感想 橘柑子「カエルと殿下と森の魔女 緑龍亭繁盛記」

<堤利一郎・ファミ通文庫・640円・ISBN:4757721307
内容を要約すると「殿下がちゃんとしていたら」
ここは「闇の森」の前の旅籠兼料亭「緑龍亭」。 そこに住まいし看板娘の、かしましくもかしましい一日をその娘の視点でつらりつらりとつづったものにございます。
とかく、一人称というものはあれで難しいものでして、作者の自明とキャラの自明と読者の自明の三点のバランスが何より重要なのであります。 いかに説明を省き、含ませるか。 この一見して矛盾する事象を矛盾無くまとめられなければ、お話は破綻してしまうのです。
で、「緑龍亭」はこれが上手い。 それゆえに変な所で突っかかることなく、すーっと読み進める事が出来る上に内容がすこすこ入ってきまして、このご時世に真っ向勝負の和製スラップスティックファンタジー&看板娘モノをやるという、ある種「まさに逆境!」を見事に切り抜けてみせてくれます。 派手さが無い分、きっちり読める一冊でした。