ネタバレ?感想 平方昌宏 『デビィ・ザ・コルシファは負けず嫌い』1巻

デビィ・ザ・コルシファは負けず嫌い 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
デビィ・ザ・コルシファは負けず嫌い 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 大体の内容「悪魔界最強最強のデビザコさん!」。お前は本当に悪魔界最強なのか? という醜態を晒しに晒しまくりんぐするデビィ・ザ・コルシファさんの漫画。それが『デビィ・ザ・コルシファは負けず嫌い』なのです。
 この漫画はデビィさんが、他愛のない遊びの勝負で負けまくる、というのをキャラクターの押し出しは毎度強い平方昌宏先生がやっていくという、デビィさんの魅力一点突破漫画です。お話の基礎形はデビィさんが負ける、というお約束があり、ゆえに一生やっていける素地がある状態となってもいます。
 ただ、遊びのアイデアが尽きたら、そこで試合終了だよ、という気もしますので、ここでどう限界までやるのか、というのが大変楽しみです。お話の限界値に到達した時こそ、その漫画が一番輝くのです。そうなるのが楽しみだなあ!(ある意味外道)
 そう言う訳で、お話というのは基本添え物だと思った方が、この漫画の理解はスムースです。デビィが出て負ける! という基本コンセプトの中で、いかにデビィさんの魅力を、ポンコツの力を魅せていくか。それに腐心した一作と言う風に勝手に思っています。
 そんな訳で、デビィさんが強カワイイ、チョロカワイイ、ザコカワイイ、バカカワイイを繰り広げていくのが、この漫画と言えるのです。
 これが大変徳が高い。
 というか、この漫画に出てくる女の子は皆チャーミングですヨネ。と本国流法してしまうくらい、皆さんカワイイ。
 この漫画の大メインなので、デビィさんがカワイイのは確定的に明らか。悪魔界最強のわりに、心理戦とか超ダメダメだし、堪え性は無いし、バカだし、なんか全体的に持ってない。
 完全に駄目悪魔なんですが、そこが一周回って魅力として立ち上がる、という所作となっております。
 とりあえず、表紙のキャラがわちゃわちゃするんだろ? という理解で手を出して全然問題ないという地点にまで着地してもいます。そう言う漫画だからこれ!
 キャラ的な造形で言っても、デビィさんは完成度が高いですが、そこに対する理屈もちゃんとあるのが強い。第一回のババ抜きで披露される、頭のあれが心と繋がっているというので、一話目にしてそこを見るという方に誘導してい、その後もきちんと読者に示唆的していたりします。またごっつグラマーだけど、それに対して手足細すぎないか? というのを、でも悪魔だしな。というカードを切っている辺りなどが、特に個人的にぐっときました。夢のバランス!
 デビィさんの造形以外の点でもきっちりカワイイです。極度の負けず嫌いで高飛車だけど、オセロ回で登場の苦手な幼馴染ディアブロさんにはへーこらへーこらしていたりする、けどディアブロさんが負けたらここぞとばかりにマウントをとるとか、本当にこいつ……! ってなるところです。
 しかし、そういうムーブまでもうカワイイ、となってきているから困ります。そもそも悪魔界最強なのにディアブロさんにへーこらしているのがよく分からんのですが、そういう部分もある、という押し出しとして見ると、悪魔界最強なのにつけあがらないのがむしろカワイイに見えてくるのです。
 ディアブロさんがデビィさんに匹敵するくらい強いんだろう、という見方も可能ですが、ここは幼馴染に対する苦手意識が強くなっても全然抜けないデビィさんがカワイイに変換されるようになってくるとこの漫画に良い感じに染まってきています。当然私は染まっていますよ。
 デビィさんは当然ですが、それ以外の悪魔さんもだいぶキャラが立っています。
 空間移動の力を持つレイズさんは、デビィさんの行動時間制限の一因でありつつ、デビィさんの対偶と言える位置です。
 有能で何でもこなせる悪魔っぽい、でも人当たりは優しい、というよくよく考えるとそれで悪魔? な方ですが、それゆえにデビィさんが妙な対抗意識を出して胸は自分の方が大きいんだあー! とかしょうもないマウントしたりします。デビィさんがよりポンコツに見えるように配置されたキャラクターと言えるでしょう。
 ディアブロさんはまだ1巻では1回の登場で、デビィさん並みに強そうだけど、デビィさん並みに戦闘以外はザコいという事実によって、一気にキャラクターを立ててきます。いつもはデビィさんにきつく言っている、その御仁がデビィさん並みにザコい。高潔そうな存在がザコいって、素晴らしいわ! ってなります。ビバ!
 と、そんな感じで、キャラクターの立ち上がり具合はとても高い漫画です。
 とはいえ、これで長期キャンペーンみたいなのが出来るようになるのか、それともこのままこじんまりとした勝負に終始するのか、という問題はあります。どういう方向性を狙っているのか、今の段階では見えません。
 しかし、どっちにしろ、遊びのネタが切れれば早晩どうするか、という地点に立つので、そこに立って初めて、この漫画がどういう存在になるのか、というのが提示されると思います。だから、思い切り長期連載になるがいいや! と思うと書いて、この項を終えたいと思います。