ネタバレ?感想 塩野干支郎次 『人類滅亡コクピットガールズ』1巻及び2巻

人類存亡コクピットガールズ(1) (ヤングキングコミックス)
人類存亡コクピットガールズ(1) (ヤングキングコミックス)

人類存亡コクピットガールズ(2) (ヤングキングコミックス)
人類存亡コクピットガールズ(2) (ヤングキングコミックス)

 大体の内容「塩野味のパシフィックでリム!」。謎の敵<イミテーター>と戦う防衛隊の、そのどうにもバカな内実。それを主のネタとしてお送りされる漫画。それが『人類コクピットガールズ』なのです。
 塩野干支郎次先生というので皆様は何を思い浮かばれるでしょうか。筆者としてはやはり男の子魔法少女の先触れ、『ブロッケンブラッド』なのですが、この漫画もそのアトモスフィアに包まれた、変な味のコメディ漫画となっています。
 内容の概要というのはほぼ『パシフィック・リム』なんですが、そこに日本的なのと塩野先生のエッセンスが爆盛りされた結果、変な漫画として一気に完成してしまいました。
 一応設定的にはかなり重要な位置にいるけど、その実としては他のパイロットに絡まれるだけの存在な直人君の存在感が基本薄めです。あまりいなくても成立しそう、だけど必要というかなりギリギリな存在となっている辺りが、ノイシュバンシュタイン桜子ちゃんとなった健一きゅんを想起させる部分です。
 そうなるのも、他の子及び人達が存在感マシマシなのせいです。直人君が乗るエルクダインの他の三人のパイロットもやや存在感は薄いですが、直人君の父で直人君たちが乗る機体を作った司令官の無道さんとか、隊長の沢木さんの謎の親友にしてライバルの柴田さんとか、大人組が大体頭おかしいので困ります。
 父にして司令の無道さんは息子がエルクダインの適正者だというのを書類を捏造などして隠していたのでいきなりこういうタイプの漫画の司令官としては全然違うムーブを見せたりしてきます。ある意味信頼における大人ですが、司令官としては大失格、なのにずっと司令官のままなので、有能なんだろうなあ、という思わされます。メカであるダインマシンの製作者だからそうそう首も切れんのだろうけど、メカ作っただけで十分凄い人ではあるんだよなあ。息子ラブ過ぎて痛いけど。
 さておき。
 隊長の沢木さんはこの漫画のネームドの大人としてはかなりまともな人なんですが、その謎の親友としてライバルの柴田さんは頭がおかしいです。沢木さんにお前同期なだけだろ、と言われても親友にしてライバル! とか言っている狂人です。なんだこいつ。で、出してくるメカの副武装の製作者としての発案力は高いものの、いつもあとひと手間が足りないせいで力を発揮できない、というこれまたおかしい。一応、本当に発案としてはよく、エルクダインが使って状況を打開してたりはするんですが……。あの人が一番良く分んねえのよな……。もうちょっと考えれればもうちょい活躍できそうなんだが……。
 そういう訳で直人君周りがちょっとおかしい、そもそも搭乗するエルクダインのコクピットが世界で一番安全な場所を目されて作られた、というのでイミテーターに対して緊張感がない、という中で、わちゃわちゃしていく漫画となっています。いきなりコクピット内にプールが出たり、BBQしだしたりとフリーダム。
 そんなのでイミテーター相手して大丈夫か? ですが、イミテーターもわりと訳の分からないやつらだったりします。『ブロッケンブラッド』では後半になるにつれて頭のおかしいブロッケンの眷族が出てきて自動的にやられていく、という妙な展開が続きましたが、今回の敵であるイミテーターは人間の行動のカリカチュアというか、妙な特性をそのまま再現しているせいでマジで意味不明な敵となっています。なんで行列に並ぶのを真似ようとしたのか……。割り込みに異常に厳しくて自滅してたりしましたから、余計に何故そこまで真似ようとしたのか……。
 という訳で、内容としては再三言いますがコメディ方向に砕けた『パシフィック・リム』なんですが、それを塩野干支郎次先生が描くからこうなる、というレベルになっているコメデイ漫画。それが『人類滅亡コクピットガールズ』なのです。