感想 タチ 『双角カンケイ。』1巻


タチ 双角カンケイ。 1巻
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「この関係、危(やば)い!」。くりそつの双子の姉妹、ひまりさんとあいりさん。二人は仲良く生活していましたが、ひまりさんがバイトを始めて徐々に自立の道を進んでいて、だからそれに置いて行かれている感をもつあいりさん。そんなある日、ひまりさんが捻挫してしまい、バイトに行けなくなってしまいます。なのでその代役、私が行く! とあいりさんがバイトに行くのですが、そのバイト先の朝霞先輩に、バイトの後にひまりさんと間違えられて告られてしまいます。そこで違うと明かせばよかったのですが、その朝霞先輩の真剣さに負けてしまい、ついついお友達から、とお付き合いを始めてしまいます。でも、そのことはひまりさんには内緒! ということで、百合百合なんだけど紙一重のスリリングさがぶっこまれた作品。それが『双角カンケイ。』なのです。
 この漫画は百合漫画なのですが、そこに対して、ただの百合なんて面白くないでしょう、あなたたちには! という大上段で凄まじいギリギリな人間関係をぶっこんでくるタチ先生はやはり一線超え済みです。とにかく、読めば読むほど紙一重でなんとか関係を繋いで、でもそれゆえに関係がばれれば大変なことになる! というのが積み重なって、可愛い百合漫画なのに無性に胃が痛いという良く分からない到達点にぶっこまれます。この紙一重感を維持するスキルは本当に隔世の感すらあります。世間一般的な我々の思考の外に利があるというか、その道があるのか! と毎度驚かされるタイトロープな作劇なんですよ。でも、徐々にあいりさんと朝霞先輩の関係に、ひまりさんが気付きかけていて、だからもう次の回でこの爆弾破ぜるんじゃないか、とドキドキさせられます。
 それだけならまだ人間関係にドキドキするタイプの漫画なんですが、その中に百合の良さをきっちり絡めてくるのが、本当に素晴らしい仕手です。朝霞先輩はちょっともじもじするタイプなのにあいりさん(朝霞先輩としてはひまりさん)に対してはどんどん攻めていくんですよ。普通の百合物としてもこの押しは美味い物なんですが、それが人違いというレイヤーを掛けた上で見せられると、一転して恐怖の時間にもなるという複雑な味わいを出しています。タチ先生のやる気が危(やば)い! と言っていいでしょう。あんまり長く続けられない気もするので、きっちりとこの漫画のらしさを見せつけて、綺麗に終わってほしいと思います。綺麗に終わる形が全く見えませんが!
 とかなんとか。