感想 船津紳平 『東大リベンジャーズ』1巻及び2巻

東大リベンジャーズ(1) (マガジンポケットコミックス)
東大リベンジャーズ(1) (マガジンポケットコミックス)

東大リベンジャーズ(2) (マガジンポケットコミックス)
東大リベンジャーズ(2) (マガジンポケットコミックス)

 大体の内容「東京卍リベンジャーズと接点がなくないか!?」。などと、その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ。というくらいには1巻後半からパロディとして元ネタのキャラが擦られるようになってきてが本番な漫画。それが『東大リベンジャーズ』なのです。
 この漫画は元ネタの方とは切実度が全然違う、特にベクトルが違うせいで完全にギャグ漫画となっているタイプです。その漫画としてのギャグが東大にひたすら擦るというタイプで、成程、この題を思いついた段階で勝利なんだな。という感想がするっとでてきます。
 しかし、リベンジする理由が昔の恋人の死ではなく、恋心を持っていた女性が慶応野郎に! というので既に何かおかしい、慶応関係ないんじゃねえか? となります。ですが、実はそこが重要というのでこの漫画の粋を見せられた気になってしまいます。
 そもそも、この漫画の主人公ミチタケの東大に対する信頼度と言うか、東大推しが一々ナイフみたいに尖ってら、なので東大あるあるがギャグになる、という変な形をしています。それがこじれて、慶応なんて受験3教科だろ? とか言い出していたりするので、ある意味では慶応を下に見ている。なので上記慶応野郎に! に繋がっていきます。
 正直に言えば、そういうとこやぞ、だったりします。本当に。そしてそれがギャグとして推し通り過ぎる為、1巻終盤くらいになるとお腹いっぱい、という気持ちになっていました。ある意味でくどいのです。
 しかし、元ネタの方のキャラクターを許可の元改変して出てきた辺りから、この東大ギャグに元ネタ要素が絡みだして、その無茶な建付けが逆に面白みを増し始めます。というか、普通に考えると完全に失敗なんですが、一応の成立はしているという、その無茶苦茶な構築がこの漫画の頭おかしさに火をつけたという印象です。
 特にマッくんが加入してからの、ミチタケ単体でやっていてくどくなっていたとこが、もう1人同じタイプがいることで展開にバリエーションが生まれております。理Ⅲの人に対してのムーブが従者のそれになるとこの、マッくんがまだお前やってんのかよ! というのの爆発力は良かったです。ボケのバリエーションが増えた、というべきでしょう。
 それ以外でも、マイキーならぬモイキーが東大卍舎で繰り広げる元ネタネタが、話の位相が違うシチュエーションを強引にこの漫画に組み込むことで異常な光景として立ち上がるという、これまた無茶をやってのけています。例えばダラケンがモイキーに頭を下げさせる場面というのが、その舎の人が喧嘩とかではなく飯の油に弱いというのに食い過ぎて入院というので、切実さが全く違って酷いことになっているとこは最高でした。
 そんな東大卍舎、他のサークル潰すぞ! 手始めにミチタケのとこな! とか言い出して、これまた話が大学のサークルなんで切実さが全然違ってもう笑い所です。
 しかし、これによってミチタケの超奥手の恋路に波乱としてかかわってきそうなので、案外テクニカルなことしてるな、この漫画、ともなります。サークル潰すって、実力行使ではなさそうだよな東大生だし、なので、マジでどうやってサークル潰すのかが全く見えてこない。そこを元ネタネタを絡めて無茶苦茶なことをしてきそうです。そういう信頼はある。
 それにしても、『東京卍リベンジャーズ』から東大リベンジ、と言う方向性を見つけたのは天啓にも程があります。そしてその東大あるあるネタの良く分からない次元ゆえにギャグとして立ち上がる、というあるあるネタの狭さが逆に刺さるムーブも見所です。
 例えば赤門ラーメンの件とか、狭すぎるのを理解の上であえて狭いままで攻めるとこで、この漫画のあるあるネタの極地みたいな内容でした。そこでもマッくんがいたから成立したとこがあり、マッくん便利過ぎか? まであります。三度正直に言えば、マッくんが出て来てからこの漫画の格が上がった感すら。それくらい、マッくんの便利具合が半端ではないのです。あいつ役立ち過ぎやろ……。
 さておき。
 東大ネタだけでどこまで行けるのか、というのが当初はありましたが、元ネタを強引にミキシングすることによって異次元に突入した感があります。この無茶さでどこまで押し通るのか。意外と今後が気になる漫画になってまいりました。続き早よ。
 とかなんとか。