感想 ヤマザキマリ 『テルマエ・ロマエ 5』

テルマエ・ロマエV (ビームコミックス)

テルマエ・ロマエV (ビームコミックス)

 大体の内容。「現代編、佳境! どころか全体的に佳境!」。今回の『テルマエ・ロマエ』は前回の馬乱入! という無茶をどう治めるかと思ったら、馬の方がルシウスにベタ惚れでルシウスがいなしたら速攻でおとなしくなりました、となって、もうルシウスなら何が出来てもおかしくないわ、という変な信頼感がここで生まれました。ぶっちゃけ、もうちょい未来に行ったりしたら、逆に無双出来るんじゃないか、と思わせる素の力強いルシウス。今回はルシウスのタイムトラベルの基本である無様さがまるで無かったのも相まって、自分の性別を越えて濡れるッ!!って感じでした。というか、無様トラベル以外も出来るのかよ! なんで今まで全部無様だったんだよ! そもそもどういう仕組みなんだよ! という謎が爆裂しますが、そこはそうなるから! とだけ言って説明しないこの漫画の豪腕ぶりは流石だよなあ。
 さておき。
 話の方はひなびた温泉街に迫る、地上げの魔の手! というある意味お約束の方向で進みます。ちょっといいホテルのあんちゃんが、地上げ屋の手練手管(というか単純な美人局)に引っかかったせいで、こんな事に、という事に突如なり、それをした組、許すまじ! になるんですが、そのままルシウスはさつきに愛している、と告げるだけ告げてローマに帰還! そこで今巻は終了するのでありまして、前巻以上にどーすんだよこれ! という思いが強く上がります。というかどーすんだよこれ!(二度目) ルシウスがさつきさんに完全にプラトニックラブ貫いてしまってるしるし! 花とかあげる? いやいやそんな軟弱な! とかガチでラブってるじゃないですかルシウス! 対するさつきさんもルシウスがガチのローマ人と理解してラブっちゃうし、なんだよこのラブあて! でも、先にも言ったように二人はプラトニック。さつきさんは大和撫子なので当然前へ前へはなく、ルシウスも軟弱に愛などと! って感じなのでまだ良かったというか。これでラブラブイチャイチャ空間とか出されたらこの漫画なんだよこれ! どこだよここ! って睦月面で叫びたくなる事、請け合いでした。
 にしても、普通ならベタベタな地上げの魔の手も、この漫画だとルシウスがいるせいでなんか無茶苦茶というか。二頭立てとはいえチャリオット作っちゃうしね、ルシウス。それでさつきさん助けに行ったりするしね。それで車とガチのバトルしちゃうしね。もう、訳が分からんよね。作者解説を読むと、もうしたくてしたくて仕方なかったからした、とある意味潔く言い切っておられて、逆に好感度高まったりしましたが。そうか。したいならしょうがない。
 しょうがないというと、さつきさんのおじいさんがなんかどこかで見たような雰囲気の顔なのも、たぶんいい顔親父出したいという作者側の要請であるような気がするので、それもしょうがない。ちょっとの出番なのに異常に頼もしい爺さんでしたし、昔やんちゃだった頃の話とか、やや以上にぶっ飛んでて、逆に今良く生きておれるな、とも思いました。その上で無駄に頑固ではなく、さつきさんがルシウスに惚れているのを見て、鯛の尾頭付きで祝ったりする辺り、いい爺さんだなあ、とも。伊達にいい顔親父じゃないですね。
 そんなわけで、そろそろルシウスの出来る事に限界もありますから、終幕も近いのだろう、というか匂わせてるし、という思いをもって、この漫画の終結の鮮やかならん事を。そんな言葉を持って締めたいと思います。いやでも、さつきさんとの恋仲どうなっちゃうんですかねー!