この項について
今ではすっかりどマニア世代もいるまんがタイムきらら系列誌。
そこで幾巻も単行本を連ねる漫画もある中にあって、泡の如く生まれては消えていく作品たちがあります。
それらは2巻乙、あるいは3巻乙などと呼ばれ、どマニアにはそれを愛でる習性もあります。
この項ではそういう作品にスポットを当て、適当に駄弁る。そういうものとなっています。
今回は、最も後発のきらら系列誌にして最も早く休刊したきらら系列誌、まんがタイムきららミラクからその開幕を彩った作品、あfろ先生の『月曜日の空飛ぶオレンジ。』を取り上げたいと思います。
まんがタイムきららミラクとは
『月曜日の空飛ぶオレンジ。』について語る前に、少しきららミラクについて語りを入れたいと思います。
まんがタイムきららミラクは、平成23年3月にVol’1が発行され、Vol’5まで行った後に、月刊誌として確立した、そういう雑誌です。
『桜Trick』、『幸腹グラフィティ』、『うらら迷路帖』、『城下町のダンデライオン』など、アニメ化作品も輩出しましたが、2017年11月発売号で休刊となりました。
実質7年程度の命脈でしたが、その後に続く様々な才能を輩出していますし、数々の2巻乙、3巻乙作品も生み出しています。
そんな中で、きららミラクVol’1から平成25年7月号までの期間連載した、ミラク最古参の作品について、今回はやっていきます。
その作品は今は『ゆるキャン△』で有名となったあfろ先生の、きらら処女作。
その名も『月曜日の空飛ぶオレンジ。』です。り
『月曜日の空飛ぶオレンジ。』とは
『月曜日の空飛ぶオレンジ。』とは日本っぽいどこかにある島、六日島で巻き起こる、へんてこりんでみょうちきりんな話です。
すいかの自販機。
虚空の紐を引くと何かが落ちる。
鉢植えの信号機。
謎のひょうたんみたいな生物ツカポン。
救援電波に呼び寄せられる大人たち。
スパイグッズのスパイ衛星。
謎の蔵書館にいる謎の人。
適当なあげつらっただけでこれだけ謎の言葉が出てくるのです。へんてこりんでみょうちきりんだというのがこれだけで分かっていただけるかと思います。
現在連載中の『ゆるキャン△』や『mono』でも、鋭角から鈍角まで様々なコメディセンスを魅せるあfろ先生ですが、その先ぶれはこの頃から既に存在していた、と言っても過言ではありません。そりゃそうだよ、ですが、わりと忘れがちなので、たまに思い出したいところです。
『月曜日の空飛ぶオレンジ。』の複雑な魅力
『月曜日の空飛ぶオレンジ。』は上記のように変なもののでるコメディマンガです。が、そこだけが魅力というわけではありません。シリアスな謎の側面もあるのです。
それが如実なのは、メインパーソナリティのななみさんが引くことのできる虚空の紐と、それに関係するらしいななみさん似の通称ヤマダさんのターンの回です。
この漫画の他のトンチキ要素が大体そこのみで昇華されるのに対して、ななみさん関係は話しの根幹になるような雰囲気がありました。
なにかしらとんでもない事態の一端が見せられるのです。
ここが、それまでのトンチキなのから一線を画しており、なんか、やるのか? と身構えさせられました。なかなか、面白い味であったのです。
とはいえ、ここは何があるかというのはある程度示唆はされますが、核心、なぜななみさんがそういうのを?というのはついぞ語られませんでした。2巻乙の悲しいところですら、
もっと連載続けば、あるいはこの部分のけりもついたのかもですが、これは2巻乙の辛いところ。
それはさておき、ここの、つまりななみさん関係はよくよく読み直すと、その話のデカさが顕在化した時点でもうこの漫画長くなかったのか? という邪推が出て来てしまいます。
果たして連載が長く続いていたら、ななみさんとメテオストライクな話はどうなっていたのか。ずっとおためごかしされ続けたのか、それとも息抜きみたいに折々に混ぜられたのか。
そういう部分を妄想して、でもそれがもう見られないことを思うと、少し泣く。
でも、そういう部分をおざなりにしない、というかちょっと今しかできないからやっておく! する手管は素晴らしいのです。ななみさんの事情の方での雑味、というのも単純にコメディだけじゃない、という複雑な味わいの一端でした。
他の味わい、他の端もあります。それがヨシノ漫画という端です。
ヨシノ漫画としての『月曜日の空飛ぶオレンジ。』
唐突に出たこのヨシノ漫画とは何かというと、この漫画のキャラクターの1人、ヨシノの存在感を十二分に味わう漫画として、『月曜日の空飛ぶオレンジ。』は存在します。だからヨシノ漫画。過言など一切ないッ! と思っていただこうッッ!!
というくらいに、私としてはヨシノが好きでこの漫画を読んでいました。
唐突に何いきなり語りだしてるわけ? しますが、ギャグマンガでボケ担当、というと無法の域に到達しやすいものです。ボケは無限であり、つまり何でもできる魔法です。魔法使われたら、虜になるじゃないですか。
ですがらこの漫画はその無法に対して対策をかけてくるのです。ここが他と一線画し過ぎです。
それは4回かけて行われるヨシノとそのお兄さん関係の話で、ここで無法のコメディキャラに兄がし……という重いものをぶっこんで、しかし最終的には笑顔でいられるね! とすることで無法のキャラにも容赦はしないぞお! という面持ちをぶち込んでくるのです。
更に、そこの流れでユキノさんというヨシノ黙らせムーブメントを持つキャラも追加され、それ以降も無法はするもののいつでもお前は止められるからな? というストッパーが付く形になります。
惜しむらくは、そのストッパーが特に機能する回が無かった、むしろユキノさんがボケだしたりしたというので、ストッパーはあったけど使われなかった事態でしょうか。これもまた、2巻乙漫画の趣きです。
改めて原点
ということで、変な漫画があfろ先生の原点だった、という話に、なってないか。なってるような? まあいい。
現在でも活躍しているあfろ先生ですが、現在の連載作にも『月曜日の空飛ぶオレンジ。』のエッセンスは含まれており、でも野放図に変な話してた頃とは隔世の感はやはりあります。
ぶっちゃけ言うなら、ヨシノを他の漫画にも出せよオラァァ! という狂信者ムーブしたいです。ヨシノロスは、ヨシノじゃないと補給できないんだよお! 定期的に『月曜日の空飛ぶオレンジ。』を読み返すしかないんだよお! と゛う゛し゛て゛た゛よ゛お゛お゛!!
とファナティックはさておき、この野放図なコメディ路線と、謎とシリアスもできるという部分はもうちょい知られても良いと思います。ゆるいだけじゃないんです。
2022年5月13日現在、コミックFUZにて2話ほど無料で読めるので、みなさんもっと軽々に『月曜日の空飛ぶオレンジ。』を読んでいただきたい。
そして、またコメディ全振りのあfろ漫画が読める世界の為の礎となっていただきたい。
そういう稀有壮大な妄言の為に、今回筆を取ったのです。でも、本当に全部振ったの、見てみたくないか?
という妄言に妄言を重ねて、今回は終わりとさせていただきます。