人には、時に訳の分からないものを求めること、とかない?

この項について

 まずカカッと書き出すと、この項はとりあえずなんかよく分からん動機で認めるものであります。なんか頭の中でクロスオーバーというか、かち合ってぐるっと一つの向井理として出てきたので、これは書かんといかんな、となったのですが、ある程度当たりをつける段になって需要あるの? みたいなことにもなってしまいました。
 なので、わりと訳が分からない項になりますがとりあえずは、訳の分からないものっていいよね、みたいな方向性は持っていたいと思っています。思っているだけなので、そこに着陸するかは未知数ですが、それを言い出すとどうにもならないので、ここは初期衝動だけで突っ走りたいと思います。
 ということで、訳の分からないものに惹かれるよね? という確認、やっていきます。

真顔の変質者から不沈艦まで

 訳の分からないというとなんでしょうかね。と謎から吹っ掛けますが、ひとまずは、どういう筋道か分からん、というのが訳の分からないものだろうなあ、というアバウトな理解でいきます。
 そういうキャラは、嚆矢としてはまさるさんやボーボボボ・ボーボボ辺りなんでしょうが、ワタシとしてはやはりトシは真顔の変質者、キース・ロイヤルを推す! と柳生宗矩を推す土方歳三ムーブしてみます。個人的に訳の分からない系、筋道不明の例として最初に触れたのがキースだったりするので、どうしてもそれに引っ張られるのです。
 そもそもキース・ロイヤルとは誰ぞ? というすくたれものもいらっしゃるでしょうから、ググれ、と言いつつも少し解説すれば秋田禎信魔術士オーフェンはぐれ旅 無謀編』の登場キャラです。コギーこと無能の家の執事をしている、んですがまあ色々あれのよ。
 無謀編の顔役と言うか、無謀編が一番頭おかしかった頃の大看板、と言うと語弊がありますが、こいつが見たいんだよ! で無謀編を引っ張り過ぎてむしろ最終的に存在が薄かったというキャラです。その使い勝手ゆえに訳が分からない系の勃興から衰退までを一人で行っていた節がある、まあおかしいやつです。
 キースは基本的に訳が分かりません。斜め上、と言う言葉が膾炙した頃なので、こういうのが斜め上なんだなあ、という理解すら出来る仕上がりです。とりあえず、こいつがなんかしてるから訳が分からないんだ、異常を出さない仕上がりです。こればかりは口にするよりは読んでもらいたいと思うところです。得られる感情を言語化するのが妙に難しいやつなのです。
 キースが訳が分からなかった理由は、おそらくその使い方にキーがあると、見ております。とりあえず無茶苦茶しても、最終的にキースを出せば解決する。してないけど、オチはつく。そういう最終兵器執事だった、ということです。訳の分からない展開にしてもキースでどうにかする、というのは本当に沢山あるんですが、キースの許嫁が来る回などは特に訳が分からないというか、もう訳が分かることをしようとしてない回で、今思い出しても記憶に鮮明に残る訳の分からなさでしたが、文章のものなのに文章にするのが難しいという謎の状態になるので、本当に勘弁してほしいです。今でも思うけどなんだったんだあれ。
 この、訳の分からない展開になってもなんとかする、はまさるさん辺りには通底するものがあります。まさるさんといって何の事か分からんとかうせやろ……、ですが、それはググれとして、まさるさんは結構無茶な話も折りたためるキャラがいるので、無茶苦茶訳分からんけど、なんとかなっていたという風に考えています。
 が、ボーボボボ・ボーボボまでいくと、訳分からんを訳分からんと言うオブラートで包んでいくという、つまりビュティが、ツッコミ役がいても何もかもが訳分からんという、傑出した立ち位置になってきます。ストーリーとか、まさるさんまでのギリギリなんとかなっていたとこを、訳は捨て去る物。とトキ声で言い出したのが、ボーボボだったのだ、という理解になってくる訳ですが、既に訳が分からない話になっていますね。このまま行きます。
 で、この訳が分からないの新パターンとして、『ウマ娘 プリティーダービー』からゴールドシップが御こしになる訳です。『ウマ娘』は基本ちゃんとした話なので、その中の異端としてゴールドシップはあるわけですが、それを差っ引いても訳が分からないので堪りません。個人的にはキースとタメ張れるのはゴールドシップしかいないという謎の信頼感すら生まれています。『ウマ娘』というストーリーとちょっと隔絶したがゆえに、キース並みの、もうこいつがするから訳分からんことなんだ、という大悟を得られるタイプです。実際訳の分からんことをしているので、尚更訳が分からん、訳分からんを訳分からんのオブラートで包む感じは、ボーボボを彷彿とさせるところすらあります。成程、新時代の訳分からんだな、という理解になるのです。

垣間見えるものがあると逆に混乱する

 しかし、ゴールドシップは色々無茶苦茶なんですが、偶にこの子普通にかわいいのでは? という瞬間が垣間見えたりするから困ります。ミリ秒でんなわけねーだろ……になるんですが、でも瞬間瞬間では可愛い気がするのです。ドロップキックの後の一瞬のいい顔とか。もうこうなると完全に製作者の思うつぼなんでしょうけど、これを狙って出せているからゴールドシップは恐ろしいのです。
 ゴールドシップとタメとしているキースもよくよく考えるとちゃんとしているところはありました。無能の姉、ドギーさんの夫に対してずるべた腐りジャム野郎と言う、というそこのとこだけ取ると意味の分からないシークエンスがあるんですが、ここでちゃんと先代の遺言でそう言いつけてたので守っている、そしてそういう時は噓では言っていない、というのがドギーさんの態度で分かるというのをやったりしています。あれだけ奇態で頓狂なキースに、仕事に対しては真面目である、と言う部分があるのが垣間見えるのです。
 そういうちょっとしたところでちゃんとしているの垣間見えるのほんと止めて! そういうのギャップとはまた違うんだけど、なんか性癖みたいなのにクリティカルヒットする! ってなる訳ですよ。
 キースはハーチョイ、『魔術士オーフェンはぐれ旅 ハーティアズチョイス』でも、職務には忠実だ、というのが描写されてましたが、それの結実がラストのあれ、というので三周くらい回ってその垣間見え! ってなるので、訳の分からないもの好きには堪らないものがありました。そこに至る過程がキングクリムゾンされているから、全く訳が分からん! で、そこにいるやつみなごろしなんだろ? 尚更! ってなるんですよ。でも、職務には忠実。私に、どうしろというのだ……。ってポルナレフ顔です。

訳の分からないものとしてのあfろ『月曜日の空飛ぶオレンジ。』

 そういう、訳の分からないものから突如としてお出しされるものに弱い人には、あfろ『月曜日の空飛ぶオレンジ。』がお薦めです。と、唐突にお薦め漫画紹介の呈をしだしますが、いや、これほんと訳分からんのにいきなり素敵な顔を魅せたりするんですよ。
 そもそも『月曜日の空飛ぶオレンジ。』が何か分からん人も多いでしょうから、それについて解説すると、『ゆるキャン△』で一山以上あげてるあfろ先生のきらら処女作が『月曜日の空飛ぶオレンジ。』です。六日島というところで繰り広げられる、訳の分からない事態の応酬。それが『月曜日の空飛ぶオレンジ。』です。信号機の苗とか、電波で人が集まる山とか、ひもを引いたら虚空からなんか降ってくるとか、横に寝がえりを打ったら死ねる建物とか、全編において訳が分からないで押してくる、という強度の訳分からん漫画ですが、その中にあって登場人物のヨシノの、その兄の関係の話が、ちょっと常軌を逸してエモいんですよ。
 最終的に時間軸が兄とはずれてしまうんですが、それが異常なエモさを醸し出す、という、これもまた垣間見えるそれのせいですっとこどっこいなとこが、この下敷きがあってこの訳の分からなさ! という感じに立ち上がってきます。馬鹿め、の展開がそこだけ取り出すと訳分からんのに、ちゃんと読むとエモさ爆裂究極拳なんですよ。これを知る為に、全人類は『月曜日の空飛ぶオレンジ。』を読むべきだとする過激派になりたいくらいです。
 しかし、この漫画の場合、訳が分からないがキャラではなく舞台に、背景世界に設定されているのがまた面白い所です。今まではキャラクターが訳分からん、というのを見てきたので、一層それが明確になるかと思います。この辺、訳分からんの系譜というのが、ファンタジーやSFからミステリーから移っていった、という見方も可能かもしれません。訳が分からないなりになんとかやる、というのが、時代と共に推移している、という事を考えてもあながち間違っています。

訳が分からないとは

 と大上段で最後のまとめとしようとしましたが、まとめの言葉が出てこないので困ってしまいます。ただ、訳が分からないはあまり長くなると製作者側がきつくなる、という側面はあるかと思います。
 実際問題、訳分からんの権化であるキースも、無謀編が終盤になると出番が減っていきます。あまりに便利だった、というのと、あまりに野放図だった、という理解を勝手にしていますが、とにかく無茶苦茶を、というのは大変なのが、そこに現れていると思うのです。
 それに、人は慣れてしまうものです。だからこそ、それを常に上回る、というのが大変という側面もあるのだろうなあ、と。そう考えると『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』はあれだけカオスなのに20年以上続いているから凄すぎますね……。増田こうすけ先生は神なのではないだろうか?
 と、最後に増田こうすけ神説を唱えて、この項は終わり。お疲れさまでした!