2021年最新版“死にゲー”としての『メトロイド ドレッド』

メトロイド ドレッド -Switch

初めに

 皆さん、ご機嫌いかがですか? 筆者は別の事に時間取られて中々ゲーム出来てませんが、それでもちまちま進めています。
 そんな中でふと思いついたことを書いておかないと一歩も動けない……。と谷仮面状態です。この話程度なら既にあるんだろうけど、自分の中で解決しないと、もやもやするのです。
 ということで、2021年版“死にゲー”としての『メトロイド ドレッド』というお題でカカッと紹介していきたいと思います。

死にゲーについてと『メトロイド』について

 死にゲーと言うのは何か、とわざわざ言っても大体分かっているかと思いますが、それでも一応話の過程で毎度するのが面倒なので最初にカカッと定義すると、単純な高難度というより、油断すると即死する、油断してなくても即死する感じの難度のゲーム、といえましょうか。
 『メトロイド』シリーズについても解説を加えるとこの項がメトロイドwikiの丸写しになるので、ここもカカッと定義すると、ある大きなマップを渡り歩いて、強化し、踏破するゲーム、といったところでしょうか。その中でも、プレイヤーキャラの性能が桁違いに上がっていくのが、『メトロイド』、特に2Dタイプで顕著な特徴でしょう。
 という訳で、基本的にプレイヤーキャラの性能がどんどん上がっていくゲームと、即死させようとするゲームの組み合わせ。それが『メトロイド ドレッド』(以下メトドレ)なのです。

死にゲーにまつわるエトセトラ

 さておき、死にゲーというのはわりと最近言われるように――特に『ダークソウル』辺りが出た頃からなのでこの10年くらい――なった言葉ですが、その死にゲーというのは、昔の無駄に高難度のゲームとどう違うのか。昔の即死も横行するゲームも、死にゲーではないのか。
 その辺に対して峻別していくと混乱の巷なのですが、たぶん、昔のゲームも死にゲーの認定を今からすることは可能でしょう。ただそこには純然たる線引きがある、と思います。
 ただ死ぬだけなら、『スーパーマリオブラザーズ』の1面の最初のクリボーへの接触死は、おおよそこのゲームの溢れる世にあっても最多数レベルで死者を出している訳ですが、それだけで『スーパーマリオブラザーズ』が死にゲーとはなりません。死にゲーとは、単純な死亡によって付く言葉ではないからです。
 なら何ゆえにつくのか、となればその死に対してかなりタイトに回避しないといけない点でしょう。マリオの最初のクリボーは避ける方法、倒す方法はかなり簡単に分かります。
 その点、死にゲーはその回避が観察や試行錯誤によるところが大きく、見てすぐに回避可能。となるのはヤプール人かてめーは! なものです。普通は何回か死んで覚える、という所です。
 この複数回の死を許容するのが死にゲーの死にゲーたるところである、と言えるかと思います。

メトロイド ドレッド』が何故2021年最新版死にゲーなのか

メトドレの死に要素

 話が少しそれましたが、メトドレの話です。メトドレは、今回は恐怖(ドレッド)という要素を絡めてきています。それがE.M.M.I(以下エミ―)、自立式で襲ってくる即死要素です。踏破力が高く、音で場所を推定して動いてきたりなど、独自のアルゴリズムで動くので、大変厄介なです。
 このエミ―という即死要素が、メトドレを死にゲーにしている訳ですが、それ以外でも狭い所に敵がいたりする上に、当たると痛い、というので、結構無視してスイスイ、という訳にはいかない。
 そしてダメージが序盤から明確に高いのもあって、ザコ敵相手でも気を抜くと死ぬ、という仕上がりです。ボス? 気を抜くと秒で溶けます。
 そういう死に易さの部分も死にゲーの要諦ですが、それ以外の部分でメトドレを最新版の死にゲーとしているのが、そのリトライの素早さ。
 これが本当に早く、やられてから5秒もかからず入室手前くらいから復帰が可能です。
 これは実は重要です。
 何故かと言うと、ゲームにおいて最もモチベーションが高いのは、実はプレイ中に失敗した瞬間だからです。

失敗した、というモチベーション

 何事においても失敗は必ずついて回ることです。全てのことを成功出来ることは、おそらく天文学的数字なくらい無いことです。ゲームでもそれは変わりません。
 読者諸氏におかれましても、ゲームで失敗したことがない人はいらっしゃらないのではないかと思います。なんなら先に上げたクリボーによる即死を食らった人も多いでしょう。そのレベルの失敗なら、無数にしているものです。
 そして、ゲームにおいてそういう失敗をした時、思うのが「もう一回!」だと思います。
 STGでミスって1機失った時、格ゲーで僅差で負けた時、パズルゲーで悪手のせいで失敗した時、音ゲーでボタンを押し損ねてクリアできなかった時。
 それらの瞬間が、おそらくすべてのゲームにおいて最もそのゲームに対するモチベーションが高い状態です。「もう一回!」というのはそういうものなのです。

「もう一回!」を拾い上げる施策

 この「もう一回!」を如何に素早く可能にするか、というのが最近のトレンドです。ニンテンドースイッチのオンライン限定で遊べるファミコンスーパーファミコンのゲームに任意で巻き戻しが出来る、というのもこれに含まれます。
 これは失敗した瞬間に戻して、という事が可能です。従来の、復帰まで少し待つ時間すら待たずに、再復帰が可能です。ここのレベルになると、「今の無し!」というレベルにまでなっていますが、そういうのもまたゲームにおける没頭性を上げる施策な訳です。
 最もそのゲームに入れ込んでいる瞬間を、素早く拾い上げる。そういう思想とすら言える部分をメトドレも有していて、それが死亡からの復帰の早さという形で結実しています。
 これにより、最も旬なゲームモチベーションを次のプレイに乗せる、という所業を、メトドレは行っているのです。

メトロイド』シリーズだからこそ意味のある、もう一つの選択肢について

 メトドレでは死んですぐ復帰出来ますが、もう一つ選択肢があります。それがセーブポイントからやり直す、です。
 一見、すぐ復帰があるなら要らない選択肢に見えるセーブポイントからのやり直しですが、それはこのゲームが『メトロイド』シリーズである、ということで意味を成してきます。
 というのも、『メトロイド』シリーズは探索ゲーです。死んだところがまだ行くのが早い、という可能性も結構あります。場面によっては不利な状況なことも。なので、他の調査をしてから戻ってくる、という選択をする事もままあることです。
 そして、セーブポイントは結構沢山あり、巻き戻るにしてもそこまで前の状態に戻ることもありません。
 なので、セーブポイントから戻って、という戦略的な見方も場合によっては使う事になるので選択肢にはちゃんと意味があり、そしてこれも死にゲーのメトドレとしては有用なのです。

死の近さの表現

 このゲームの即死の象徴、エミ―。しかし、あまりに唐突に出て来て殺されると、死にゲーであっても理不尽を感じてしまいます。部屋を切り替えた瞬間に目の前に、ではどうしようもありません。こういう所に一応の理があることが、死にゲーにおける死には必要です。
 その点を、メトドレは音で解決しています。エミ―は特定のエリアを巡回していて、それもこちらが入ってから動くのではなく、全く自律でどんな状況でもある程度の範囲を動いている、という形になっています。
 なので、何も兆候がないと、先述のようにいきなり目の前にいて詰み、となるのですが、エミ―は特有の音を発しています。それが近くなると、部屋と部屋が違っても聞こえてくる、というようになっている。
 この音をちゃんと気をつければ、理不尽に死ぬことがない、という形になっています。逆に言えば、音が近い=死が近い、ということでもあり、緊迫感がすっと湧いてくるのが美味い仕上がりだと思います。

死にゲー寄りになったからこその難点も

 エミ―という存在は、死にゲーにおいてはかなり有用なエッセンスですが、問題点、難点にもつながっているところがあります。
 というのもエミ―がいるエリアでの探索がバタバタしがちになる、というのがあるのです。これはある意味当然というか、死が迫ってくるのにのうのうと動くというのは肝が太すぎるからです。だからどうしても逃げる時はバタバタしてしまうのです。ある程度慣れれば、どこに隠れればいいかは分かるんですが、それであってもあわわ……。となる場面がとかく多い。
 なので、個人的にはもうちょいゆっくり見て回りたい、というのがあって、ここがちょっと苦手なとこです。とはいえ、そういう締まらないダラダラした探索をピリッとさせたい、という意図は感じるので、これは慣れるしかないんでしょう。

まとめ

 まとめると、最もゲームがしたい瞬間である、やられた後に即復帰が可能になった『メトロイド ドレッド』は2021年最新版の“死にゲー”なのです。
 ですが、このゲームの開口は広いと思います。若干最初に出来る事が多いので、そこで躓く可能性はあるんですが、それでも初期状態でキビキビ動くゲームです。ダッシュメレーとかの動きながらのする行動の増加で、止まらず動き回る、というのが出来るようになり、動かしてて楽しい、という所があるのです、
 それが更に機動力や攻撃力が増していくので、慣れてしまえば縦横無尽。その楽しさは経験して欲しいと思います。
 とはいえ、死にゲーでしょ? とはなると思います。あるいは死にゲーの開口が広い? とも。
 その点について申せば、死にゲーはゲーム上級者しかできないことはない、と言えるかと思います。
 死にゲーは死にますが、理不尽に死ぬことは少ないです。先述のマリオの最初のクリボーのように、対処する手管はそこには示されているのです。ただ、マリオの最初のクリボー程すぐわからない。しかし分かるという地点があるという安心感というか、制作者との勝負所がある。なので、全くのゲーム初心者が、というのは微妙なラインですが、ゲーム初級者くらいからでも、挑んで攻略を見つけていく、という形に喜びが見いだせるなら、死にゲーは大変楽しいでお薦め出来るのです。
 特にメトドレはある程度の慣れさえすれば、極めて素早いリトライ性と、きびきびした動作で動くことの楽しさ、そして自分のキャラが探索や逃亡が楽になることで能力向上しているのが分かる点で、『メトロイド』シリーズでありつつ死にゲーでもある、という仕上がりなのです。
 なので、単に難しいのではなく、きちんと面白いゲームなので、ゲームに歯応えを感じたい方のみならず、『メトロイド』ってどんなの? という方にもやって、もっと広まるがいいや! といいきって、この項を閉じたいと思います。