とにかくヘイトコントロールが上手いとしか言いようがない
皆さん、『サンキューピッチ』13話を読み終えていらっしゃるでしょうか? まだならリンク先に疾く言って読んでください。その上での話をします。
今回の13話は三馬覚醒についてどうするのか、という点をしっかりした足腰でいなしてくる技前にも惚れ惚れしましたが、今回は住吉九先生のヘイトコントロール、読者の感情の行き先の着け方が巧みとか匠とかそういう言葉すら生ぬるいくらいがっちり決まっていたので、個人的にはお美事! お美事にございまする! って虎子にならざるを得ませんでした。
今回は三馬が轟を抑えきれずに、最後の轟の打順で桐山にバトンが渡り、そして、というこの試合のクライマックスに向かいますが、そこへの読者の気持ちの持っていき方、及び作中登場人物の感情のもっていき方があまりに決まり過ぎていて、最後のコマの桐山の一言でぶるっと震えが走りました。ここのこの言葉の為に今までの試合の全てがあった、という見事な収束だったのです。
ここへの持っていき方というのがマジで美味い。轟関係のヘイトコントロールはその登場時から鼻っぱしが出ているけど、周りが勝手に筋を書いていてこいつはこいつで苦労しているな、となっていたところで、今回世の中を舐めているのを示すものとして自分が特別なゲームをやっている、という視点を提示してきます。*1
ここで俺は最強だ! と息巻いていたのが、桐山に一蹴される。このヘイトを瞬時に買って、爆速でヘイトをカタルシスに落とし込む。この上げ下げがあまりに美味い。
また、作中キャラの気持ちの上げ下げも同時にこなしています。真澄が、いくら凡才が努力しても、天才には勝てねえんだ! という持ち上げの気持ちが、桐山に一蹴される、というので一気に下がる。まさか!? ってなるというので、マジヘイト、あるいは気持ちの管理が、読者側もキャラクター側もしっかりなされているのがとんでもないのです。
このヘイトコントロールのすさまじさで、住吉九先生の前作『ハイパーインフレーション』の”大きい赤ちゃん”商人グレシャムを思い起こさずにはいられませんでした。基本的に金儲け、金ではなく金を儲けること為に生きていて、主人公を苦難の道に送った本人で、以後も味方になったり敵になったりを繰り返す。だというのに読者の最終回の気持ちとしてグレシャムのスピンオフ読みてえ! という地点に着地した、ヘイトコントロールのセンスが無ければただのクソキャラとして脳に残るというのを回避した稀代の名キャラクターです。この時のヘイトコントロールも的確かつ大胆で、読者のみならず作中キャラのヘイトも最終的には敵対することはない、にまでなったというので、マジで住吉九先生のヘイトコントロールは卓越していたのだ、というのを思い起こして理解しました。
それを思い出すくらい、今回のヘイト、感情コントロールは閾値を超えていたのです。漫画としてもきっちり落ちる最後のページでビシッと決まっているし、感情的にもここで桐山がリリーフとしてやっていけるというのをやってくれてすっきり。試合には負けてますが、見たいとこは見れたので読者側としては申し分ない仕上がりです。やっぱすげえよ住吉九先生は!
とか適当なことを書いて今回はここまで。
*1:ここは舐めてはいるけど人を見る眼はちゃんとしている、その人の本質が見えているという部分でもあります。