大体の内容「女の子×バンド×ガチャ!」。イマドキのきらら漫画はこういうものなのです! というのをしっかり提示する見事なジョブ、それが『それでは、ステキなセッションを。』(以下それステ)なのです。
皆さんにおいては、きらら漫画とはどういうものだと思われるでしょうか。女の子が可愛い。それくらいで脳死の前ステ擦っていませんか?
だがしかし! まるで全然! その程度では理解に程遠いんだよねえ!
というくらいに、現在のきらら漫画は大変濃密な時代に突入しています。ちょっと前までは女の子×何か、程度でしたが、今では女の子×何か×何か、と言う感じで、今まで女の子に対して一つの軸だった、二つの軸に上がってきています。この二つ目の軸は、女の子と掛け算したり、または一つ目の軸と掛け算する、あるいはその両方かも。と言う形に、大変込み入っているのです。最近アニメ化!(『アストロ球団』の「アフリカ!」ぽく)が決定した『星屑テレパス』などを見れば、女の子×ロケット×宇宙人というのが、それぞれに有機的に絡み合い、大変よろしいのでは、ないでしょうか……。と国語のもみあげ(CV稲田徹)台詞が出るくらい素晴らしい作品となっています。俺は詳しいんだ。
斯様、主要素三軸方式は大変レベルが高い作品が生み出されるのですが、当然敷居というか、制作力が大変高くなります。基本的にきらら漫画でも主要素三軸方式をとる漫画がまだ少ない点を見れば、それも分かるでしょう。
そんな中で、福きつね先生のきらら初連載であるそれステは、女の子×バンド×ガチャ、という謎の取り合わせをもって侵入してまいりました。
内容の方は、まだ芽が出てないぺーぺーなミュージシャン是沢さんが、妖精とのたまうてんちゃんに、ガチャから不思議アイテムを貰って演奏を豊かに! と言われてそれをやっていく。というのをベースにしながら、きっちり成長物語として成り立っている、という中々テクニカルな作品です。
てんちゃんがガチャで演奏スキルを上げるアイテムをくれる、という段階で、アイテムに溺れてしまうのでは?
というのは、現代ガチャ事情を知る人なら誰でも思うとこですが、是沢さんは人間が出来ているので、そこでアイテム頼り! ってことにはならない。あるいはいずれ一度くらいそういうタイミングが訪れるかもですが、てんちゃんの方もガチャ中毒にしようという意図でそうしている訳ではなく、なんか人のエモさを集める為にやっています。なのでむしろガチャ中毒になってしまう方が問題ではないか、という予想は立ちます。その辺の匙加減は全然余裕、という感じも受けます。たぶん、そこんとこちゃんとやれるでしょう。
さておき。
上記した通り、主要素三軸方式なこの漫画ですが、その綴り方、絡め方は大変出来ています。女の子要素に対して、バンドもガチャもきっちり存在を主張し過ぎず、しかし全くの無の要素にもならず、ちゃんと噛み合っている! というのが良の点です。
ガチャで出たアイテム、その力で演奏をして、それで得たエモさが何かに必要、というので、女の子でバンドである点がきっちりと組み合わされる。見事な三軸方式なのです。これがあるので、今のきらら無印は「キングダム、カム……(きらら新世代時代、来たれり)」と某園生顔になるのもしょうがないと思っていただきたい。今のきららは新世代がアツいんですよ!
実際、『星屑テレパス』、『ほぐして、癒衣さん』、『しあわせ鳥見んぐ』、『おねロリキャバクラ』、そして『それでは、ステキなセッションを。』と、きららキャリア1、2作目の漫画家さんの漫画が大変キャッチ―且つ読ませる現在、きらら無印には黄金時代という風を感じます。案外皆2巻乙になったらどうしよう、という気持ちもありますが、とりあえず星テレはアニメ化! 鳥見は2巻乙回避確定、となっているので、乗るしかない、このビックウェーブに! ってなってもっと連載が長くなって皆看板になればいいや! というお気持ちがふらっと出てきます。それくらい、今のきらら無印はいい感じなので、マジ沢山巻を重ねて欲しいですね。
なんか感想が違う方に行っているので強引にまとめますが、バンド物というのをきっちり不思議なガチャという要素でずらしつつも、バンド物としての核にはちゃんとコミットする。そういう漫画です。正直ずっと見たいので、もっといろんな人が購入するがいいや! と言って、この項を閉じたいと思います。