感想『タマラセ』

内容を要約する前に帯に突っ込むとすると「新手の詐欺か!?」。 内容を要約すると「伝奇ジュブナイルの皮をかぶったバカ小説」。
さてさて。
はっきりいってこれが「スニーカー流新伝綺!」だというなら角川スニーカー文庫恐ろしい道を選んだことになります。 確かに全体的に伝綺ジュブナイルテイストで、その方向から見たら新人一発目としてはそこそこに良いものかもしれませんが、この本の真価はそんな所にはありません。
この小説の芯の姿は「バカ小説」であり、それをくるむのに伝綺を使ったまで、なのです。 その証拠に主人公以外の心理心情にはほとんど触れないくせに、「桃太郎バーサス吸血鬼」の内容への無駄なこだわりや、「人間枯葉剤」というあだ名に対する妙に細かいディティーだとか、話の筋に関係ない所にすさまじい執着をみせていて、しかもそのことごとくが忍び笑いを誘う辺り、間違いなく天然の「バカな事言い」のそれです。 あとがきでも「とにかく読者を笑わせる事を第一目標に」と言っている辺り、本物さ加減が伺えます。 
そういうわけで、この天然のバカさ加減が許せない人には伝綺部分位しか見るところが無いのですけれども、これに波長が合えば「んぐくくく」とくぐもった笑いで全体を受け入れられるという、人を選ぶタイプの一冊にしあがっています。 川崎康宏スキーな方には普通にお勧めできる物です。三桁いるかどうかでしょうけど。
しっかし、こんなとんがった道を選ぶのか、角川スニーカー文庫…。