感想 サンカクヘッド 『干物妹!うまるちゃん』3巻

 大体の内容「干物妹の毎日に波乱なんてない」。とはいえ、ちょっとした浮き沈みはやっぱりあり、しかしそれは特に致命的な展開にはならず、毎日ってこういう風に過ぎているよね、という雰囲気が醸し出されているのが『干物妹!うまるちゃん』3巻なのです。
 特に波乱が無いのはある意味現代的な可愛い系漫画の基礎基盤でありますが、この漫画もその轍を逸れる事はありません。そこの所は愚直というかサンカクヘッドせんせの身に一体何が! というレベルです。サンカクヘッドせんせについては出している単行本を一通り読んだことしかない程度のにわかなので、間違っている感覚なのかもしれませんがそれでもあえて言うと、もっとこう、躁的にネタとか絵とかを突っ込んでくるタイプのスタンド使いだと思っていたんですが、この漫画ではやはりそういう事はほとんど起きません。もっと「何描いてるんだあんた」ってレベルの漫画を描くタイプがサンカクヘッドせんせだったはずなのです。それが、この巻でもやはり非常に可愛いに対して愚直に向かい合っている。ゆえに「いったいなんのリストだよてめーっ!!」という錯乱めいた言葉が出てくるのは致し方の無い事なのです。それぐらい、今のこの漫画の状態というのは奇跡めいているというかミラクルでしかないというかぶっちゃけありえないのです。これがバックに誰かついているからなのか、本人の本当のスキルが覚醒し発揮されているからなのか、あるいはどっちもなのか。とにかくそれはまだ結論するには早い段階であるのですが、それでもどうなのだろうかとは思ってしまいます。毎巻似たような事書く位、衝撃Z編なんですよ、今のサンカクヘッドせんせの、そしてこの漫画の状態は。
 戯言はさておき。
 今回の巻は先にも書いていますが、やはり可愛いのとほっくりくるのが十全に満ち満ちており、大変安心して見れるし、楽しいし、オススメも出来る漫画となっております。うまるちゃんが外仕様でも家仕様でもどっちも可愛いのもなんですが、他の女の子も可愛いが充満しております。海老名ちゃんのおどおどっぷりとか可愛いです。可愛いんですよ海老名ちゃんのおどおどっぷりは! 特にタイヘイ兄さんにラブがあるっぺれえのが倍点事案です。バレンタインチョコで渡す予定のチョコに<Dear>って書いちゃってあわわ、してるとことか最高でした。可愛い! 女の子がいちいち可愛いのはサンカクヘッドせんせの絵柄の変遷もありますが、やっぱりそこにしっかり注力しているからというのが伝わってきます。可愛いを可愛く描く、というのは言葉にすると大変易しですが、実際は大変難しい所業であるのは、文章で可愛く書くのも難しい事からの延長線とはベクトルは違うけど数値は同じだと思われる事から自然と察せます。あるいは、その難しさがサンカクヘッドせんせに余分な力を出させないのかもしれません。
 さておき。
 好きな回の話でも最後にしますと、これは迷うんですが、やはりサンカクヘッドせんせの持つ空気力がしっかり出ているとこがいいので、その36「うまると漫画喫茶」でしょうか。漫画喫茶に、一人の秘密基地を見出した、んだけどなんか物足りない、というのを特に台詞を使うことなく、絵とうまるちゃんの表情だけという漫画力で魅せる、地味ながら上手い回であります。内容的にはまんが喫茶行って帰っただけなんですが、それでもきっちりと漫画として成立させているのも、その漫画力。実力自体はやっぱりある人なんだなあ、というのを感じて、ちょっと折り目正したくなりました。
 そんな可愛いも地味な部分もしっかりとしているのが、『干物妹!うまるちゃん』なのです。