感想 くさかべゆうへい 『白山と三田さん』1巻と2巻

白山と三田さん(1) (少年サンデーコミックス)
白山と三田さん(1) (少年サンデーコミックス)

白山と三田さん(2) (少年サンデーコミックス)
白山と三田さん(2) (少年サンデーコミックス)

 大体の内容「ごり押しで彼女が出来ました。」。田舎からの脱出を考えている白山くんは、あるお爺さんを助けたことで、その娘の彼氏になってくれぬか、となります。その彼女、三田さんとのなんか調子はずれながらもなんか互いに噛み合うラブコメディ。それが『白山と三田さん』なのです。
 とりあえず、この漫画の調子は大変癖があります。オフビートという言葉が、我々の切り札。というか、これをオフビート、と言わないで処理するのが大変難しい上に、2巻帯にすらオフビートの文字が躍る、それくらい普通の調子の漫画ではありません。
 では異常か、というとそこまで異常でもない。ちょっと調子はずれ、というのがせいぜいです。しかし、普通のラブコメのテンポに慣れた身になると、ちょっとでも調子が外れれば、それだけで微妙に膝カックンを強要してくる感覚に陥ります。だからオフビート、調子はずれなのが際立ってくるのです。
 それを助長するのが、この漫画において激しい情動とかはそんなに描かれないこと。基本的に白山くんと三田さんの平素をただ流して、しかしそれが微妙にずれがある。調子はずれである。というのでそこにあふれるおかしみを味わう訳ですが、このずれが大変ギリギリ外枠。三田さんの謎の身体能力の高さとか、白山くんの陰キャっぷりの微妙にあるけどない感じなどの部分が、ずれているがゆえにギリ外枠にある、と言う感じです。大体ずれている漫画ですが、なのに大体平素の世界が描かれているので、そこにオフビートを感じる、というのが、大体この漫画を表せているかと思います。
 さておき。
 三田さんと強引に付き合いだした白山くんですが、そこに甘い話は皆無ッ! というくらいに甘酸っぱい感じの話はほぼありません。白山くんと三田さん、ほぼ強引に恋人状態にさせられたのですが、それ以前にお互い馬が合い過ぎているのです。
 どっちもどっちでちょっとずれたとこがある為、デートしても甘い話にはならない。高校生ならそれあるんやないの? なんですが、どっちもどっちで微妙に特異な為、お互いを確認していくというか、そーくるかー、みたいな感じになってしまう。あれま。ってなる。
 特に三田さんは癖が強く、AM16のエアガンを持っていたり、身体能力がやたら高かったりと、その時々においてこいつそーくるかー、って白山くんがなっているのが、甘い話にならない理由かと思います。
 とはいえ、この二人がお似合いである、でもあります。どちらもずれのある、オフビートな二人ですが、だからこそ、噛み合うところがある。相手が頓狂なんだけど、自分もずれを自覚するからこそそーくるかー、という対応になる。お互い気取らない性格ゆえ、普通だと変だけどこいつならそうなるなみたいなのはありますが、妙に取り繕う感じをしない。だから相性がいいのかなと。
 とにかく、なんのかんの、この二人は良い感じにお付き合いしているのです。甘いとこはほぼないです。
 ですが、ほぼです。全く甘い話が無いわけでもない。それが、2巻での三田さんの誕生日プレゼントを渡すところ。ここはこの漫画の中でも中々に甘い話でした。渡したのが、わりとなにそれ、だったんですが、それが三田さんにはジャストミートで、しかもそれを買う資金が足りないが為に、姉に金を法外な金利で借りる形に。それが三田さんに伝わって、というのはほんのりですが確かに甘かったです。
 さておき。
 メインの二人がずれているせいで、周りも若干ずれている、というのもこの漫画の良さです。皆癖があるのがいいです。
 三田さんの友達の千代さんも、三田さんが強引に恋人を、というので義憤してたり。それでも三田さんと白山くんが仲良くなっているのを知って、一応引き下がりますが、白山くんに対しては2巻範囲内でも犬猿だったり。携帯の白山くんの登録名が前髪なので、まだまだ全然嫌っている模様。それでもラブラブカップルっぷりはどうすれば、というのに返答してたりするので、この関係もかなり微妙です。
 それと、白山くんのお姉さんがよいです。ライダースーツが似合い過ぎてて、ライダースーツスキーには堪らないものがあります。これで銀行員というのだから、世の中分かりません。いや、仕事にライダースーツで行ってはいないでしょうけど。そうだったらそれはそれでいいんですが、流石にそりゃないわな。いやでも、そういう変なとこありそうな気がする。あって欲しい。
 願望はさておき。
 そういう訳で、微妙に癖がある人達でメインからサブまで取り揃えられた漫画。それが『白山と三田さん』ですが、このこちらおより微妙に、本当に微細にずれた軸を貫いているがゆえにオンリーワンになっている漫画なのも、『白山と三田さん』なのです。