感想 勘米良優助 『夜凪さんのよなよな餃子』1巻

夜凪さんのよなよな餃子 1巻 (トレイルコミックス)
夜凪さんのよなよな餃子 1巻 (トレイルコミックス)

 大体の内容「意外とパワのあるね……」。とある都会で消耗していた西さんが、ふと目についた餃子屋にはいることから、この漫画は始まります。そこで西さんは、店主夜凪さんと巡り合い……。
 おっ、現代世知辛からのしっとり癒し系かな?
 などと、その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ。
 ということで、しっとり系ではないこともないんだけど、わりとパワのあるタイプ漫画。それが『夜凪さんのよなよな餃子』なのです。
 そもそもしっとり系って何よ、という点に関してはみやびあきの『珈琲をしづかに』、柊ゆたか『新米姉妹のふたりごはん』みたいなのだと例示すれば大体分かっていただけると思いますが、とりあえず変にテンション高くないタイプ、というのが大体の言い草ではありましょう。
 その言い方で言うならこの漫画はしっとり系に見えはするのですが、かなりパワのあるタイプに分類する方が、どちら様に対しても平等に接することが出来るかと思います。
 何がそうさせるか、というと餃子屋らくらく店主夜凪さんが、中々のポンコツだからです。こういう漫画の店主は料理の腕以外にそれなりの問題を抱えているものですが、夜凪さんは、言葉を選ばなければポンコツです。既にポンコツと呼んでいる段階なのにこれで言葉を選んだの? ですが、まあ、この人本当にポンコツなんですよ……。それゆえにパワになっている面があり、パワタイプに入れていたい。
 そういう話はさておき。
 この漫画がパワ系な点については、察して頂きたいとして、では食方面ではどうか、というのはというと、こちらも中々のパワタイプ。餃子という題材が一種パワを帯びている部分がありますが、それ以上に夜凪さんの出す餃子は中々面白いものが多いです。蛸足がはみ出ている餃子、というインパクトなやつとかもありますし、ベーシックな肉だねに色々なアレンジをしていく4話目の新餃子開発も、へえ、いいとこ(餃子)じゃないの。ってなります。しらたきを丸っと餃子に! そういうのもあるのか。
 それもありますが、やはり美味そうなものを美味そうに食う、という料理漫画の基礎部分がしっかりしている。そしてそこでの情報の出し方が大変いいのも、この漫画をパワ系に組み込みたいという言い分の論拠となります。
 2話目で、ざっと色んな餃子とつけダレを出すシーンの後に、お客さんたちがもりもり食うんですが、そこが色んな餃子を色んなつけダレで、というのをしっかり描写されており、その種類の多さもあって雑然としているんですが、わりとするっと読める、というムーブでお出しされるのです。
 この辺の情報の出し方、食う人からのリアクションとか思考とかが大変整然としていて、成程、美味そう。ってなるのです。出来るな、勘米良優助! とどこからともない視座で言ってしまいます。
 さておき。
 この漫画でどうしても思ってしまうのは、ネタ切れ大丈夫か!? 力尽きないか!? であったりします。わりと初手から色んなネタ餃子も作っているので、そう言うネタ、もっと取っておかないものなの!? ってなるんですよね。ネタ切れせん!? 冷凍餃子美味くするネタとか、もっと取っておかん!?
 でも、まずインパクトを、印象を。そういうのだったら成程、サンデーじゃねえの。ではあります。まずは入りやすいところから入ってもらうのは、間違いない行為であります。定着率ってやっちゃね!
 それに、餃子の沼は、これくらいで終わるほど浅くはないのだ、と言われるかもしれません。その内、西さんが自作餃子沼にハマる可能性もある訳で、そうなればまた餃子のド初手からも語れる、と考えると、やはり成程、サンデーじゃねえの。という理解に到達しました。そういうベタベタなとこからも、特異なとこからも出来る。そういう漫画になるのかもしれません。
 さておき。
 表紙のしっとり系のアトモスフィアからはわりと想像できないとこがある漫画なので、題名の『夜凪さんのよなよな餃子』で検索検索ゥ! して1話読んでみるのをお勧めします。とりあえず気になった漫画の1話目を、心置きなく試し読むことをできる。いい時代になったものよ。と古川登志夫声になってしまうくらいの世の中ですので、是非活用してください。
 と、なんでか宣伝みたいな感じになりつつ、この項を終えたいと思います。