感想 施川ユウキ 『おかえりなさいサナギさん』1巻

 大体の内容「俺達のワイルドシングが帰ってきたぞ−!」 と、『メジャーリーグ2』の名言を出してしまうくらいに帰ってきた間が非常に強いのが、『おかえりなさいサナギさん』なのです。
 まさか『サナギさん』知らない漫画ニュービーはいらっしゃらないかと思いますがという言い方で軽く説明をしますと、平凡な中学二年生の女の子サナギさんと、その友達フユちゃんと、その他諸々の人が毎回のお題めいた物を軸にして会話したりボケたり突っ込んだりする漫画です。しかし、そこは施川ユウキ味。独特の毒があちこちにあるのであります。でも、この漫画だとサナギさんとフユちゃんの会話は友達らしい暖かさがあり、それ故にほのぼのとした雰囲気もあって、それが毒をいいように処理して大変食べやすくなっている漫画となっております。『鬱ごはん』とか『バーナード嬢曰く。』とかにあった雰囲気とはやはりどうあっても違うので、実際に施川ユウキ作の初手ならこれが確実であります。『サナギさん』が手に入りにくい現在においては、この『おかえりなさいサナギさん』から導入して全く問題ありません! と言い切れるでしょう。
 それくらいに、『サナギさん』から味わいが変わっていません。サナギさんとフユちゃんのボケた会話と偶にある毒と偶にあるほっこりで楽しめて、タカシ君とサダハル君のいつものバイオレンスはいつも通り。マナミさんも相変わらず踏む踏む踏む!!マナミさん、踏む! 精神で健在。他のキャラクターもそう多くない漫画だったのもあって、それだけで十全に『サナギさん』の雰囲気は維持されているのです。これを変わり映えないと断するのも出来るのですが、個人的には『サナギさん』終了は想像を絶する悲しみがブロントを襲ったレベルだったので、こうやって帰ってきてくれてウェルカム! 待ってたよ! という気持ちが抑えられません。5年のブランクというか成長というかが、そこかしこでにじみ出ていますが、それでも基本トーンは『サナギさん』のそれ。だからなんだかとっても、ありがてぇじゃねえか……。(CV:稲田徹
 さておき。
 個人的にこの巻収録で好きな回、の一発目題下のネタというと、お化け屋敷回と虫歯回です。
 前者はお化け屋敷をお化け邸と言い変えるちょっとした、でも確かなセンスがきらりと光る、力をもった一発ネタです。一気にハイソな雰囲気です。でもちょっと怖くない気がしますけれども、ちょっと品がある、が主題なのでそれもいいでしょう。
 後者も基本言い換えパターンですが、そこの絵と“頭蓋骨齧り虫”というネーミングの相乗効果でコワイ! と思ってしまいました。歯磨きはちゃんとしたいですね。でも、これある程度大人じゃないと怖さ出ないのでは、とも。まあ、大人だから、油断がある場合もあるし、大人向けと考えればいいのか。この辺の一発目で持っていくパワーが全く衰えてないのが凄いよなあ、とかなんとか。