感想 平方昌宏 『新米婦警キルコさん』1巻

新米婦警キルコさん 1 (ジャンプコミックス)

新米婦警キルコさん 1 (ジャンプコミックス)

 大体の内容「ぽんこつなのに凶悪な婦警、キルコさん!」そんなわけで、キルコさんが縦横無尽したら大体酷い事になる漫画、それが『新米婦警キルコさん』なのです!
 それで大体内容が伝えられる辺りがこの漫画の良さであります。基本的にキルコさんがなんのかんので活躍すると言う事であんまり複雑な事は無く、でもそれで警察官ゆえに何もお咎めなしとかではない辺り単純でもなく、というバランスが好みだったりも。野放図に暴れられるという訳ではない、というのはいいですよね。ただ、そのある種のリミッターと流地な舞台設定の為にキルコさんが意外と大暴れられてない、というのが作品のアトモスフィアに多大な影響を与えているのも事実。本気を出すと異常な力を発揮するのでしょうがないといえますし、その辺があまりに開放的だと後はインフレバトルしていくしかなくなるので、痛し痒しというやつでありますが、でもこのちんまりした感じは……。予定範囲内な新キャラ投入でも、大仕事の後はやっぱりする事がちんまりするし……。これはこれでありなのかも、とは思うんですが、ですが……。
 そういう訳で、キルコさんの設定のわりに意外と暴れない点がネックとなっているのがこの巻の難点ですが、それでも十二分に楽しめるのはやはりキャラの良さというのがしっかりしているから、そして描写し方がしっかりしているからに違いないでしょう。キルコさんが凄いんだけど一般生活には全く使わない凄さで基本的にはヤバイ人で、一話目ではそれが初っ端の仁王立ち含め端々で出てて危ないんだという方向で理解させる演出テクを見せてくれたりするんですが、それでも職務に、そして先輩であるハル氏に従順だったり、気立て自体はそんなに悪い訳でもなかったり、パワーを発揮出来ないからぽんこつだったりするのを追々魅せていく形で、ふと、キルコさん可愛いなあ、という感想をぽろっと出させられるんですよね。なんだこれ。
 そのキャラを見せるテクは他のキャラにも存分に活用されており、例えばハル氏はああこいつ駄目だ、って端々で思わせつつ、意外と策士な部分も見せてくれてたりしますし、例えばこの巻後半登場の知秋さんは黒ロンですが、ちょくちょく髪を漉き上げる動作をしていて、それが黒ロンであるがゆえに出来る動作がゆえに、黒ロンを如何に上手く魅せるか、というのに腐心しているのが分かったりと、魅せ方というのを頑張っているなあ、と上からの目線を持ち出してしまいます。ある意味では、イマドキの漫画というのであるなあ、と思ったりも。それが、『新米婦警キルコさん』なのです。