感想 小池定路 『父とヒゲゴリラと私』2巻

 大体の内容「父とヒゲゴリラと私の日々」。男やもめの稔二さんとその娘みちるの元にヒゲゴリラこと晃二さんが来てから幾星霜、と言う程は時間は経っていないものの、着実に時間は過ぎていく。そこには色んな事があって、色んな想いがある。それが『父とヒゲゴリラと私』の持ち味なのです。
 ファミリー4コマの類というものに対する知悉が少ないので見当違いな事を書くかもしれませんが、とりあえず、この漫画の持ち味というのは『父とヒゲゴリラと私』の絶妙な関係性にあるのだろうなあ、というのが思っている事です。そう、絶妙。ドライでもウェットでもなく、ただ家族としての関係性を構築しているのが、見ていて肩肘張らずに済んでいる所であるなあ、と。その辺りが絶妙なんですよ。私であるはずのみちるに対して、ヒゲゴリラたる晃二さんはライバル関係みたいないい距離感ですし、父である稔二さんにも周りが迂闊に踏み込めない所があるけど、そこは当然踏み抜かないという心配りがある。みちるは考えてというより直感でそこに深く入っていってないし、晃二さんは大人だから当然いかない。だからちょっと変だけど、きちんと家族として成り立っているのだなあ、とかなんとか。その辺が、ファミリー4コマと言うモノの持つ広みというか、深みというかであると、そしてこの漫画の深みであると思うんですよ。可愛いという尺度が使えない土地だからこその持ち味でしょう。
 その辺がとみに顕著なのは、義父と稔二さんとの関係性。義父がみちるの母で故人のみゆきさんの事で稔二さんに冷たく当たる辺りはちょっと辛いんですが、それは当の義父も辛い部分があって、というのでなんとも言えないんですよね。みゆきさんの、一人娘であるみゆきさんの事でどうにも険があるのも、しょうがないと思ってしまいます。その辺で単にいやみな人という処理がされないのも重要ですが、それでもやっぱりちょっとなあ、と思ったらこの巻の最後の回で義父がぎっくり腰してしまった辺りでは、単純にざまあ気分にもなれないんだけどなんだかざまあ部分がある、という状況を出してくるんですよ。でも、やっぱり弱ってるんだなあという気持ちにもなって、やはりなんとも言えない味わいになっている。先にも書きましたが、それがこの漫画の単純じゃない、深みとしてあるなあ、とかなんとか。
 さておき。
 この巻ではメインたる父とヒゲゴリラと私は当然目立つんですが、サブキャラといえる人々、幼稚園の先生とか稔二さんの会社の同僚とかが結構躍進してきたのが特筆点と言えます。特に幼稚園の先生で、ゴリラ苦手でだからヒゲゴリラたる晃二さんが超苦手の西原先生と稔二さんを狙うゆりかさんとつかささんが顕著に目立っていました。更にその三人の中ではやはり西原先生がいいですね。西原先生はゴリラ苦手を克服する為に頑張ってますが、努力の方向音痴というか、蛮勇というか、いきなりヒゲゴリラと映画に行こうとかし始めてたり。デートのお誘いめいていますが、西原先生にはどういう気持ちがあるのかというと大体苦手克服で、しかも結局克服出来ないからまさしく努力が迷走しております。というか、荒療治狙い過ぎじゃね? もっとソフトに行きましょうよ。と思ったり。こういうキャラ付けというのが話を回すのに役に立っている、駆動系設定としてあるけど、目立ち過ぎずに振舞われている辺りは上手いよなあ、とか思ったりもします。濃過ぎず、薄過ぎない。これまた絶妙の域。これもファミリー4コマの懐の深さなんでしょうねえ。
 とかなんとか。