大体の内容「青春タイムリープコメディ!」って書くとシュタ……シュタ……。ってなりますが、そういうのとは当然違うからこそのノッツ先生の漫画。それが『杉雪カコと見たい明日』なのです。
内容については大体の内容で言い表せる漫画ですが、そのアトモスフィアについては中々に言語化が難しい。青春もタイムリープもコメディも手抜かりが無く、しかし味わいとしてはノッツ先生だからこそだろうがっ! ってコミックマスターJが咆哮するレベルです。それくらい、ノッツ味によって青春もタイムリープもコメディも味付けされております。
そも青春物としては、朝倉アサキと杉雪カコの積み重なる関係性と、アサキカコどちらもの青春ゆえの事情が見えたりする点が濃く、しっかりした味わい。タイムリープものとしてはあることをしないと同じ日を繰り返す、というベタながらそこで一日を繰り返すと人との親密度みたいなのが溜まっていってじりじりと仲の良さが上がっていくとかこれも滋味。コメディとしてはアサキが実は陰のものだったっぽい点をカコに指摘されてしどろもどろとか、どうせ毎日繰り返しだからと、普段は陰のものなカコが人が見てないとこなら結構アグレッシブだったりと、そういう部分でコメディノリがまた新味をしています。
この辺のしっかりした部分と、ノッツ味ががっちり組みあって一つ漫画として形を成していると言えるでしょう。
では、ノッツ味とは何か。これがこの漫画のアトモスフィア言語化が難しい要因です。ノッツ先生というのはなんというか、妖怪で言うと鵺のような捉えどころがない感じがあります。今までも、童貞のしゃせいで未来が見える『クルミくん NO FUTUER』、引きこもり宅録女子の4コマ『ソラミちゃんの唄』、色んな初情事の1時間前からの話『初情事まであと1時間』、あるいは下心をもらって強くなるファンタジー『好き好きだいちゅきつよつよソード』、他にも色々ありますが、こうしてみるとマジで作風が分かるような分からないようなラインを攻め攻めしています。とはいえ、並べると見えることもあります。どれもちゃんとノッツ味に間違いはないのだということです。
例としては際物に見えるけど内容はちゃんとしていたという『初情事まであと1時間』が挙げやすいです。初情事の前の1時間前からの話で、情事に突入する手前で終了する、というぱっと聞くとどおしてだよおお! という内容ですが、それゆえに逆にエロいことが唐突に発生しない、ある意味では情事の話なのに安心安全! 猥雑は一切ない! ゼロとは言わないけど! というそういうとこを突くことができたのか! というラインを攻めている漫画なのです。
そういうのと、この『杉雪カコと見たい明日』はどう似ているかというと、斬新ではないんだけど、視点を変えてみたら新味になる、というのの権化であるのが同じ、というべきでしょうか。全体的に、その手があったか! というのは『杉雪カコと見たい明日』もそういう青春物の形があったか! という感じで膝を打つものでした。組み合わせの妙! 青春ゆえに、明日が欲しいアサキと、青春ゆえに明日が要らないカコの、長く付き合っていくことで起きる微妙なアトモスフィアに、次の日に行く為に必要なことが絡んでなんとも言えないラインを魅せてくれます。はたしてアサキとカコの間柄はどうなっちゃうのー!? そういう青春物としての輝きに、タイムリープがきっちりと仕事をしている。
つまり既存のものに少し捻りと違う視点をいれる。その捻り方、視点位置が絶妙なのが、実際ノッツ味、といえるかもしれません。
さておき。
個人的にはアサキが大変愛おしいやつに見えています。恐らく高校デビューを狙ってチャラ男になろうとしているけど実際はかなり陰のものっぽい、というのを隠し通せるのか。というのが勝手に見所にしています。基本的には心優しいし人当りも穏当。チャラ男方向に舵を切っているのに生来の人の良さと陰が隠しきれてないのがあざといんですよ。そして、カコとどう接するのか、というのを考えあぐねていたり、でもある程度素で見切ってみたりというのもまた、この子たちどうなるのー!? ってなって大変よろしい。青春よなあ。
ということで、青春タイムリープコメディとしてしっかりした仕上がり且つ、ノッツ漫画としての旨味もある。そういう漫画なのが『杉雪カコと見たい明日』なのです。
