ネタバレ感想 九井諒子 『ダンジョン飯』11巻

ダンジョン飯 11巻 (HARTA COMIX)
ダンジョン飯 11巻 (HARTA COMIX)

 大体の内容「次の翼獅子の主、大決定!」。の前に、ドラゴンの習性を完全に見切って命からがらながら勝利するライオスがヤバすぎるのが、11巻の二大内容になります。
 よくよく「知は力なり」という言葉が言われますが、その力がどれほどのものか、というのがこのライオスVSドラゴン軍団で明らかになります。
 ここでのライオスの知識と機転と度胸は、この漫画最大の危機だったほぼ全滅状態から勝利を得るに足る、いやこれ以上足らん! というくらいギリギリのもので、しかしそのタイトロープを渡り切ったんだからライオスすげえ、と語彙がなくなるくらいの驚愕の代物です。種明かしを聞いても、それちょっとでもどっか違ったらタヒんでたぞ!? なので、知識と、それに賭ける度胸が並外れています。なんのかんの深層に行くくらいの力量のあるパーティーを率いていただけはあるのが、事ここに至ってしっかりと発露していました。ライオスすげぇ。←語彙が
 その後、狂乱の魔術師シスルとのすれ違いであわや苗床エンドなところを、翼獅子に助けられる形になったライオス。それはいいんですが、やはり翼獅子、イビルのタイプの魔物でした。シスルの蓄えた欲望を、貪り食って、廃人にしてしまったのです。とはいえ、イビルといってもカオスタイプのイビルじゃなく、ロウタイプというか、一つ決まったことをきっちりとするので、暴虐、無軌道という感じではない。だからこそたちが悪いんですが、とにかく、下手するとライオスもシスルと同じ道を進んでしまいかねないのがきっちり明らかになった訳です。
 そして、今回のもう一つのメインイベント、その翼獅子の新たな主が決定しました。カナリア絡みで状況が交錯しまくってこの漫画の強度が試される! ってくらいの状況から、成り行き上マルシルがその主となるのでした。
 主の決まった翼獅子は真の姿を現し、ミスルンが転移術の応用の幅広さを見せつつなます斬りにする、けど全然堪えてないという無茶苦茶さを見せつつ、マルシルと共にどこかに行ってしまいます。
 そうなったので、ライオス達は当然カナリアに捕縛される、となったところでカブルーが逃がす形に。色々あれだけどなんとかしてくれ! というカブルーの本音もポンと出て、さてマルシルを追う形に。
 しかし、ここに二つの爆弾があることを、皆様はお気づきでしょうか。今までできっちりとまいていた種が、萌芽の時を迎えそうなのです。
 その一つが、まずマルシルの願いが定命の祝いであることです。なんか皆がすれ違うのは、寿命が千差万別だからだ! というピーキーな思想を持っているのが最近明らかになっています。つまり、翼獅子を使ってすることは、全ての種族を定命、同じ寿命にするということです。
 これは明らかさまにデカい爆弾です。マルシル的には祝いですが、他人からすれば呪い以外の何物でもない、少なくとも全ての人が祝いと感じるかというとそれはないのは明らかでしょう。長命種は、その長い寿命に憂いる事は多いかもですが、それでも寿命を短くされて気持ちがいいかというとそれは無い、とするのが多いでしょう。
 短命種でも、長生きするというのがまず訳分からんという形になる可能性もあります。精神性に影響がデカい可能性すらあります。
 そもそも、どの種族の寿命を定命とするか、というので話し合いになったら殺し合いになるのが確定的に明らか、というレベルの明快さでもめる所でしょう。
 マルシルの願い、というのはそれくらいにピーキーな発想なのです。これをどう成立させるのか、あるいは全くその願いを捨てるのか。どっちにしろデカいシノギの匂いがするな! と白竜顔になるくらいの騒動の種です。それが、翼獅子の力を借りて実現するのか。そこがまずデカい爆弾です。
 もう一つは、最初の爆弾に比べると可愛い姿をしていますが、成立するとこの漫画の行く末が全く分からなくなってしまうという、地味にヤバい爆弾です。
 何か、というと、あれです。皆さん覚えていらっしゃいませんか? サキュバスの魔物の話を。
 そうです。サキュバスの魔物が、ライオスの意識を読んで擬態化した、魔物状態のマルシルがまだどこかにいるのです!
 サキュバスの魔物を狩った時に、他の面々の意識を読んで擬態化したサキュバスの魔物は出てきて、潰したわけですが、何故か魔物マルシルのサキュバスの魔物はそこにいなかったのです。つまり、そのサキュバスの魔物は、まだどこかを徘徊している可能性があるのです。
 一応、そこからまた別の姿になった可能性はあるんですが、この漫画の作者は九井諒子先生です。ライオスですら、マルシルの姿の段階でこれはまずいですよ! になったやつの、魔物マルシル状態になっているという更にもう一段ヤバイ状態のが野に放たれているという状態を、利用しないはずがないやろー! と予言してしまいたくなります。
 正直、魔物マルシルが徘徊しているのが出てきたら気まずいやろうなあ。と、それが出て来て、そしていなかった時点ではそう軽く思っていたんですが、マルシルが翼獅子の主になるという展開を経た現在、これが予期せぬヤバい爆弾になる可能性が出て来てしまっています。
 ここまで読み切って、サキュバスの魔物の倒した中にいなかったのか、と思うと九井先生の豪腕がどれだけのものがあるか、というのを再認識させられます。
 それでもまだ可能性の、それも微レ存レベルの可能性の話だから……。と虚言を吐く以外に対処法が存在しません。どう炸裂するのか全く読めない。そんな危険物質が、野に放たれているのです。ここに気にしているのが筋違いであってほしいレベルです。でも九井先生だから、絶対この符合を活用してくるで……。
 ということで、キラー九井ーンの第一の爆弾は確実に爆発しますが、第二の爆弾はどうなるのか分からないがゆえに余計に怖い、という話でした。本当に、この符合が単なる俺の妄想であってほしい……。
 とかなんとか。