きらら少巻数終了作品の世界にようこそ 第二回

大体の内容

 この項は、まんがタイムきらら系4コマの少数巻終了、所謂2巻乙や3巻乙と言われる作品を取り上げて、ててとーに語るものとなっています。語る前提は大体第一回目の序文で書いていますが、
hanhans.hatenablog.com
 それはさておき、大体個人的にこれは個人的に好きだという部分と、これは埋もれているが注目した方がいい、とかそういう勝手な所作で少数巻きらら4コマをレヴューしていきたい、やっていこう。そう思いキーボードを叩いています。
 基本過去作が多くなりますが、その辺はご容赦ですし、先に書いてますが、個人的好きが強い作品を取り上げるので、そこもまたご容赦お願いしたい。オネガイシマス。と土下座するくらいの勢いでご容赦。
 前置きはこのくらいにして、それではいってみましょう。

第二回 TYONE『謎のリリリス

 第二回の今回は、新しめの2巻乙作品、TYONE『謎のリリリス』を取り上げたいと思います。
 きらら無印の片隅で謎の色の花を咲かせていた、きららMADNESS奇跡の世代の一角、という表現をすると多少過剰ですが、私としてはそう言って問題ないと勝手に思っている、そんな刺さる人にはぶっ刺さってくる上に返しもあって抜けない一作となっています。
 ちなみにどれくらい近い辺りかというと、2019年10月号から12月号までゲスト、そして2020年2月号から2021年12月号まで連載、という、わりと至近で終わった作品となっています。2021年までやっていて、2021年に最終2巻が出た作品です。

『謎のリリリス』とは

 『謎のリリリス』とは、謎な存在であるリリリスと、その餌とされてしまったさわじまさんとあいまりさんを中心に進む謎コメディです。コメディとして謎ではなく、謎圧しのコメディなのです。
 良く分からない? 結構! ますます分からなくなりますよ!
 と『コマンドー』語録が出るくらいには、何が結構だよですが、とにかく『謎のリリリス』とは謎。それだけ覚えて帰ってください。いや帰らないでください。まだ書く事がある!
 さておき。
 謎コメディの、謎がコメディにかからない、並立しているという、大変謎の作品なのが、『謎のリリリス』です。
 この謎具合は徹底されており、餌にされた、と既に書いていますが、その餌としてどう食われるか、というと食べはしません。さわじまさんとあいまりさんとに頬をすりすりするだけで、食事は終了です。それで能力である謎の力が回復します。らしい。謎です。
 とかく、困ったら謎の事象としておけばいいだろ、という投げっぱなしにも見えますし、実際その側面は否定できません。狙っているというか、謎な事実として意外と芯というか、謎の使い方に理屈はある、ように見えます。実際理屈はありますが、謎な回避法があるので結局謎です。
 これは完全に感受性の問題というか、針小棒大に見ているだけかもしれないのですが、案外謎を投げる部分は謎として問題ない部分に絞っているのでは? というある種の見切りを盛っている漫画なのです。
 一応の理屈を立てる。ってやってるとこもありますし。そこも謎です。
 とにかく、謎と言ったら謎なのです。

謎に分け入って

 とはいえ、謎について謎しか残さないムーブの中にも、謎について明かそう、という素振りは見せます。素振りなので具体的に理由を明確に、理論だってではないので、こうかなあ、と憶測する以上が出来ないのですが、それでも謎の謎たる理はある、というのはあります。
 その一つが、謎の力は先手必勝。先に謎の力を使われると、同じタイプの力では上書きできない、という、いきなり謎の力に他の使い手がいるという前提の話がされたりします。
 この話がされた時点では既に謎の力を他に使う者の存在は明示されているので、そーなのかー、ですが、この謎の力を、例えば謎の力で隕石を軌道修正した場合は謎の力で軌道修正できない。
 けどその隕石の状態を変えることで衝突を回避するなら、軌道修正の謎の力と競合しない、という内容もこっそりとぶっぱされます。
 そして、その話がちゃんと今までの話に効いてきてる、というのが最後に向かって、他の謎の力使いリリリリスの存在が表に出るにつれて分かってきます。
 そうなると、単に謎圧しだったけど、そこに理路があった、という事が励起されてきます。それがあるから、軌道変更での隕石に対処出来なかった、と。しかし、なんでそうなるのか、というのは最終的に謎なままというのは揺るがないので、理屈としては何でもできる謎の力というので済んでしまうという、ある意味無茶苦茶をしてきます。
 そういう、謎の理由に対して色々考えても、結局謎という言葉で解決出来てしまう為、分け入っても分け入って謎。という感じになっている。それゆえの謎圧しという言葉がするっと出てくる仕儀となっているのです。便利な言葉だよ”謎”って!

ギフトの話としての『謎のリリリス

 さておき、『謎のリリリス』は基本的にも応用的にも謎だ! で済ますという魔空の手つきなので、謎について「ナンデ!?」しても「おぬしがニンジャだからだ!」という回答になってしまいます。ヤメロー!!
 なのでこの漫画のもう一つの側面であり、実は一番大きい内容なんだけど、それでも謎の圧が強くて忘れがちな、ギフトの話について語っていきたいかと思います。
 ギフトというのは今適当に頭に浮かんだ言葉で、完全にスパロボ30の影響がありますが、それはさておき、大体与えられたもの、という類の意味で使っていきます。
 この与えられたもの、ギフトというのが『謎のリリリス』の話の内ではかなり意味を持ちます。例えばさーじまの友達ゆいなさんは勘がいいですが、その精度と頻度を上げる力を謎の力売り――これも謎ワードですが――に貰いますし、やはりさーじまの友達の久世さんもその力を上手く受け付けなくて能力が暴走します。
 そして、リリリス、そしてその妹であるリリリリスも、謎の力は系譜としてのもので受け継ぎます。
 つまりギフトなのです。
 この与えられた力をどうするのか、というのが謎という言葉がまた出てくるとはいえ、この漫画の基本テーゼです。ここに視点を集中してみれば、また違う『謎のリリリス』観を得られると思います。

創造神の誤算

 そもそもこの謎の力は誰がばらまているのか、という点を見れば、それは創造神が力を渡して謎のパワーロンダリングする為だった、と2巻終盤で明らかになります。
 そもそもいつ出てたんだよ創造神! ですが、これは1巻の描き下ろしでちゃっかりいるので、俺じゃなきゃ見逃しちゃう勢の方はしっかり確認してください。
 それ以前になんだよパワーロンダリングって! ですって? これはそのままというか、なんか力がネガティブな様相を帯びて存在が消滅しそうだったらしく、そこでポジティブなやつに能力使わせたらこっちもポジティブになるんじゃね? ということでやった模様です。
 それで成立するのか、というとこの漫画は『謎のリリリス』なので成立する、とされます。そういう漫画だよ『謎のリリリス』って!
 で、その能力を回収したので、リリリス達のギフトは元に戻ってしまいました。
 しかし、ここに創造神の二つの誤算があります。
 一つが、創造神が謎の力を回収したので、その謎の力で庇護されていた国の人達が創造神を王として扱う事になったこと。創造神もこんな予定じゃなかったのに、と言っているので、確実に誤算です。ギフトに慣れ切った人たちというのがいるとは、でしょう。
 もう一つの誤算が、リリリスに謎の力が生まれたことです。これによって、創造神由来のギフトから、本当のギフトに移り変わった、という話となっています。

謎の謎

 このギフトの移り変わり――創造神由来から己自身に――というのは最後に示されてそのまま特に何もなく終わるので、そういうテーゼとして、ギフトの存在がある、という事になるかと思います。
 このギフトの扱いで、TYONE先生が何が言いたかったか。
 憶測ベースでしかありませんが、リリリスの妹リリリリスが謎の力に振り回されている――実態としても真実としても――というのや、ゆいなさんが自分から謎の力をあっさり捨てたりするところからも、その力、どう使う? ということを気合入れて考えていたのではないか、という気がします。
 結構プリミティブに、力を得たらどうするのか、という部分が、中々簡単にはいかない、というのを提示している作品だと言えるかと思うのです。
 大いなる力には大いなる責任が伴う、んだけど、あいまりさんの特殊能力持ちを見つける力みたいに、その力がちゃんと分かってないと、そう言われてもね? ってぶっちゃけてもいますが。
 そういう、力に振り回される、という部分が結構しっかりある漫画だったりもするのです。
 しかし、この漫画は謎コメディなので、その謎の力に対するところは終始謎、何かしらの創作能力ではなく、ただ謎という立ちまわりです。

「謎の中国人、Kよー!」
「金だな」
「金だね」
「金」
「謎ばらしちゃ駄目よー!」

 という『セクシーコマンド―外伝 すごいよ!!まさるさん』の一連の展開の最後の、謎ばらしちゃ駄目よー! というのが、この漫画の成立には意味がある言葉でしょう。謎は最後まで謎とするからこそ、謎コメディとして成り立つ。そういうムーブなのです。
 なら、謎だったな、と謎の達観をすることこそ、この漫画に対する最大限の賛辞である。そう思うのです。

今回はここまで

 今回は謎とコメディの漫画、『謎のリリリス』を謎の方向から推す感じになりました。
 謎の理路があるけど結局謎で済ますメンタルも凄いですが、コメディ部分も、女の子わちゃわちゃと謎が生み出すケミストリーが凄いんですが、書いていると終わらなくなるので、ここらが潮時ですね。
 とりあえず、謎の面を謎、というブラックボックスにぶち込んだまま進む、”謎”のコメディ。それが『謎のリリリス』だと覚えて帰っていただければ幸いです。
 ということ今回はここまで。したらな!

謎のリリリス 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
謎のリリリス 2巻 (まんがタイムKRコミックス)

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