感想 久正人 『ジャバウォッキー1914』1巻


ジャバウォッキー1914(1) (シリウスKC)
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 大体の内容「秘史の影に、恐竜あり!」。歴史に秘された者。それが恐竜! 実は恐竜は恐竜人類として生き残っていたんだよ! な、なんだってー!? という驚愕の設定であった『ジャバウォッキー』の終了から、新装版での発売を経て、とうとう新作の発売になりました昨今、皆さん、いかがお過ごしだ! とニュースマンの一発ネタを唐突にぶっぱしたくなるくらい、久正人ファンには僥倖であったのが、この『ジャバウォッキー1914』なのです。
 大体の内容で大体言えているんですが、もうちょっと詳しい中身の説明を行いますと、歴史を裏から操り、人類に打撃を与えようとする恐竜人組織と、それに対抗する組織との争い、というのが『ジャバウォッキー』でした。その話は当然秘史。つまり伝奇な訳ですが、恐竜が生き残っていた! という部分以上に飛び抜けた異史感は無く、あくまでその時代の科学力をちろっと上に、というのが貫かれています。まあ、恐竜が生き残って進化して恐竜人類となっているだけで十分なインパクトで、更にその血筋、つまり色々ある恐竜の形態を活かした内容なのも売りでした。そういう秘史物である、というのだけ分かればいいので、さらっと次に。
 『ジャバウォッキー』は19世紀終盤の話でしたが、この『ジャバウォッキー1914』はそのタイトルの通り20世紀初頭、それも第一次世界大戦を舞台に繰り広げられます。当然、暗闘な訳ですが、戦争が一つテーマになっているので、敵側である恐竜人類組織「殻の中の騎士団」とも戦場で渡り合うことになったりしているので、密かな部分での暗闘だった『ジャバウォッキー』よりは格段に映える展開になってもいます。それに第一次世界大戦というのはもう一つ肝でもありまして、帯でも書かれていますが、日本人にはあまり馴染みがない。だからその暗闘と実はこうだったんだよ!を積み上げる事がより容易になっていますが、しかしだからと言ってそこの部分を忽せにしない、裏を取っているからこその積み上がりを為しているのもこの漫画の良い所なんですよ。知識と伝奇が合わされば、敵はいない! といいたいレベルの見事なミクスチャーといえましょう。
 さておき。
 『ジャバウォッキー』から『ジャバウォッキー1914』の最大の違いというのは、タパサがいない、イフの城がなくなっているという点です。今の所の生き残りで『ジャバウォッキー』のもう一人の主人公リリーさんがしっかりマダムになっているのでまだ生きている可能性とかはありそうですが、そもそもどういうコトで瓦解したのか、というのは一つ今後語られる内容として一番でかい話になりそうです。そして、『ジャバウォッキー1914』と『ジャバウォッキー』の違いは、タパサの息子? とリリーの娘がいる、それで鉄火場にはその二人が、という状況。とはいえ、息子サモエドと娘シェルティに血のつながりは無い模様で、この二人の関係もどういうものなのか、というのは興味を引かれます。リリーさんが過去にサモエドの卵を持って重傷を負っていたというのがあったりするので、イフの城の瓦解と何か関連性がありそうです。そもそもタパサとリリーの息子って訳じゃないだろうしなあ。あ、二人の関係性は兄妹のもので、それも小さい頃からずっと居た二人だからこその気安さと信頼があって、大変良いものでした。サモエドはどうしても迫害の対象になり易い、人間からもだけど卵食いとされる恐竜の子孫だから恐竜からも、という部分で、それに対する庇護をするのがシェルティ、という立ち回りはこの巻ではまず決まっていました。これがどうなるかだなあ。
 さておき、この辺の作内での違いは、むしろ伝奇的にあの時はこうだった、が出来る素地になるからこそ大ネタとして秘めているんでしょうが、それがどういう事態だったか早い所知りたいとも思ったりします。