ネタバレ?感想 大井昌和 『ヒーローガール×ヒーラーボーイ ~TOUCH or DEATH~』1~3巻まで

ヒーローガール×ヒーラーボーイ~TOUCH or DEATH~(1) (夜サンデーコミックス)
ヒーローガール×ヒーラーボーイ~TOUCH or DEATH~(1) (夜サンデーコミックス)

ヒーローガール×ヒーラーボーイ~TOUCH or DEATH~(2) (夜サンデーコミックス)
ヒーローガール×ヒーラーボーイ~TOUCH or DEATH~(2) (夜サンデーコミックス)

ヒーローガール×ヒーラーボーイ~TOUCH or DEATH~(3) (夜サンデーコミックス)
ヒーローガール×ヒーラーボーイ~TOUCH or DEATH~(3) (夜サンデーコミックス)

 大体の内容「タッチでエッチ!」。3年前に突如としてヴィランが現れたり、シンギュラリティ値という概念が追加されてスーパーな能力を発揮するヒーローも同時に現れたりと、激動の世界にあって、ヒーロー、それも当然のように女性ヒーローに惹かれてその組織に入った新蔵修善。彼には本人も知らない秘密があった。それは、通常回復しないヒーローのシンギュラリティ値を回復させる能力!
 ということで、女性ヒーローにマッサージを施してシンギュラリティ値を回復させるのだ! というエロコメ漫画。それが『ヒーローガール×ヒーラーボーイ ~TOUCH or DEATH~』なのです。
 この漫画は基本エロコメです。ラブもありますが、添え物感が強いというか、流れとしてはそりゃあるよね、という形の積み立てなので、これが燃え上がるにはもうちょい時間がかかりそう。ということで、そっちは置いておいて、エロコメとしての冴えについて話を膨らませましょう。
 この漫画はエロコメです。ヒーロー物としての側面もありますが、側面過ぎてそこが重要じゃねえから! な扱いがされています。ヒーローとしての活躍シーンは、3巻まででは皆無なのです。ある意味では勿体ない、という部分ですが、メインの面の方で十分なゲインがありますので、割と不問に出来ます。
 前置きが長くなりましたが、再度言うとこの漫画はエロコメです。ボディがばっつんばっつんな女性ヒーロにマッサージ! それも、性的快楽のバフが乗りまくるタイプ! という段階で、この漫画が所謂紳士向きの漫画なのが分かるかと思いますが、単にエロイボディの人にエロエロするだけではない辺り、非凡なものを感じます。
 今の所、1巻1キャラで回復していく感じになっていますが、当然キャラが増えていくと関係性も増えていくので、そこで思惑が絡んできたり回復に対して否定的だったりエロい気持ちが出なかったりと様々に状況が変わっていきます。キャラクターの事情が絡んでくるのです。
 この辺のキャラ捌きは実際巧みで、キャラが増えても既存キャラが変に存在感が薄くならないという地味にレベルの高いことをやっており、このまま既に提示されたキャラ全員出ても問題ないな、と思わせるものがあります。
 特に一番最初に出るがゆえに存在感が薄れやすくなるシャドウルージュさんは、だからこそ印象付ける! ということで、通常の出来る秘書ムーブと、ヒーローとしてのカッコよさの面、そして折に触れて新蔵さんにマッサージされて致すというチョロさもある、メインヒロインと言える破格の待遇、エロい効果を受けるのが待遇として破格かという点は不問としても、です。
 エロコメとして以後もエロエロしていくと、どうしても後の方が無茶しやすくなる、最初の印象を越えようとするとどうしてもそうなる、という部分に対するきめ細かい配慮を感じます。
 この配慮は、その後の施術対象にもきっちりとあてがわれています。
 2巻のメイン、レディ・オーガさんに対しては、オーガズムを迎えると巨大オーガ形態になり、シンギュラリティ値を大幅に削ってしまうという短所を、新蔵が施術というかエロ行為まがいというかすることでバージョンアップさせる、という展開。話の流れから、あれ? 大きくならないぞ? という謎を、レディ・オーガさんのコンプレックスの解消へと向かう所作は見事です。
 3巻のアテナさんは、新蔵の幼馴染が、という点から、新蔵がエロい気分にならないという問題点を、既に施術済みの二名によって賢者タイムに飛ばしてイケメン新蔵することによって解決します。ここでの、お互いにエロい方向にないと効果が発揮されない、という部分をクローズアップしつつ、それを越えるのがその方法で!? という馬鹿馬鹿しさとエロエロしさの兼ね合いも素晴らしい物でした。
 基本、どえらいエロコメ、当然のようにいくので、なんですが、単にエロエロしてりゃいいんだろ!? みたいな妥協が無く、いかにちゃんとエロエロしつつ、内容としてもきっちりいれこめるか、キャラクターを魅せるか、みたいな御業をやってくるのが中々ないやつです。実際エロエロで、私の大金時殿も満足、したぜ……。という完全満足鬼柳京介なのですが、ちゃんとお話としての面白み、キャラクターの見所をぶち込んでいるという点が本当に稀有な存在です。
 特に偉いというか、中々やると思えるのは、1巻で大体1つの話が終わる点です。1巻ならシャドウルージュさん、2巻ならレディ・オーガさん、3巻ならアテナさんと、その巻のメインのキャラの話を、1つの巻できっちり終わらせているのです。
 これは話の展開を高いレベルで統御できている、という証左です。エロコメなんて、ダラダラやるもんだろ、という私の偏見をがっつり超えてくれました。
 一つの巻で一つの話が完結するから、基本に立ち戻る時にもかなり楽に、つまりシャドウルージュさんのことをまず思い出すなら1巻に戻ればいい、という風に出来るのです。
 キャラが重要なエロコメにおいて、このすぐに立ち戻れる、というのは如何に偉大か、というのを千言万語したいのですが、流石に長くなってきたので皆さん各々が考えていただきたい。それくらいには偉大なのだ、とは言っておきたいと思います。
 さておき。
 キャラクター話をすると、どの女の子も皆チャーミングですヨネ。と本国流法したくなりますが、個人的には一番メインヒロインという印象を植え付けられたシャドウルージュさんが大変いいです。はるかにいいです。秘書モードの出来る系眼鏡っ子秘書っぷりが最高というか最ッ高だぜ!チームサティスファクションの復活だッ!!(カーン!!) くらい個人的に最高で、その人が色んな姿でエロいめに、というだけで、それで満足するしか、ないじゃないか……。と何故か妥協満足状態にすらなってしまいます。
 それぐらい、出来る系眼鏡っ子秘書は素晴らしい。それが十重二十重とエロなことに。これで満足しない人はいないでしょう。そういう向きには、全開でいいぞ! とお勧めしたい。
 とはいえ、他の属性の方がいい、という人もいるでしょう。人類すべてが出来る眼鏡っ子秘書萌えではない。しかし、そこ以外にも十分リーチする漫画なので、表紙の子が気になる、というならまずその巻から手を取って見て問題ない。これも1巻1キャラだからこそできることなのです。偉大ですね?
 ということで、キャラクター系エロコメ漫画ですが、その方向性スキーにはドンピシャだぜ! という一作。それが『ヒーローガール×ヒーラーボーイ』なのです。アニメ化、待ってます。