感想 高尾じんぐ 『くーねるまるた』4巻

 大体の内容「マルタさんの生活は彩られている」。基本お一人様の食事で、豪勢でも豪奢でもなく、質素で簡素だけど、でもなんだか楽しそうで愉快そう。そういう雰囲気で押しとおる漫画。それが『くーねるまるた』なのです。
 この漫画と言うのは大変イマドキであります。女の人(女の子でも可)+日常生活という方向性も、そこに食という軸線を用いるのも、大変イマドキなのです。イマドキなんですったら! という若干の捏造めいた台詞を吐いちゃいましたが、ざっくりまとめれば所謂日常系というくくりの漫画であります。そして、食漫画としては、料理人ではなく一般人がご飯を作る系であります。しかし、そこでこの漫画の味わいとして、特徴的なのがお金はかからないけど手間はかかる、というタイプの食をしているのが立ち上がってきます。水沢悦子花のズボラ飯』がお金も手間もかからない、だったのから方向性がちょっとずれているのが、ポイントなのです。そこに、マルタさんの日常の、お金は無くても出来る事を、そしてそれを楽しむというのもテーゼめいて合わさって、質素で簡素でも、大変豊かに見えるという逆転的な現象が起きているのが、この漫画の面白い所なのであります。後、マルタさん可愛い。ちょっと一般とずれた事に時間と手間をかけちゃう、というのとか、日本好きになった理由だろう本の話のおいしそうなものを作ったりとか、そういう所が大変いい訳ですよ。ガチガチに狙った可愛らしさ、萌えもいいけど、こういう飾らない美しさ、麗しさというのもまた、良い物であるなあ、と思ったりするのですよ。
 さておき。
 今回の巻もいつも通りの生活のマルタさんですが、二つほどトピックとしてあげられる事態が。
 その一つが、謎の幸運現象で松茸を手に入れちゃうのです。松茸! と言う事でどう食べようか考えたり、実際に土瓶蒸しを作って堪能したり、というマルタさんは三割増で可愛らしかったです。松茸の味、匂いがいい物だ、っていうとことかいいですよほんと。そしてここで有頂天になって宝くじ買おうか! とか言い出さない辺りの慎ましやかさもいいんですよ。まあ、運よく宝くじ拾うという展開はありましたけど、ちゃんと交番に届けるのもまた、いい人であります。そこがいいんだ……。
 もう一つが、この巻最後の、謎のというか大体分かるんだけど謎の人の登場。マルタさんをよく知る、そしてマルタさんの思い出してた過去の話とも通ずる、この人は? というかまあ姉とかなんでしょうけど。でも、このタイミングで姉が来る、というのはこの漫画に何かしらの変転をもたらすのか、それとも単なる賑やかしなのか。その辺が読みにくい。マルタさんの現状は細々と生きているというのだから、そこに喝を、はありそうだけど、でもそれはそれでこの漫画らしくないしなあ。その辺をどうらしく、あるいは新しいらしさで越えていくのか。あるいは単に来日して顔見たかっただけという流れなのか。とりあえず、次の巻はチョット動きそうですねえ。
 とかなんとか。