ネタバレ?感想 睦井栄史:猪原賽:板垣恵介『バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』3巻

バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ 3
バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ 3

 大体の内容「それはある意味元ネタの方のオーガだからな?」。ということで、人を解体するだけのヤバいオーガと烈海王が戦うのが、『バキ外伝 烈海王異世界転生しても一向にかまわんッッ』3巻なのです。
 この漫画はある意味『刃牙』シリーズに一生擦っている訳ですが、しかしその擦り方が巧みである点は千言万語しないといけないかと思います。
 この3巻での『刃牙』シリーズ擦りは三か所あり、一つがゴブリン戦、一つが幕間、最後の一つがオーガ戦にあるのですが、オーガ戦でのピクルとの戦いを体験(そうぞう)していたッッ! 辺りの擦り方も、そこで鞭打! というのが神懸かっている、ものの、やはりゴブリン戦のゴブリンヌンチャクが最高にイカしています。あるいはイカレています。
 襲ってくるゴブリンをひっ捕まえてヌンチャクの如く使う、という無茶苦茶な発想ですが、その発想の元ネタは、勿論範馬勇次郎刃牙をぶん回してヌンチャクみたいなことしてたやつです。元ネタからしイカレています。
 一般人はおろか格闘者でも発案出来なかった頭のおかしいネタ、つまり凶獣板垣恵介の偉大な御業の一つな訳ですが、それを元にして、並み居るゴブリンを使い捨てて殲滅するというのが、ゴブリンヌンチャクの内実です。通常ならいくら小兵でも数のあるゴブリンには格闘者でも敵わない、というのを全く無にする悪魔的奸智です。これにより、三対一では刃牙くらい強くないと、という凶獣板垣恵介のネタを反故にする無双っぷりを魅せつけてくれます。
 ここの魅せ方も、凶獣板垣恵介の前例があるゆえに、いかにそれから目先を変えるか、というムーブで行われており、特にヌンチャク捌きを、武器としての動きとして具体的に魅せることで元ネタの荒唐無稽さに質実を与えるテクニックを魅せつけています。
 元ネタの飛び抜けて頭おかしい部分、凶獣板垣恵介のクルクルパーなとこを、常人がエミュレートして且つ差別化を図るという常軌を逸したやつを、この漫画はやりきっているから一線越え済みだと思います。端的に言うとイカレています。
 このゴブリンヌンチャク、武器としてゴブリンを使うことでその数を減らしつつ、同時にヌンチャクとしての効果で武器持ち相手に効率的に撃破していく、という理路もちゃんとあり、そこも含めて考え抜かれた発想、凶獣板垣恵介を越えるということを目論む腹積もりには尊敬を越えて畏怖の念をすら覚えてしまいます。
 ある意味神に挑む所業をやっている人を見れば、そうもなろう、というものです。そのイカレ具合に畏怖以外、何を覚えればいいのか。恋心ですか?
 さておき、この部分をもってしただけでも、睦井猪原ペアが『刃牙』シリーズに知悉しているだけではなく、耽溺しているのが分かるのですが、その上で更に印象を越えようとする、という所作も含まれている為、凶獣板垣恵介を越えることが、常人に可能なのか。あるいは常の域を超えないと越えられないのか。
 そういうチキンレ―スめいた仕上がりを続けるのが、『バキ外伝 烈海王異世界転生しても一向にかまわんッッ』なのです。