好きな漫画の語り部 第四回 浜弓場双『おちこぼれフルーツタルト』

この項について

 好きな漫画のことを語るのは楽しいと思いませんか? なにせ好きな漫画ですからね。と情報量少なめの出だしでなんとなく察して頂きたい。とにかく好きな漫画を語りたいんや! そういうメンタルでやってまいります。
 今回語るのは浜弓場双『おちこぼれフルーツタルト』。所謂きらら系の漫画です。
 アニメ化もした逸品ですが、アニメ化の範囲外こそこの漫画の真骨頂なので、アニメでifルートだった、という事実を踏まえつつ、適当に語ってまいりたいと思います。男なら、やってやれだ!

『おちこぼれフルーツタルト』とは

 まんがタイムきららキャラットに執筆時点で連載中の漫画です。
 内容は、上京してアイドル事務所に入ることになったイノさんが、しかし、その事務所は零細で所属アイドルの売れない元子役ロコちゃんさん、売れないミュージシャンハユさん、売れないモデルニナさんと面子がしょぼくれていて、しかも借金もこさえている、という三重苦。その借金返済の為に、皆は一致団結してなどと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ。と言う感じで、一応その軸はあるけど最近はあまり顧みられない中、巻き起こる変態の嵐。それこそが『おちこぼれフルーツタルト』なのです。

へ、変態だー!!

 この漫画は、どん底アイドル譚、というアトモスフィアで立ち上がっている漫画ですが、その傾向が変態にすり替わっていきます。
 これには、一つにロコちゃんさんの妹で狂的にシスコンのチコさん。もう一つに中盤からイノさん達フルーツタルトに加入する、狂的にイノさんラブのヘモさんの登場が大きく関係してきます。
 どちらも本当に狂的に対象が好き好き大好きハイパーボッ!! なので、何かある毎に変態方向へと駒が進むという、危険度高めの変態漫画状態となっていきます。
 そしてこの二人の磁場にあてられたのか、他の子たちも徐々に変態性を発露し始めます。序盤で女の子に囲まれると作詞が進むー、というその時点でもわりとギリだったイノさんは、もう女の子ならOK! になっていきますし、序盤押し出しが弱かったハユさんはヘモさんとの兼ね合いでイノさんスキーが発露するようになりますし、一番まともそうだったロコちゃんさんはオーピーピーエーアイを求めてそれが豊満な人にフカフカしだしますし、押し弱めに見えたニナさんは匂いフェチという側面が深掘られて匂いを追い求め始めます。
 もう、皆変態です。この上にロコちゃんさんを過剰過ぎるスキーするチコさんと、そのグループメンバーで片やドM、片やドSの双子、ぬあさんとるあさん。だいぶ生活破綻者なフルーツタルトマネージャーホホさんに何故かやたら若い子系コスプレを擦る、チコさんとこのマネージャーリリさん。それからホホさん達と同じ大学で先輩後輩の間柄ながら今はホホさんと結婚したいというワカさんも出て来て、全体としてまともな人が皆無になっていきます。フルーツタルトファンのトネさんと、そのトネさんと共にアイドルすることになった乙社長さんくらいか、比較的まともなの。8割がた変態じゃねえか!

変態に変態をぶつけんだよ!

 そういう訳で、変態ネタが乱舞する漫画ですが、この変態への力の入れ方、ギアの入れ方が常に最新話が最高という状態をキープしており、下手すると無限に変態ネタが出せるのでは? という段階にまでなっています。
 この漫画の恐ろしいのは、登場キャラが大体変態な為、変態ネタでボケをしたところに突っ込むかと思ったら変態ネタで覆いかぶせてきて、先に変態ネタしていた方が突っ込むという展開がされるところです。変態に変態をぶつけんだよ! というのがわりと常習で、そのおかげでどんどん変態ネタが濃くなっていくという、好循環なのか悪循環なのかよくわからない地点にこの漫画はあります。
 これが可能なのは、お互いにベクトルの違う変態性を持っているがゆえに、こっちはそう取らんよー!? みたいな突っ込みが成り立つからです。この漫画、わりとお互いがボケお互いが突っ込む、という形が多い。つまり誰もがボケであり、ツッコミである、という所謂笑い飯態勢が整っているのです。
 これにより、変態系ボケとツッコミと変態系ボケが絡まり合い、得も言われぬボケ空間が生み出されるのです。

ボケ過多が生み出すエクストリーム

 この漫画はボケが多く、ほぼ同数の突っ込みがいるんですがそれでも追っつかない、というボケ過多の状態に陥ります。
 なので、ボケたまま先に進むことも日常茶飯事で、ほぼ読者がきちんと突っ込まないと誰も突っ込まない、という事態もあります。最近の事例だと、イノさん達のお母さん達が、「姉です」「姉です」「姉です」としらを切りまくった次の瞬間「ママーズです!」とかやり始めるとことか最高にいかれてました。いきなり知らないを切るの忘れないで? と読者が突っ込むしかない状態でした。
 こういうボケの過多が、それに更に変態性が乗ることによって更に印象に残る形となり、ゆえにこの漫画の印象が変態に染まってしまいます。ある意味で宿痾ですが、ある意味で個性でもあり、なのでこの境地に到達してしまった浜弓場双先生の明日はどっちなんだろう。と老婆心がバッキバキです。この漫画終わった後の作品がまともにやっていけるんだろうか……。

アニメエンドとは違う、真の歴史としての漫画版の顛末

 先にアニメの方が流れがifだと記述しました。アニメの方はビッグイベントアイドル甲子園、ドル園に参加できる! で終わっているのですが、真の歴史たる漫画版ではそこは異なっています。正史ではドル園に落選しているのです。
 それによって起きる、おちこぼれフルーツタルトからの落ちぶれフルーツタルトが、おそらくこの漫画の最大のターニングポイントです。ここから、三つぐらいギアが噛み合って変態ボケ過多を更に伸長させていくのです。
 何が落ちぶれフルーツタルトかというと、ドル園に落選して落ち込んだ面々が、汚化二名、太化二名、ガリ勉化一名という、きらら4コマにおいてしていいラインをギリアウトしている状態になるのです。完全な落ちぶれっぷりです。
 その状態から、フルーツタルトが復帰するまでを全2回かけてやる訳ですが、ここで大きいのが基本一話完結型で、脈は続くけど回ごとに一つ置いた感じになるこの漫画で、明確に2回掛けて再起をやったとこです。それだけ、落ちぶれは重要なファクターなのです。
 その中でも特に重要なのはガリ勉化したイノさんのガリ勉の理由です。それはアイドルプロダクション社長になれば、女の子を侍らせられる! という動機からです。この部分で、イノさんの女の子スキーが一気に傾倒されます。その前段階でも倒れてましたが、ここで一気にへし折れるレベルでぶっ倒れます。
 これを契機としてなのか、他の子たちも性癖を傾倒するようになり、最終的に皆変態ボケをする運びとなります。元々あるにはあった要素がより強く解放されたのは、なんがあったん浜弓場先生? まであります。ここがこの漫画の明確なターニングポイントですが、明確過ぎて逆に何故全開に? ってなります。

なのにそこにアイドル

 この漫画は散々変態だと記述しました。実際一切変態です。平素から色々変態ネタを縦横無尽します。油断するとバブったり庭にロッカーでむふふしたり。
 ですが、ことアイドルと言う部分にはこの漫画は誠実です。二度言いますが、アイドルには誠実なんです!
 結構ギリギリのネタを突っ込むこの漫画ですが、アイドルとしてステージに上がる時には変態性は影を潜めます。全く無い訳ではないんですが、その辺はステージ外で行われて、ステージ上ではそういうのはしてきません。そしてステージ上ではきっちりアイドルをやりますし、変に汚れなことも起きません。
 その誠実さが目立つとこは、ヘモさんがイノさんを好きになるとこでの、イノさんのアイドルとしての振る舞いでしょう。ある意味そのファンサのせいで目を付けられる、と言う訳ですが、逆に言うとそれくらいしっかりアイドルとして、ヘモさんの前に立てていた、ということでもあります。
 そういう、ちゃんとアイドルとしてするところでは変な茶々は入れない。この部分、アイドルと言う部分に対してはこの漫画はだから誠実なのです。まあ、問題としてはそういうアイドルの部分が出る場面が少ないというのがあり、だから変態がしっかり記憶に居残りやすいしアイドルに対して誠実なのも忘れそうになるのですが。

まとめましょうか

 アイドルとしてちゃんとしている、と言う部分がしっかり核としてはあるものの、その周りをデコレートする変態の話が悪目立ちする。
 だから気にいった。
 という所作が出来てしまうくらいには、その変態性の味わいが深い。アイドル面でも深い。それが『おちこぼれフルーツタルト』の全容と言えるでしょう。よくよく考えなくても顕著に変な漫画ですね……。
 とかなんとか書いて、ここで〆。したらな!

これ書いた時点では6巻が最新巻です

おちこぼれフルーツタルト 6巻 (まんがタイムKRコミックス)