感想 『鬼切り夜鳥子』(ISBN:4757728298)

桝田省治:佐嶋真実:ファミ通文庫:620+税円>

 内容を要約すると、「100%、いや120%の桝田膳じゃ…っ!」
 桝田さんのものは久しぶりだったので、余計そう感じました。ちゃんとした内容は学園ドタドタ承伏劇です。きっと。
 にしても全身刺青仕様ってのはエロいなぁ。絵師の方の力量もありますけれど、エロ成分に理屈を与える手腕はさすが桝田さんだなぁ、と思いました。
 さておき。
 なんか、妙に楽しかったです。
 出来としては上に書いたように「いつもの桝田さん」、つまりわりと豪快味で、悲観する間には動き出し、端々にサドで現実的で冷淡でグロでエロを垣間見せ、でもめでたしめでたし、でしめる、という具合なんで、オチの方向性とかが読めたりするんですが、それでも問題なく楽しかったです。
 あくまでエンタ、という指向が強い作り方だったからかもしれません。文学エンタで言えば確実にエンタの方向で、あとがきでこの本の「仕様」「指定」*1が明らかにされる所からも、「楽しませてナンボや」精神が良く見て取れます。これがいい具合に作用したのだろうなぁ。
 以下はネタバレ気味につらつら。
 
 それにしても、まさか「俺の屍をこえてゆけ」と地続きの世界だとは思いませんでした。しかも夜鳥子がまさかの大照天昼子の娘設定。しかも昼子死んでる設定! 夜鳥子が生まれた時に、命と引き換えかなにかの事があったのかなぁ、などと妄想してしまいます。
 で、昼子の娘となると、やっぱり「俺屍」の“一族”の一人になるんでしょうけれど、最後の姿とかを見るに、「俺屍」以後の話になるのでしょうか。もしや桝田さんが考えているという「俺屍」の続編と関係が? 謎は深まり、妄想が止まりません。

*1:最初は海法紀光さんが書く予定で、その為に書いた注文