ネタバレ?感想 野上武志『はるかリセット』3巻

はるかリセット 3 (チャンピオンREDコミックス)
はるかリセット 3 (チャンピオンREDコミックス)

 大体の内容「休むんだったら」。今回も春河童先生の休憩&休暇モードを眺めて楽しむ、謎の倒錯感のある漫画。それが『はるかリセット』なのです。
 いきなり話がズレますが、『孤独のグルメ』は誰かがただなになにする、という日常系フォーマットの面があり、そこを突き続けるり意志力で新たな時代に見出されたました。
 爾来、ポスト『孤独のグルメ』を志向して様々な漫画が生まれました訳ですが、意外とその流れは難しく、グルメ系の亜種以上の、『孤独のグルメ』にある妙な癒し力になるものはそう多くはないのでした。
 そんな中にあってこの『はるかリセット』は『孤独のグルメ』の癒し力を、作中人物が癒やされるところを見せて、その読み手も、というダイレクトなメッセージをぶちかましてきます。
 あまりにダイレクトすぎ! ではあります。しかし、こういうので迂遠にして内容が単なる人情物になる形が多い中で、そういうのとは一線を画す形で、ただ春河童先生が癒されるのを見るだけ、としているのは、この漫画の特異な点であり、『孤独のグルメ』の妙な癒しの力と同一線上なのです。
 などと言う虚言はさておき、今回の巻も春河童先生がオフを堪能するのを満載にした漫画なのは変わりません。それでもネタ切れ感がないのは、休暇、いかんせん。ということにセンシティブ且つ貪欲に、野上武志先生がなっている証左と言えましょう。
 ちょっとした休みからがっつり休暇まで、幅広いし濃い。ちょっとした休みにこそ濃さが求めらるし、あるいはがっつりした休暇だからこそあえてせっかくだからを封印する。
 この辺りの匙加減が大変良好なのです。
 具体的なのをネタバレしつつ語ると、濃さではやはり取り上げるべきはただ駄菓子屋を発見して潜入する第21話「駄菓子サンクチュアリ」。ここの扉絵がこの3巻の表紙となっているくらいですから、この巻では相当重要な回だと言っても過言です。
 話のあらましは、春河童先生が体は駄菓子を求める、と言い出して、アーマードコアの新作は出ないけど駄菓子を買い求めに走ります。
 この駄菓子屋というのが今どき昭和レトロでもなく単に昭和からある、というガチの駄菓子屋で、それを散歩中に偶然発見した春河童先生。いつか行く日が来よう、と暖めていた、かはさておき、とにかくその駄菓子屋へGO! とあいなります。
 そこからの展開はなかなか多角的。平成生まれなのに知っていない既知感を感じる場面や、幼少の春河童先生を幻視してみたり。
 あるいは店のおばちゃんの話を聞いてみたりもするし、しかし最後はここは子供のサンクチュアリ、ときちんと引いた姿勢で臨むにまで至り、この漫画のちょっとした休みでもきちんと話として成立させるぞ! という意気込みをダイレクトに感じる話となっています。
 特におばちゃんとの話は大変よい物で、子供たちが年齢と共にその店の使い方が変わっていく、いずれは親になって……。とかされて、某ステーションバーの人なら号泣し過ぎて警察呼ばれるレベルで人生を見ている感じにさせられます。かなり濃い幻視ができそうです。
 ちょっとしたとこを濃くする系は駄菓子屋回が白眉ですが、逆に濃い内容が約束されている休暇、つまり旅行回ではできる内容が多いがゆえに、あえて絞るというムーブもしてきます。
 それが19話「山のお宿で紅葉浴」です。
 この回は、知り合いと飛騨高山に赴いた春河童先生が、特に何もしないをする回となっています。
 一応、手慰みに文章を綴ったりしていますが、特に金になるような物でもなく、本当に手慰み。それが呼水となって、人と語らって、最後には寝る。極限まで何もしないを突き詰めた形です。
 ここで、飛騨高山にきて、何もしない!? となるとこかもしれませんが、わざわざきて、だからこそだろうがっ、とコミックマスターJさんも行っていました(言ってない)。
 せっかくだから、をあえてしないことで生まれる、ただ何気ない1日。この贅沢さこそ、旅の醍醐味なのよ。と勝手に受けとりました。予定詰めちゃう方なので、尚更受け取るものがありました。羨ましい時間の使い方ですよ……。
 そんなわけで、いろんな休み方を提示してくるこの漫画ですが、どこをとってもよい休み。そう言えることの偉大さよ。これがまだまだ巻を重ねていくことの素晴らしさに打ち震えつつ、この項を閉じたいと思います。