大体の内容「げにかすりから、かすりとれ!」。
もうちょっと内容について
針磨梁は元プロボクサー。頭を強打したことで試合に敗れ、タオルインで敗北した試合後昏睡状態になり、2年後に目覚めた後はボクシングの道は断れていました。
そこからボクサーを担いでいくプロモーターになり、自分を引退に向かわせたやつらを破滅させてやる! という復讐心をもっていくというお話が『げにかすり』の大枠の話です。
とはいえ、頼れる伝手は自身のプロモーターだったハゲのギャンブル狂の四田会長のみ。それも四田ジムは完全に傾いていて、そもそもリングすらない状態。完全にボクサー墓場も墓場になっていました。
なのでボクサーもいないし、それ以上に大きく儲ける為なら大型新人がいるだろ! というのでもういきなり詰んだ、かと思ったところにオリンピック銀メダリストの華火時貞がメダル授与式で日本国旗を引きちぎるという強ムーブをみせてしまいます。そしてプロにいくという華火を引き込むことになっていきますが……。
熱い漫画
さておき。
熱い漫画というものがあります。と、唐突に始めますが、熱い漫画というのは漫画の中では王道のラインにあるものです。少年漫画というのは熱さを求めらえることが多いですし、そういうのに慣れ親しんだ我々(無闇に全体化)には熱い漫画は必須アミノ酸レベルで必要なものです。そういうのがないと某ウィンキーソフト要素欠乏症になってしまう人みたいになるものでもあります。
しかしそれらを多量に摂取していると次第に熱い展開許容量増加というか耐性がついてきます。それなのに熱い展開を求め続けると、どんどんと依存症みたくなっていきます。とはいえ、これに延々と円環の理される人は多くなく、いつしか熱い展開? ハハッ。と冷めたやつになっていくのです。漫画オタのならいです。
とはいえ、そういうすれっからしの漫画読みにも熱い漫画が読みたい時はあります。しかし、年を食って少年漫画を読むのは……。とためらうタイプのすくたれ漫画読みのかたに朗報です! 青年誌にごつ熱い漫画があるんですよ! ということで前フリ長かったですが『げにかすり』の話をしていきます。
『げにかすり』
『げにかすり』は『嘘食い』、『バトゥーキ』と青年誌ラインで作品を描いてこられた迫稔雄先生の最新作。これを書いた現在で3巻まで出ています。今回は迫先生自身もライセンスを持つボクシングをメインにして、げに、つまり人形に喩えられたボクサーから金をかすり取るやつらを破滅させる! という話が展開されていくことになります。
とはいえ、まだそこに至る為の前提、まず華火をチャンピオンにする為の仕事をしているのですが、それでもこの漫画が熱い漫画として既に君臨しています。
熱さについては内容と同期するように二面の熱さがあります。
一面はボクサーのほうの熱さ。素直に拳闘の試合の熱さがそこにあります。
もう一面は、プロモーターとして悪戦苦闘する針磨の熱さ。慣れないことでも食らいついていく泥くさい熱さが見られます。
ボクシングの熱さ
ボクシング、拳闘の熱さはボクシング漫画なんだから当然です。そこが熱くなきゃ面白くない。
しかし、ボクシング漫画では基本フィジカルのぶつかり合いの熱さがメインですが、『げにかすり』はそこに一歩踏み込んでトリッキーな動きを混ぜてきます。
特に顕著なのは3巻での試合における見えない左フック。必ず必要になる左フックのタメを、そうくるか! というトリックと、しかしそれは確かにできるな! という納得度合いで打ち込んできます。この辺のロジックはさすがに『嘘喰い』の作者だな、と思わせるグレイトジョブです。
そういう感じで拳闘シーンは正道に変化もあるけどしっかりしていて面白く、熱いです。
個人的にには華火のプロ初戦が特に熱くて好きです。試合としては瞬殺劇で終わるんですが、読者が見る華火の試合はそこが初なのもあって華火つえー! と読者がブチ上がってるとこから、さらに追い討ちのようにスポーツ記者達がいかに凄かったかをきっちり言語化して華火ヤバい! ガチだ! って色めきたつことで、見るプロが見てもなのか! となってテンションが上がる仕組みが最高です。それくらいの鮮烈デビューでした。
その後にちょっとした事件が起きてヒュッってさせられるのも含めて迫先生の漫画の旨さが濃縮された試合であります。そういう美味かったとこが今までの経験で磨かれることによって更なる光を放っているといっていいでしょう。実際記者の華火すげえ! も実質1コマでやってたりするので、マジで漫画が美味い。テンポよく凄さを分からせてきます。その光と旨さで拳闘を熱く描いているのです。
プロモーターの熱さ
それとの対比として、針磨のプロモーター業も熱いです。とはいえ、拳闘は陽の熱さでさがプロモーターは陰の熱さ。仄暗さともいうべきな熱量はあるけど表に出せない、そういう熱さがあります。
そもそもの問題として針磨は直感型なタイプで、策を弄するとかはしません。誠実さで押していきます。裏の怪しい人たちにもそれで推し通る辺りガチの直感タイプです。
しかし、それだけではなかなか上手くいかないのは当然です。海千山千のプロモーターと争うにはまだ足りないとこが多いとも言えます。
それでも真っ向から向かっていく針磨の動きは、だからこそ熱い。徐々にプロボクサーの明るさから離れていく、という描写もあるので、やはり仄暗いものではありますが、力一杯駆け抜ける様が独特の熱さをもっています。
その熱は針磨のバトルにも関わってきます。都合針磨の拳闘というか反社を殴るターンが2度ほどありますが、どちらも勝っても称賛されるようなものではなく、またどんどんとプロとしての聖域だった拳にケチがついていくようにも描写されており、それが仄暗さとなってプロモーターの熱さを彩っています。
キャラクターが濃い!
そういう熱さの漫画が『げにかすり』ですが、現代漫画なのでキャラクター濃さは際立っています。そもそも名キャラクターであるマルコ(『嘘食い』)を生み出した迫先生といえるレベルの濃いキャラに満ちています。
試合で死に損なってから破滅精神が植わっている針磨とか、負けたら死ぬことになっている、というので全キャラにドン引きされた華火も濃いキャラですが、やはり四田ジム会長四田がよいです。
針磨が所属してた頃からギャンブル狂で、あちこちに借金があるし金の為に針磨に無茶なスパーさせて選手生命を少なくしたり、金がなくなったらリングすら売っぱらうというダメハゲ人間ですが、ボクシングの指導やボクシングを見る目に対してはちゃんとできる、というのでそこがギャップとして立ち上がっています。それで針磨も研鑽されて強くなったのもあり、その辺では偉大とも言えます。
でもダメハゲ。囚われのヒロインポジとかにもなるけどダメハゲ。というかダメハゲ親父が囚われのヒロインポジになるな。どうなってんだ。
巻ごとの見所など
見所は沢山ある漫画ですが、やはり拳闘シーンは見所として高い位置にあります、
1巻なら華火のプロ初戦は先述したように大変良いところです。初っ端からつえーは現代的ですが、そういう様式だと思わせない手管、元々の相手から変わったとか先述の記者の台詞とかでやってくるので、そういうタイプの話だと後で気づくパターンです。この辺はマジ見事です。
2巻は華火の最初の予定の相手だった選手がチャンピオンと対戦する回がよいです。今のところ『げにかすり』拳闘シーンでは最高の仕上がりです。この漫画、拳闘シーンは特にカウンターの感覚が非常に味わい深いんですが、その味の最もいいものがここにあります。試合としての見事もですが漫画での画像も見事で、見開きでこちらが視線が右ページに集中したところを左ページでカウンターが刺さっている、というのをやってきます。さすがの迫先生の漫画力です。
3巻はこれも先述ですが見えない左フック。でも、それが炸裂した瞬間は最初は見れません。いきなり相手がダウンしている、というので何が!? となって次の話に向かうので、見せられた時は本当に何が!? ってなります。そっからそのメカニズムを解説されますが、色んな方向で解説されるのでその面白さもあります。個人的にはフックです、のくだりは好きです。お前らどうせわからんやろ、という感じで小声の早口で押し切るところ最高ですよ。オタってそうよね。
そんな感じで
『げにかすり』は大変いい漫画です。いい漫画の評定は人に寄りますが、わしとしては気が付いたら読んでいるのはいい漫画の一つの指針です。そういう意味では、既に3巻までを繰り返し繰り返し読んでいます。さすがに初見のインパクトは薄れますが、それでも2巻のカウンターのとことかはいくら見てみ惚れ惚れする、というラインになっています。こういう漫画はつええのよ。もう、好き。
ということで『げにかすり』の感想みたいなものでした。本当にいい漫画なので、もっと知られるといいや! ってなって感想書いてみました。これで惹かれる人があれば嬉しいところです。
ということで今回はここまで。したらな!


