感想 河原井優貴 『オカルト研は存在しない!!』1巻

オカルト研は存在しない!! 1 (ヤングアニマルコミックス)
オカルト研は存在しない!! 1 (ヤングアニマルコミックス)

 大体の内容「へ、変態だー!!(AA略)」。皆さんもご存知の通り、変態漫画、というのは昔から存在します。しかし、昔の変態漫画から時代が変わっているがゆえに今の漫画の変態は当然バージョンアップしています。
 昔の変態というと、男が主体である場合が多かったと思います。ホラー的な方向でいくとまた違うんですが、ギャグだと格段に男の変人から変態になっていく、という流れがあります。それも脇役が、から主役が、という方向性に向かっていきます。あんど慶周先生の『変態仮面』くらいまでいってしまいます。
 しかし、最近ではそこが女性が担いようになってきています。これも脇役からでしたが、徐々に主人公格にその方向性が付与されていきます。その中にはnonco先生の『ようかい居酒屋のんべれケ。』などもありました。そこの変態は妖怪とはいえ女性であり、そして百合風味もある、という風に現代ナイズされていた訳です。
 それが更にもう一歩進めたのが『オカルト研は存在しない!!』なのです。
 どこが進められたか、というと百合度合いと変態度合いです。のんべれケにもあった二つですが、これはかなり密接に関係しているので、そういう呈で話していきます。
 この漫画は、トイレでぼっち飯! の矢内このかさんが、トイレの花子さんに出会う事からスタートします。
 通常なら普通にホラー要素で、このかさんも悲鳴を上げたりはするんですが、しかし一緒にぼっち飯を食っている、という事実であっさり恐怖を克服したこのかさん。食っているんだから、マブじゃん! となることで状況が混濁していきます。
 その上、その花子さんも単なる人間だとも地味に見抜かれます。
 その人は物部かおる。今はまだないオカルト研の部長! と言い出し、オカルトを復権する為に一緒に活動しなさい! と進めてきます。
 ここまでは、かおるさんがヤバイやつ、トイレの花子さんコスプレしつつトイレの上の方からダイレクトに入ってくる、だというのがよく分かるベタなんですが、私の奴隷よ! と言い出した辺りからこのかさんのアトモスフィアがおかしくなっていきます。
 今まで誰とも関係を持ってこなかったこのかさんが、奴隷という関係性にときめいているッッ!! 好き! ってなるのです。そしてかおるさんの足を、あとあぬすなども舐めようとし始めます。
 ここにて、変態性と百合性が同時に励起してくるというのがご理解いただけると思います。
 新時代、という言葉を使わずにはいられません。
 以後、基本的にはおっぱい星人で真人間な方だけど、怖いのが苦手で怖いのに出会うと無限に胃液をリバース、エンドレス嘔吐できる百合に挟まる男の豊田、人体模型の怪異で天然系でありつつよくよく直腸ドロップするドS要素持ちすばるさんなどが加入するに至り、この漫画の変態キャラクタースクウェアが完成します。
 この完成形が機能するのが人面犬の生活を脅かす奴らを撃退するぞ! の回。撃退するぞ、の前の段階でわちゃわちゃに一回使うくらい、スクウェアの強度があり過ぎる時点で既にこの漫画のポテンシャルというのが分かりますが、実際に撃退に移っても、強度があり過ぎて展開がハチャメチャになってしまっていました。
 特に豊田がこのかさんの言葉に従順、おぱいがあるので、な為に犬コスプレの変人として立ち上がり、色々あってチューバー的に怪異として認定されるにまで至るところは最高でした。
 この回、怪異よりオカ研の人間のヤバさの方がヤバくて、怪異的に怖がられる形にならないのでは? と思っていたら最終的に全部豊田が持っていく形になって本当に笑いました。まっぱの男が凶相では知ってたら怖い! というダイレクトさなのでさもありなん。
 締めもナチュラルな怪異の人面犬が部室で飼われる、ということで、エンドレス嘔吐展開が今後も続くのが示唆されており、豊田、強くなれ! ということですねと思わないと可哀そう過ぎて爆笑の域でありました。
 さておき。
 コメディ的な部分は上記のスクウェアの完成で一つの結実を見ますが、百合性と変態性の軍産複合体は、このかさんの休日を見てみよう回でこちらも一つの結実を見ます。何か=かおるさん=好き、という方程式自体は色んな作品で良くあるやつなんですが、そこに犬の大が小さい=かおるさん=好き、というので俺たちの知っているイコールの意味ではない! と戦慄をさせてくれます。
 それがその犬の大を持ち帰る(ポッケに入れて)という段階に至ると、かおるさんじゃないですがこの漫画終わった! になるんですが、それを経ても特に終わらず進んでいく、百合性と変態性の混濁による狂気がほとばしっているのです。流石に犬の大をポケットにダイレクトアタックして終わってないのがマジで意味不明なんですが、それだけこの漫画の強度が際立っているということにして、いいんじゃあ、ないでしょうか……。(CV稲田徹
 ということで、変態漫画の新時代。それが『オカルト研は存在しない!!』なのです。