殆ど死んでいる 『異世界おじさん』1巻

異世界おじさん 1 (MFC)

異世界おじさん 1 (MFC)

 

  大体の内容。「おじさんは異世界帰り」。17年前、2000年頃に事故によって昏睡状態だったおじさんが突如目を覚ました。その面会にいったたかふみは、いかれたように見えたおじさんの意外な事実を知る。それは、おじさんが異世界に行っていた、ということ! ということで、異世界に行ったではなく、行って帰ってきた、という異世界転生系のカニッシーの間隙を見事に突いた漫画。それが『異世界おじさん』なのです。

 先に言及しないといけないので言いますが、この表紙の人はおじさんではありません! よくよく綺麗になって転生とか、女の子になってとかありますが、これはそういう話では断じてない! そこを断っておく必要があるかと思います。実際、俺はそう思ってた。

 では、おじさんは? となるかと思いますが、ちゃんと表紙を見てください。それらしい小汚い眼鏡の男(言い方が辛辣!)が右下いるでしょう? 彼がおじさんです。間違えないように。

 更にでは、このエルフっぺれえ人は? となりますが、それは何の因果なのかおじさんに惚れてしまったお方らしいです。この漫画のこの巻にはちょい役でしか出てきませんが、この表紙やその内容をみるにつけ、かなりのツンデレ感でおじさんを付け回してた模様です。しかし、おじさんが異世界に行ったのは2000年頃。02年辺りから隆盛となったことによってオタに組み込まれた、ツンデレ受容体は持っていないおじさんには、単なる辛辣エルフにしか見えなかった模様です。でも、エヴァとかでアスカで得ているような気もするんですが、どうなんだろう。たぶんエヴァの頃は中学生か。いやむしろ受容体出来てるんじゃないですか!? そのくらいの年のこというのは!

 という話はさておき、おじさんの異世界生活は、それはもう記憶消去したいくらい大変だった模様です。そっちの世界の人は皆美麗なので、しょぼくれフェイスのおじさんはオークに間違われていきなり命を狙われたとか、魔法の才能はこの手のでお馴染みなくらいのチートなものがあった、実際に戻ってきても扱えるので大変素養があった模様ですが、それでちょっと現代技術無双しようとしたら異端審問されて命からがらだったり、ツンデレツンデレってわかってないから辛辣にしか見えないしで、そりゃ記憶消したいとか思うわ。というレベル。たかふみさんが見せてもらった手帳の内容がとびきりエッジが効いてたらしいのも合わせて、それが地道に開陳されるたびによく生きてたなあ。ってなってしまいます。異世界に転生するのも楽じゃないのですね。

 その異世界生活、本当に色々ありますが、結構そっちの世界にでかい影響を与えている節もあります。凍神剣の守り手メイベルさんの話が特にそれで、色々とメイベルさんの心を溶かしていくイベントをこなして手に入れる、この武器でないと倒せない相手が、というのに強引に倒してしまうというフラグクラッシャーしてしまいます。

 その世界でのでかいミッションのようなのに、いいのかそんなことで、と思っていたら、そのメイベルさんがおじさんのところにやってきて、今後どうすれば。というある意味当然の悩みを打ち明けてきます。それに対するおじさんの回答は、こもってていいんだ。でした。そして、メイベルさんはでかい承認を得て、引きこもりになった模様です。いいのかそんなことで。そう再び口にするくらいのダークサイドからの語りかけ具合でした。でもまあ、相手のしたいことなんて知ったこっちゃねえよなあ。とも思ったので、ある意味では爽快感すらありましたが。メイベルさんの暗い笑み最高でしたし。

 さておき。

 かように大変な異世界生活でしたが、戻ってきたら戻ってきたで生活があります。17年も昏睡状態で更にその時に異世界にいたとか、ハード過ぎてむしろ履歴書に書きたいのでは? という人生でしたが、これからはどう生きよう、となった時に、その魔法の才が活かされる展開に。魔法を使える! というなら何をする?

 そう、Youtuber!

 ということで特異な才を存分に生かして、おじさん、ユーチューバーで食っていくんだ。となるのが何とも現代的です。他にも魔法を多彩に使いこなして、でもユーチューバー。良いのか悪いのかよく分からない生き様ではあります。

 そんなおじさんが、異世界での生活を語りつつ、ユーチューバーで食っていく。ちょっとタガを外すと犯罪に活用出来そうで怖いんですが、それでも突き進むのが『異世界おじさん』なのです。

 柴田ヨクサル 『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』1巻

 

【Amazon.co.jp 限定】東島丹三郎は仮面ライダーになりたい (1)(特典ペーパー付) (ヒーローズコミックス)

【Amazon.co.jp 限定】東島丹三郎は仮面ライダーになりたい (1)(特典ペーパー付) (ヒーローズコミックス)

  大体の内容「それは、仮面ライダーになりたかった者たちの物語」。東島丹三郎は仮面ライダーになりたかった。その為に定職にもつかず、バイトと鍛錬とライダーグッズ収集にあけくれ、ショッカーの登場を待ちわびる毎日を送ってきた。しかし、齢40に到達。ショッカーがいないことは当然だが分かっていた丹三郎はとうとう手持ちの仮面ライダーグッズを売却。身軽になり、これで仮面ライダーともお別れだ。そう思った矢先に、ショッカー強盗という事件が勃発。その場面に遭遇した丹三郎は、仮面ライダーのお面を身に着け、仮面ライダーとしてショッカー強盗に立ち向かう! というもう色々な意味で身につまされる部分となんだそれという部分がかみ合う漫画。それが『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』なのです。

 この漫画のアトモスフィアというのは変なところがあります。というのも、最初は単なる普通の人の強盗にショッカーの名前が使われただけだったのが、話が進むにつれて、本当にショッカーがいる、という地点へと突入するからです。実際にそれがショッカーのそれなのかは不明ですが、とりあえずいきなり戦闘員に変身したり、失敗したものを溶かしたりと、人智を越えた存在ではあり、なのでそれに遭遇した丹三郎があれは、ショッカーだ。と断定するのも致し方ない状態になり、そう言う前提で話が進みます。

  相手はわりと人智を越えた相手なのに対し、丹三郎や電波人間タックル(『仮面ライダーストロンガー』)に憧れるユリコさんなどは、鍛錬は積んだものの単なる人。でも本気のライダーごっこの為に築き上げられたその力で、とりあえず戦闘員は倒してしまう、というのでもうこの漫画どこに行くのかが不明となっております。仮面ライダーはいない、が、本気の仮面ライダーごっこはいる。それが平和を守るのか? どうなってしまうんだ? そういう雰囲気がこの漫画を特異なものにしています。

 その上で、この漫画の本当のショッカー、わりと意味不明のワードですが、の作戦状況も中々に特異です。『仮面ライダー』のショッカーは結構目立つ作戦をバリバリ実行しては、ライダーに見咎められるというパターンを突き進みますが、この漫画のショッカーはどうもそう言うのではない模様。人の中に紛れ込み、その数を増やしていく、という作戦っぽいのです。丹三郎の本物のショッカーとの最初の対峙と撃退の時に、ショッカー強盗を咎めて戦闘員が姿を現すことや、怪人らしい存在も戦闘員を倒した丹三郎を消したりはせず、倒された戦闘員を溶解するだけにとどめている辺りも、目立つことを嫌っているというのが見てとれます。完全にガチでショッカーやっている、ともとれるのです。これが話としてどう結実するか。というのが見どころとして立ち上がってきます。注目点ですね?

 さておき。

 この漫画は柴田ヨクサル漫画です。そう言って何が? となる方もいるでしょうが、端的に言ってもんすごいドライブ感で突き進むタイプの漫画家さんなんですよ! と言っておきたいところです。この漫画も、ショッカー強盗のおかげで仮面ライダーとして色んな意味で立ち上がる丹三郎の話の流れ方とか、タックルが好き過ぎたのと父の影響で本当にタックルとして色んな意味で立ち上がってしまうユリコさんの挿話の振れ幅とか、とにかくパワフルで、妙な納得をさせられる力に満ち満ちているのです。この無闇なパワー、ドライブ感は、その後のショッカー登場での丹三郎のテンションが無闇に分かるようになる部分で一つ結実しますが、それ以降もショッカーはいる、のはいいんだけどどうなるのこの話! という読者側の惑乱をよそに話が突き進んでもいきます。

 このドライブ感! と感嘆出来るか、なんだこれ!? となるかでついていけるかどうか、そもそも柴田ヨクサル漫画が楽しめるかのジャッジがされているかと思うのですが、わりと前提条件がギャグ調で呑み込みやすく、巻数からしても話にも入りやすいこの漫画から、柴田ヨクサル漫画に手を出すべきなのでは? などと錯乱してみたりもします。レッツ、柴田ヨクサル漫画!

 とかなんとか。

 真田一輝 『ワインガールズ』2巻

ワインガールズ 2

ワインガールズ 2 (マイクロマガジン・コミックス)

感想 真田一輝 『ワインガールズ』1巻 - オタわむれ 日々是戯言也blog

 大体の内容「相も変わらずキャッキャウフフ!」。ワイン用ぶどう品種の分だけキャラが生まれるという、女子率超濃度擬人化漫画。それが『ワインガールズ』なのです。

 1巻の段階でもぶどう品種の分だけキャラクター出まくりんぐで誰が誰だか覚えるのが大変な漫画だった『ワインガールズ』ですが、2巻でもそのやり方は変わっておりません。流石に1巻ほどのキャラ乱舞ではない、と思ってよくよくキャラ紹介ページ見たら1巻とほぼ同じ数のキャラが出ていたことが発覚し、成程、訳分からなくなる訳だ。と妙な得心をしました。

 ですが、この漫画の非凡なところは、初手から香り立つキャラクターの濃い味付けと、うろ覚えであってもこの子はこういう子だから、というのを定期的にぶち込んでくることにより、大体しか把握してなくても全然読むのに支障がないという点です。大体先手を打ってこういうキャラだよと、あるいはそういうキャラじゃないのにどうしたの? というのを入れてきて、成程、大体分かった、とさせるのです。この辺のテクニカルさが、この漫画を多キャラ漫画なのに混乱なく読ませることに繋がっている、と言えるでしょう。

 さておき。

 この漫画の良さというのはやっぱり出る女の子が皆チャーミングですヨネ。と本国流法しかない!(ⓒ沙村広明『おひっこし』)状態に追い込んでくれるところでしょう。真田先生の漫画ではよくありますが、小粋なピロートークを、というかぶっちゃけ下ネタなんですけど、それを出しても厭味にならない、むしろ小笑い出来るポイントとして立ち上がってくるのが、大きなポイントとして挙げられます。この巻でも結構危険度の高いネタをぶっこんできたりするんですが、それがさっぱりと味わえる。この辺も流石だなあ、と。伊達にきららMAXで生育された訳じゃないのです。

 さておき。

 女の子のチャーミングさを上げているポイントに、仄かだったりガチだったりの百合要素があります。前にも書いた気もしますが、元々ワイン用ぶどう品種は混ぜて使う場合が多い、というので、ならカップリングじゃねえか!! という百合脳の発想を、実際に漫画として提供してくる真田先生の百合剛力は半端じゃないのです。個人的にはグリューナーさんとリースリングさんの関係が好きだったりします。武人系の後者の鈍感さと、ツンデレ気質の前者の不器用なアタックの組み合わせで、くっつくとかそういうの全く遠そうな辺りが大変ニヨニヨできます。それ以外でもソービニヨンさんとセミヨンの、セミヨンさんが徐々に変態チックになっていく百合感もいい。可愛い。この辺やはり、伊達できららMAXで百合時代の一翼を担っていた訳ではない、というのが当然理解されるべき点でしょう。

 で、好きな子は誰よ。というのには、わりとペコリーノちゃんが好きかもしれません。造形的にもですが、キャラクター的にも可愛い子には毒がある、というタイプで、基本当たりが優しいのに時折危険球投げてくるのが大変好みです。いいわあ、傍目から見るから安全に接せるタイプですね。可愛い。

 ということで、誰もが一瞬妄想するワインのカップリングを実際に形にした事によって生まれる、高濃度女の子百合可愛い百合漫画、それが『ワインガールズ』なのです。

 おにぎり 『ももいろジャンキー』1巻

ももいろジャンキー (1) (まんがタイムKRコミックス)

ももいろジャンキー 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「子供大好き、なのに……」。由比ヶ浜さんはぱっと見ギャル系で、表情も怖いところがある女子高生。でも、本当は子供好きで気立てのよい子なのです。ということでその由比ヶ浜さんが子供と触れ合っていこう、と頑張る漫画。それが『ももいろジャンキー』なのです。

 この漫画の特徴、というと分かりやすいのはギャップ萌えの擬人化とまで言われる由比ヶ浜さんの存在、それ自体でしょう。基本的にギャル校っぽいところに通っていて、金髪。その上で偶に表情が恐ろしい、んだけど、その表情は緊張でそうなってしまうだけで、根本は大変いい子なのが、由比ヶ浜さんなのです。子供と相対する時にも顔が強張ってちょっと女の子がしてはいけないレベルのものになってしまいますが、本当は子供と一緒に遊びたい、というだけなのです。このギャップ萌え! 基本パターンながら、きっちりとした足腰を感じるものがあります。お話の方でも、いい子だなあ、と思わせる場面が沢山あり、怖い顔になってしまうのにも、理由が分かれば、頑張れ! と応援したくなるのです。この辺の匙加減がこの漫画の良さと言っても過言ではないでしょう。

 子供大好き! な由比ヶ浜さんなので、当然子供と相対する場面は多々あります。その中でも、1話から登場して由比ヶ浜さんの良さを引き出してくれる茅ケ崎さん、その妹さんとのふれあいが心なごみます。妹さんが幼女ゆえ、いきなり踊りだしたり、抱き着いて息をブー! としたりとかなりフリーダムなムーブをしますが、由比ヶ浜さんの強面フェイスでも特に効果がないという強心臓の持ち主なので、由比ヶ浜さんと普通に接せる幼女として、メインと言えるくらい話に登場します。個人的には由比ヶ浜さんが熱でダウンして、の回の妹さんのおどりで励ますとことか大変良かったです。あくまで幼女であるので、病気の相手にするには、なだけど構わずやってあげる、という幼女ムーブらしさが素晴らしくありました。

 さておき。

 子供大好き! だけど怖がらせてしまうというので子供に近づけなかった由比ヶ浜さん。でも子供と触れ合いたい! ならば緊張しないように慣れないと! ということで、由比ヶ浜さんは同じ学校の葉山さんを相手に練習していたりします。

 はい、地味に意味不明のワードでました。同じ学校の葉山さんを相手に練習、って相手も高校生じゃねえか! と思われるでしょう。しかし問題ありません。葉山さんは、将来5歳児になることを目標にしている子なのです。なので、小さい子供への慣れという行動にもってこい。

 ってんなわけねーだろええ!? そういうツッコミが聞こえてきそうです。しかし、本当に葉山さんは5歳児になりたいのです。ちょっとした現実逃避、というのがこちらが思うところですが、実際の彼女を見ると、かなり真剣に5歳児になりたいというのが分かってきます。では何故? というのはこの巻では語られません。茅ケ崎さんの妹さんすら困惑させるガチっぷりですが、一体何が。ちゃんと話として出てくればいいんですが。

 そういう暗黒面もありつつも、由比ヶ浜さんと、茅ケ崎さん達との交流を見ていくのが楽しい。それが『ももいろジャンキー』なのです。

 トクヲツム 『伊勢さんと志摩さん』1巻

伊勢さんと志摩さん 1 (芳文社コミックス)

伊勢さんと志摩さん 1巻 (ラバココミックス)

 大体の内容。「アラサーのルームシェア。そそるぜ!」。というどうでもいいことはさておき、ちょっと男前な伊勢さんと、ちょっと可愛い系志摩さんの、その実をしっかりみせつつ緩やかにルームシェア。それが『伊勢さんと志摩さん』なのです。

 最近の漫画市況というのは大変捕らえづらくなっているのですが、それゆえに偶に妙なニッチ具合で、しかし自分の心の琴線をぎゅいんぎゅいん、それも『必殺仕事人Ⅳ』の仕事シーンで奏でられるテーマ、その開幕いきなりのエレキギターばりのぎゅいーん加減で奏で流れ落ちるその旋律をもってかき鳴らす作品というものに巡り会った時の感動というものは筆舌し難いのです。私にとってのそういうタイプの作品が、この『伊勢さんと志摩さん』なのです。

 ではどういう内容か。大人の、女の人の、ルームシェア! というので一瞬よぎるようなことはありません。考えましたか? 何たる不埒!

 ジョークはその辺にしますが、伊勢さんと志摩さんの、平坦ながら起伏にとんだ毎日を活写した作品、と言えば言えそうです。努力目標を設定し、それをこなそう、という部分はありますが、それは本当にアクセントで、それにきっちりとかっつりとやっていくという漫画ではありません。繰り返しますが、大人の、女の人の、ルームシェア! 以上のものは出てこないのです。サプライズしたり、雨に濡れたり、意識高いを目指したり。そんな毎日です。

 それでは退屈なんじゃないか? と言われましょうが、退屈、だからこそだろうがっ!! なのです。コミックマスターJ面でそう言います。それだけ、と言えばそこまでの生活を、しかしきっちりと活写することで十分に読ませるものにしているんだなこれが。それだけで、中々に感動的です。ここの感動具合は、個人的には乃花タツ『なり×ゆきリビング』めいたアトモスフィアの残滓を求めた所ゆえとは、否定しません。しかし、求めた、だからこそだろうがっ!! と再びコミックマスターJが参ります。全ての漫画は、あるいは創作はとすら言えますが、誰かが求めているのです。ここじゃないかもだし、今じゃないかもですが、誰かが求めているのです。そこに辿りつくこの感じ、いいのですよ。届けられたという感覚、嫌いじゃない。好き。

 さておき。

 大人のお姉さんが特にキャッキャウフフはしないけど楽しそうにしている、あるいは悲しい時もある。でも、そういうのを含めて生きている、というのは中々良いもんです。あるいは男の人でもそうだろうと推察できるので、古今東西老若男女、どこも問わずに人が楽しそうにしているのは楽しいもの。そういうことなのかもしれません。

 この漫画はその前提になる話とか、ちょっと悲しいけどしょうがないねな話とかもあり、だからこそ楽しい時って楽しいよね! でも悲しい時も悲しいよね! という塩分バランスをしていて、そこが信頼性に繋がっている部分があります。楽しいだけで糊塗しない、でも上書くことはある。そういう立ち回りですね。

 特に、伊勢さんと志摩さんが高校時代にかなり距離と壁があったのが、縁あって保健委員で一緒に、というのからしばらくすると壁? ってなっていく、という話が顕著。仲良くなる、でも時間が足りなかったなあ。というので卒業とともに分かれて、というのがちょっと悲しい気分にもなるのが良かったです。ちゃんとこの漫画の題を見ていただければ、その後は大体ご想像通りですが。その辺の展開もまた良いものなのです。縁は異なもの味なもの、が一番しっくりきますね?

 ということで、大人の、女の人の、ルームシェア! というのにフックがびんごびんごする人なら全く問題ありません! と判を押したい出来栄えです。あるいは、とくになにもないこそがある系統への導入としては結構最適な一作であるかと。と、かなり高度な位置に据えるようなことをいいつつ、この項を閉じたいと思います。

今回のまんがタイムきららキャラット三作取り上げ(2019年1月号)

承前

まんがタイムきららキャラットから三作を取り上げて、それぞれについて感想を書くという試みです。三作くらいの方が選びやすいし締まりやすいですね、ハイ。カカッとカカッと。
 選ぶのは好きな作品。とはいえ、号によって振れ幅がありますので、最大のゲインがあるやつ優先です。その方が楽だしね! 楽はしたい。

 それではいってみましょう。 

カヅホ『キルミーベイベー

 病院ネタだぜ! ということでいつも以上に酷い惨状に。デカい注射器で気絶させて麻酔と言い張るという鉄板を使いながらも、珍しくソーニャちゃんさんが不覚を取る展開と、というか顔ギブスなのにどうやって前見てるんですか!? という謎、そして最後までアトラクションとしての体裁を取り繕い続けるあぎりさんの天丼によって、これは酷い……。という呟きが自然に出る回でした。何度も言うくらい酷い。だからこそだろうがっ!

険持ちよRPG不動産』

 海に行くよ、物件を見にね! という回。海なので当然水着ですやったぜ師匠ー! といもしない師匠に対して叫ぶくらいにはサービス回です。でも、ラキラは戦闘服が水着と大して差がないので、つまりこんなドエロいのをいつも・・・!? ってなってしまいます。基本貧の部類に入って、だから琴音さんの豊に目がいって、というのが個人的によくあるからこそだろうがっ! 案件でした。

 物件の方は、持ち主がなくなった関係で、というものでしたが、琴音さんたちが恒常的に住める場所ではなかった、というのから、通りすがりの蟹に譲って、というので、物件を紹介するのが仕事でしょ? というのをさらっとやってそう言う漫画だったな、と印象付けてくれます。うん、良い足腰。

みらくるる『メイドさんの下着は特別です。』

 ハッピーバースデー、デビルマン! ということでツカサさんの誕生日でサプライズ。でも、ご主人さまのランジェリーケーキとか、ガチのフィギアとかすごいインパクトでヤバいです。いらんとこ完璧主義なのがよく分かるプレゼントです。作ってるわよ、って本当に作ってるんだろうなあ……。←婉曲表現

 さておき、ご主人様も言ってましたが、蘭子さんはおそろいのランジェリーを、というので、なんというかこう、尊いっていいな。という感情の起伏が重複してしまいます。おそろいのランジェリーなんて、男と女じゃ基本無理ですからね。女の人と女の人だから出来る、出来るのだ! というもんですよ。こういうのいい。

 感想 かんばまゆこ 『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』1から3巻

名探偵コナン 犯人の犯沢さん (1) (少年サンデーコミックス)

名探偵コナン 犯人の犯沢さん (1) (少年サンデーコミックス)

 大体の内容「犯人にはこの街は生き辛い」。ある男を殺そうと画策し、米花市に降り立った犯沢さん。電車を降りる段階で自殺志願者のように言われる米花市の恐ろしさが、じわりじわりと読者を笑いに追い詰める。それが『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』なのです。

 週刊少年マガジンに『金田一少年の事件簿』があるなら、週刊少年サンデーには『名探偵コナン』がある。前者が犯人視点スピンアウト『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』を出したなら、当然この手はありました。そう言う意味では時代が要請した感じの漫画であります。

 ですが、似たような時期に生み出された二作はしかし当然違いがあります。前者である『犯人たちの事件簿』が犯人視点で事件を振り返り、その不手際や厳しさを笑いに転化するのに対し、後者たる『犯人の犯沢さん』は未来の犯人が米花市の恐ろしさを、そこで生活していくことで読者に叩き込んでくるという、あまりに変則的な回転のかかった球で勝負してきました。ぶっちゃけ勝負するところが違う気がするんですが、それはさておき。

 この漫画の白眉なところは、米花市で殺人事件が起こり過ぎているというのを、作中事実として叩き込んでくるところです。先に電車で米花市に降りただけで自殺志願者呼ばわりだったことから始まり、賃貸物件はほぼ事故物件だとか、警察は殺人事件で手一杯で機能がしてないとか、そもそも一度転入すると転出することが現実的にほぼ不可能など、惨憺たる状態にあって、島耕作ならずとも「えらいことになったぞ……」って言わざるを得ない状況にあります。

 これは、『名探偵コナン』が長期連載してしまっているがゆえにあまりに同じところで殺人事件が起きた事で生じたひずみなのですが、それを逆手にとってギャグとして処理してくる手管には脱帽しました。ぶっちゃけどっかのゴッサムシティ並みに治安が悪いんですが、でも盗難とかそういうのではなく殺人一辺倒で治安の悪さを形成している点でどっかのゴッサムシティより遥かにたちが悪いというのが、そのままこの作品を成り立たせている、というので、もうとんでもない無茶だと分かっていただきたい。

 その上で、いろんな場所で殺人事件の話に行きあたってしまうんですが、ちゃんとコナンの解決した殺人事件がネタ元だったりするなど、細かく効かせたものがあったりするのも侮れません。刀傷とタンスのやつを見た時に普通に噴出したのでお察しいただきたい。懐かしいなあ!

 さておき。

 個人的に3巻までを通して戦いたのは、やはり3巻で犯沢さんが帰郷する話です。帰郷でどこに戦慄の糸口が、ですが、まず米花市を出ようとすると必要書類が無いと出せない、といういきなり超法規的なことを言い出され、その上何故か米花市から他の所に行くにはやたら金がかかる、というところ。単なる市にしては法律が州法っぽくなってやいませんかねえ! という状態ですが、殺人が日常茶飯事という危険都市米花市だと理解していると、スムースに受け入れられるようになります。慣れ!

 ですが、それはまだ序章。本性は、犯沢さんがヒッチハイクで行く! となって乗れた車が、毛利小五郎の車だった、ということでいとも容易く行われるえげつない行為。出先での殺人事件をガンガンやっていくというものです。隙があればどこでも殺人事件が起きる、という殺人事件強行軍。文字通り上から下から大騒ぎです。最初から並走する車で殺人事件が! だったのでもう本当にどこででも起こるというのが理解出来て、後は流れでお願いします。とばかりに殺人事件を許容する自分がそこにいたりします。『名探偵コナン』おっかねえ・・・『名探偵コナン』信用できねえ! そう言う恐怖も併せ持つのが『犯人の犯沢さん』なのです。

 というか、これだけのものをみてまだ殺人を犯そうと思っている犯沢さんのメンタルが凄い。そう皆様も思うかもしれません。しかし、この米花市の人たちはそれ以上のメンタルの持ち主です。犯沢さんは賃貸物件を考えあぐねて最終的にシェアハウスなら事故物件でも怖くない! としたのですが、そこに同居しているのはパリピな人たち。相性が悪い・・・。な犯沢さんですが、彼らが明日をも知れないがゆえにパリピしている、パリピしないで死ぬくらいなら。という、普通に考えると何言ってんだこいつ? な発言をしてくるのです。ついでに新しい大家さん(元の大家さんは出た次の回で殺害された)が家賃を催促してきて、ちょっと、といったら明日生きている保証があるの? とか言い出してもう駄目。どんだけなんだよ米花市。

 とにかく米花市の連載超長期化故のゆがみによって生み出される笑い。それがこの漫画の持ち味。それだけは覚えて帰ってください。