感想 タチ 『桜Trick』2巻

桜Trick (2) (まんがタイムKRコミックス)

桜Trick (2) (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容。「二人の季節は巡って行く」。春香さんと優さん。二人の季節は、先に向かってじっくりと、しかし確実に巡って行く。その道は、美しく険しい。それがしずくさんとコトネさんの妙な関係が出る場面などで暗示されます。この二人の仲というのは、一体どうなってしまうのか。どういう結末が待っているのか。そんな詮無き事を考えてしまいます。
 さておき。
 この巻でのトピックはやはり美月さんが大分前の方に出るようになってきた事でしょうか。作品自体に3年で学校廃校というリミットがある中、更にもう一段、既に3年生であるというリミットのある美月さんが、優さんの姉という立ち位置を存分に見せ付ける、そしてどうにも優さんの姉ゆえに同じタイプのスタンドであるせいで春香さんに思い入れが、というので存在感を見せ付けてきてくれます。特に学園祭で朗読劇に混ざる辺り、そしてキスしないといけないと勘違いをする辺りはかなりの可愛らしさ。ちょい役だと思ってたのに、こんなパフォーマンスを魅せるなんて! その上で、本人も春香さんの事をどうしてこんなに思ってしまっているんだろう、という戸惑いと、キス出来るかもという仄かにある期待が入り混じっているのが素晴らしいですよね。この無自覚な想いが卒業辺りでどうなってしまうのか、というのは注視したいところです。
 さておき。
 優さんと春香さんの仲は相変わらず不思議で、優さんなどは結婚式に一緒に行こう、というのを聞き逃して結婚しよう、と思ってしまってドギマギしてしまってるのがとてつもない流れ。そこで結婚なんて出来ない、って否定が全く入らないんだから、とてつもないとしか言い様がありません。春香さんも春香さんで、父が男にやらん!と言ったのを女ならいいのかー、みたいな受け取り方をしており、ど、どんだけー!? という戦慄を叩き込まれます。基本的に女の子がキスをすると言う点がクローズアップされがちな漫画であり、実際それが特徴と言える『桜Trick』ですが、この心理面の、本当に特別な関係であるという描写というのも重要視するべきです。いや、そこここでかまされるキスも、そのなんとも言えないいかがわしさ、そのくせの美しさも大変な事なんですけどね! でも、そこ以上もある、というのも、理解していた方がいいのだと思います。ちゃんと描く事描いて完結したら、凄まじい作品だった、と邂逅出来るようになると思います。
 そんな訳で、この巻で重視したいのは先述の結婚式にいく回と、その時の余波で仲がギクシャクしているのを美月さんが奮闘する回でしょうか。
 結婚式回は先にも書いてますが本当に結婚するんだ、と勘違いしまくりの優さんに恐れ戦くしかない回であります。二人の間に、それをするに当たってあるだろう障壁、というのが念頭に無いんじゃなく、無い。というのが凄まじい。いや、念頭に無いというのもあるにはあるんですが、そんなのはどうでもいい、って雰囲気なんですよね。全然考慮に入ってない辺り、ガチですよ。
 美月さん奮闘回は美月さんが可愛いというのがしっかり分かる回でもありますが、それだけの奮闘がほぼ役に立ってない辺り、そして美月さんが自分の想いというのに気付いてない辺りが切ない回でもあります。最後にやっとこ上手く引き合わせてた以外は、本当に空回りなので、不憫ですらありました……。
 とかなんとか。

2013年03月08日のツイート