングを歌いたくなるくらい、独走態勢なのが、『フランケン・ふらん Flantic』の現状なのです。